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600社を超えるEC・通販支援のベンダーなどが参加する「IRCE」の展示会場では、100社を超える物流関係のサービス会社が出展していました。米国でもいかに物流コストを削減し、効率化していくのかということが課題となっているのでしょう。成長している米国のEC企業などは、システム投資にも積極的で、物流関連はもちろん、マーケティングにも積極投資します。今回は「IRCE」のイベント会場から見た、こうした米国EC事情をお伝えします。

フルフィルメントで加速する米国EC市場、それを追いかける日本のEC企業

IRCEの展示会場には、100社を超える物流関係のサービス事業者が出展していました。日本の展示会ではお馴染みのパネル展示ではありません。米国の物流関連企業は、段ボールリサイクル素材の梱包機、ピックアップロボット、自動ラッピング機などを展示し、来場者に見てもらい、触れてもらうようにしています。私には、耕運機や稲刈機のような農業機械に見えましたが…。

「IRCE」会場内で展示されていた物流代行企業のサービス

自動ラッピング機のデモンストレーション

価格競争を支える物流の低コスト化。日本の小規模農家同様、中小のネットショップには「高嶺の花」であるロボットが数多く出展されていました。

例えば、展示会場のピッキングロボット。「梱包前の商品」を持ってきてくれるピッキングロボットで、この動画は梱包前の商品が入っている(保管されている)箱を手元に持ってきてる様子を撮影したもの。箱を縦に積んでも、上から順番に箱をどかし、手元に目的の箱を持ってくれます。スペース効率も作業効率も上がるのでしょう。


 ピックアップロボットのデモンストレーション動画

IRCEの展示場内に展示されたピックアップロボット

ピックアップロボットのデモンストレーション

これらの機器はとても高価で、かつ広いスペースを必要とします。日米の土地事情の違いから、これらの機器を導入できる日本企業は少ないでしょう。しかし、米国だからといって簡単に、自社内に導入できるわけではありません。

こうしたことを解消するのが、通販物流代行企業などが提供する「フルフィルメント」なのでしょう。小さい規模の荷物を集約して大規模化。「amazon」「Sears」のような大企業にも対抗できるコストパフォーマンスを実現できるのです。

低価格=ローコスト化を推奨するわけではありませんが、日本でもスケールメリットを得る為に、フルフィルメントサービスの利用をお勧めしたいところです。配送キャリアとの折衝、資材梱包費用のコストダウンなどを狙うのはもちろん。物流品質や人の育成という課題を一気に解消することが一番の目的です。

米国EC市場では生き残りをかけたマーケティングへのシステム投資が始まっている

日本はシステムの点において米国よりも遅れていることは否めません。米国の優良企業はマーケティングに関するシステム投資を積極的に行っています。

日本と米国企業の大きな違いは、日本の小売業は「商品」を中心に考えてきたこと。「売れる商品を買い付ける」「いくら値段設定すれば売れるのか」という思考を持つEC企業が多いのが実情でしょう。その観点はもちろん必要です。ただ、先進的なシステム投資をすることで「買物客」を軸に物事を考えることができるようになります米国ではモノだけでなく、ヒトもシステムの力として捉えているのです。

サイト上での購買行動の把握と、メール配信システムを導入しただけでは不十分。言い換えれば、「どの商品が閲覧されたか」「どの商品をお勧めしようか」ということだけでは足りません。

サイトに来店した人に注視するということは、顧客接点(メルマガやSNS、LPなど)から得た情報をキャプチャリングし、スコアリングしながら、購買に至るまでの温度感に沿ってナーチャリングしていくことが重要なことです。

しかし、店員1人の「顔馴染み」だけにきちんとアプローチしていては、売り上げは大きく伸びません。常連客・一見客だけでなく、潜在顧客にまで次々とアクションするにはシステムの力が必要なことは明らかです。

そこを自動化するのが「Marketing Automation」です。マーケティングをオートメーション化し、競合との競争に勝っていくのが、今の米国EC企業のマーケティングとシステム投資事情です。

1990年代からECに携わってきた人は、市場規模が小さい時にトライアンドエラーを繰り返し、経験を積み重ね、サイトも成長しました。私も同じく失敗を繰り返した立場です。

そうしている内に、参入企業が増加。即席店長がたくさん誕生しました。競争環境が激しくなり、短期間で結果が求められるようになりました。昔のように、今得た失敗を翌年に活かして勝つという時代ではありません。新米店長がベテラン店長と戦うには、光速でトライアンドエラーを繰り返すこと以外ありません。そのためにも、システムの助けなしでは難しいのです。

最新のEC情報が分かるIRCE、日本のEC事業者に足を運ぶことをお勧めしたい

世界最大のECトレードショーである「IRCE」で、展示会場をがむしゃらに見て回りました。改めて感じたこと、決意したことをまとめます。

トレードショーには膨大な情報が溢れています。しかし、そのすべてがEC事業者の「今」に役立ち、定着するものとは限りません事業規模など自社のステージを洞察して聴いておく必要があります

IRCEのイベントに足を運ぶことで大事なこと

まずは講演会場。ここで登壇者が話すのは「未来はこうなる」という「予言」が主流です。例えば、テクノロジーが持つ広範な可能性を語ったり。乱暴に言えば、評論家の領域です。サービスやテクノロジーを利用する側は、講演会を聞いた後、未来に向かって「現在」何をすべきなのかということを確認するため、「展示会場に行く」ことが必要です。

次に展示会場。ここではベンダー(プロトタイプも含め)が、「予言」を実現するためのソリューションを展示しています。例えば、「テクノロジーをどう使うか」という講演で出された解答として、展示会のソリューションが1つの材料になります。それでも、ベンダー側からの押しつけ感も否めませんが。

最後に市場。「展示会場を出て市場に行く」フェーズがあります。ベンダーが来場したEC事業者の「成功」の担い手になるのは、展示会というスクリーニングを経たこの段階となります。

EC事業者が成功するか否かは、講演や展示会場で得たものを、どれだけ具現化できるように行動するかにかかっています

インターネットの普及によって、写真・映像であたかも体験した気になることができるようになりました。しかし、それには落とし穴もあったのです。「自分の目で確かめる」「自分の身体で体感する」。20年間EC業界に携わってきた結果、大事なことを疎かにしてしまった自分を見つけることができました。

日本のEC事業者は是非、IRCEに参加し、最新の世界のECを自分の五感で感じてください。きっと売り上げ、業績などの向上、新たな発見につながるはずです。


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インフォマークスは米国ECや流通企業の最新事例を日本に取り込み、日本のEC企業の5年後、10年後のビジョンを一緒に描きます。そして、ステージごとに適した戦略で最適なサポートを提供しています。

インフォマークス株式会社について

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楡井 康哲

インフォマークス株式会社

楡井 康哲(にれい・やすのり)

インフォマークス株式会社
マーケティングソリューション部 シニアコンサルタント

1976年東京都生まれ。1994年に秋葉原のパソコン量販店チェーンの九十九電機に入社。店舗接客の他、販売企画立案から仕入れまでを担当。1995年から新規事業のパソコン通信によるネット通販を起ち上げ、EC事業の責任者を努める。単体ECサイトで年間売上100億円を達成する。

2009年にはニフティのECメディア事業部門から独立した、同グループのEC事業戦略企業コマースリンク株式会社にて経営企画、SEOコンサルティングを担当。2011年、インフォマークス株式会社にジョイン。

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