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米国の消費シーンではどのようなスマートフォンのアプリが使われているのでしょうか。実店舗への送客サービスのアプリだけで数億ドルを売り上げる「shopkick」、スターバックスのスマホアプリを使った顧客獲得サービスなどを体験してきました。顧客にさまざまな体験やサービスを提供する店舗誘導を行うアプリサービスが数年後には日本でも浸透している可能性も高い?


ジオフェンスで消費者の位置を把握、プッシュ通知でさまざまな店舗から店舗案内情報が届く

米国最大級で、イリノイ州の最大ショッピングモール「Woodfield Mall」で買い物をしてきました。モール内には300店舗があり、広さは東京ドーム4.4個分。この巨大な広さは、日本では想像できません。

「Woodfield Mall」のショッピングで使用したのがスマホアプリの「shopkick」(http://www.shopkick.com/)です。米国で最も魅力的なショッピング・アプリとして、2012年にニールセンに認定されています。

「shopkick」はshopkick社が提供するアプリでMacy’s、walmart、Target、JCPenney、bestbuy、forever21、Searsといったさまざまな店舗で利用できるのが特徴です。最大のポイントは、店舗に訪れたときなどに、「KICK」という名称のポイントがアプリに貯めることができ、金券や商品と交換できることです。

「shopkick」をスマホにダウンロードし、モール内の実店舗へ足を運ぶとビックリ。アプリ上でモール内の店舗に自動でチェックインされ、「shopkick」を導入している各店舗が発行するクーポンがどんどん送られてきます。さらに、特定の商品をスキャンすると「KICK」が付与されるので、ショッピングをしながら宝探しができるような感覚です。

 「Woodfield Mall」で「shopkick」というアプリを使ってみた

「shopkick」をインストールした端末を持ち「Walmart」を通り過ぎると「30Kicks」をゲット

アプリをダウンロードしている買物客は、「KICK」欲しさに商品棚へ足を運びます。このポイントプログラムのビジネスモデルは、一種のアフィリエイト(成功報酬型広告)。ネットショップではなく実店舗への「送客」(リアル・アフィリエイト)によって手数料が入る仕組みで、shopkick社に入る手数料だけで数億ドルという売り上げになっています。

 「shopkick」のアプリ上に、「Walmart」からメッセージが届く

「Walmart」から「おもてなし」のメッセージアプリに届いた

似たチェックインサービスとして、日本でも一時盛んに使用されたFoursquareの手動チェックイン機能があります。すでに廃止されていますが、買物シーンにおいてユーザーは、バッチという名誉よりも、ポイントという実利を求めたということでしょう。

ところで、どうして広大なショッピングモールの中で、特定のクーポンが自動的に送られてくるのでしょうか。実は、お店に設置された装置から、人間の耳には聴こえない高い周波数の音(非可聴域音声信号)が発信されていて、スマホのマイクが音を拾っています。アプリに搭載された技術(広義にジオフェンスと呼ばれる)が数メートルの範囲でお店からの音を認識し、クーポンを配信しているのです。

 「shopkick」にさまざまな店舗からクーポン情報などが届く

ショッピングモール内を歩くだけで店舗からプッシュ通知でセール情報などが届く

Shopkick社のアプリが成功した秘訣は、単独店のクーポン提供にとどまらず、さまざまな店舗で利用できるポイント「KICK」が、買物客のインセンティブになっているからでしょう。店舗独自のアプリではどの商品がどれだけ売れたのかといったデータしか分かりません。しかし、「shopkick」は消費者が行う多くの店舗でのショッピング行動を把握しています。

この仕組みは顧客との接点において新しい大きな可能を示しています。それは、従来の店側の(売上伝票的)記録でレコメンドするのではなく、複数企業の購買履歴・行動範囲を記録し、より高度なレコメンドを提供することで、買物客の利便性をさらに高め、利用者を増やしています。「shopkick」の普及に比例し、各店舗はリアル・アフィリエイトによる集客を享受することができる仕組みとなっているのです。

iBeacon端末を配置し、クーポン情報などを野球ファンに配信する米大リーグの取り組み

大リーグでも店舗への誘導用アプリが盛んに利用されている 長い出張の息抜きとして楽しみにしていた野球観戦。ここでも、米国のEC事情を探るという使命感が萎えることはありません。

今年から多くのスタジアムで平均100個のiBeacon(Bluetooth LEを使用することで、「ビーコン」と呼ばれる発信器の近接や距離を検知する事ができる機能)端末が設置されているようです。

さてこのサービスも好奇心で早速利用。スマホに公式アプリ「MLB.com At the Ballpark
」をインストールしておくと、iBeaconに反応して自動でチェックインが行われます。とても嬉しい機能が、売店で利用できる割引券などゲットできます。他にも細かい「おもてなし」の機能があるということですが、試合が始まってしまうとそちらに夢中になってしまいました。

米大リーグで利用されてい実店舗誘導用のアプリ

様々なお得情報を配信する大リーグのアプリ「MLB.com At the Ballpark」

定期的な顧客訪問促すために、ロイヤルカスタマ作りをアプリで実践するスターバックス

米国では至る所で目にするスターバックス。成功事例として挙げられる同社のオムニチャネルへの取り組みは驚きました。ちなみに、この成功の裏には深刻な問題が。それは競争相手がいないことです。

成功者には成功者の苦悩があり、ある時は雨天が敵に。ある時は、高視聴率番組が敵にもなります。ある時は、ECが敵になります。

デート、買い物、旅行、出張…人の移動するところにスターバックスがあります。しかし、人の移動が生じなければ売り上げにつながりません。スターバックスにとっての競合はコーヒーショップではなくなっているのです。

調べてみると、2013年のデータでは米国内だけで店舗数は1万1234店舗。ちなみに日本は988店舗です。単純に人口で比べてみると、日本は1店舗当たり12万9000人程度に対し、米国は同2万8000人にも満たない計算となります。

スターバックスによる市場の寡占が進んでいる状況で、新たに顧客を開拓することが難しくなっていますスターバックスのマーケティング戦略は、既存の来店客が浮気をしないロイヤルカスタマにならなければ経営的にダメージとなります。ロイヤルカスタマの醸成は至上命題で、アプリ「Starbucks Rewards」」を使ったサービスもその一環です。

スターバックスはロイヤルカスタマを作るためにアプリを積極活用している

街を歩いているとスターバックスからプッシュ通知が届く

スターバックスカードもしくはスターバックスのモバイルアプリで商品の支払いをするごとに「1Star」のポイントを貯めることができるプログラム「My Starbucks Rewards」があります。

アプリを使うと、1回購入するごとに仮想カップに「1Star」が貯まります。5個貯めるとグリーン会員に、30個貯めるとゴールド会員になれます。ちょっと嬉しいサービスで、再び米国を訪れたら、絶対に2杯は飲もうと思う。

スターバックスではアプリを使って決済が可能

「Starbucks Rewards」をインストールしたスマホで会計することができる

これまでもPOSのおかげで売れ行き商品は把握することができました。しかし、それは消費者を一括りにした「マス」のデータです。スターバックスのアプリは、1人1人の好みまで認識し、将来は最適なコーヒーをレコメンドしてくれるのではないでしょうか。

来年にもなると、カウンターに並んでいるだけで、私が好んでいる「濃い目、少な目、硬め目」のコーヒーが出てくるようになるかもしれません。


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楡井 康哲

インフォマークス株式会社

楡井 康哲(にれい・やすのり)

インフォマークス株式会社
マーケティングソリューション部 シニアコンサルタント

1976年東京都生まれ。1994年に秋葉原のパソコン量販店チェーンの九十九電機に入社。店舗接客の他、販売企画立案から仕入れまでを担当。1995年から新規事業のパソコン通信によるネット通販を起ち上げ、EC事業の責任者を努める。単体ECサイトで年間売上100億円を達成する。

2009年にはニフティのECメディア事業部門から独立した、同グループのEC事業戦略企業コマースリンク株式会社にて経営企画、SEOコンサルティングを担当。2011年、インフォマークス株式会社にジョイン。

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