小林 義法[執筆] 2023/10/26 8:00
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約175か国、数百万以上の事業者をサポートしている世界最大級のEコマースプラットフォーム「Shopify」。ShopifyをBtoB取引に活用し、ビジネスを拡大するためにクリアしなければいけない課題、BtoB-EC向けのShopifyの新機能について、Shopify Japan 伊田聡輔氏(シニア セールスリード)が解説した。

Shopify Japan シニア セールスリード 伊田聡輔氏
Shopify Japan シニア セールスリード
伊田聡輔氏

BtoB-ECプラットフォームに必要な6つの課題

BtoC向けのプラットフォームとして誕生したShopifyだが、近年はBtoB向けの機能を拡充させてきている。以前からBtoBに関する要望は数多く寄せられていたが、なかなか応えることができなかったという。なぜなら、ShopifyはBtoCに特化していたため、BtoB-EC向けにはクリアしなければならない課題がいくつもあったからだ。

①取引先ごとの個別対応

BtoCは、同一価格の商品をすべての消費者に販売するといった同一対応が基本だが、BtoBでは取引先ごとに条件が異なる。販売価格、付随する条件など同一対応は難しい。そのためオンラインストアに来訪するユーザーごとに、表示される製品や価格、取引条件を自動的に変える仕組みが求められる。

②取引先管理

BtoCでは購買履歴は個人単位で管理するが、BtoBでは「Aさんが買った」ではなく「Aさんが勤めるBという企業が1年間でこういった商品を買った」というデータベースを構築する必要がある。

③決済手段

BtoB では「月末締め翌月末払い」といった掛け払い、請求書のやり取りが一般的。BtoB特有の決済手段もプラットフォームでカバーしなければならない。

④最低ロットや割引など、取引条件の設定

BtoCなら通常は1個単位で販売するが、BtoBでは「2割引にするから最低ロットは50個以上」というように複雑な条件に対応できるシステムが必要になる。

⑤海外対応

買い手が日本国内とは限らないため、多言語、海外通貨に対応する仕組みが必要。

⑥チェックアウト機能

BtoB取引では所属企業名や部署、取引内容によって所属企業の年商や業種を必須項目にして、チェックアウトで入力できるようにしたいという要望があった。

これらの課題の解決がBtoB取引に対応したEコマースプラットフォームとしての必要条件となる。

どの取引をEC化するべきか

ここでShopifyが「BtoB向けのEコマースを構築したい」という相談を受けた実例を紹介したい。この企業は取引先が3セグメントに分かれていた。

ある企業の取引先構造
ある企業の取引先構造

売り上げの6割を占める「トップ取引先」というセグメントは、1社ごとに専任の営業担当を割り当てており、企業ごとに取引条件をカスタマイズしている。続く「中堅取引先」セグメントの売り上げが占める割合は2割から3割。ここに属する60社に対しては8人の営業をアサインしていた。取引条件は原則一律だが、ロットなどの諸条件によっては変更することもあった。

上記2つのセグメントに入らない数百の取引先企業が一番下の「マス取引先」セグメントに該当する。ここには3人の営業担当を充てていた。取引条件は大口取引でない限り一定で、顧客企業のLTV(ライフタイムバリュー)も大きくはない。

比率の差はあるにせよ、多くの企業がこの3つのセグメントに取引先を分類できるのではないだろうか。EC化して、より省力化したいという要望があるのが最後の「マス取引先」との取引だろう。費用対効果の高い「トップ取引先」セグメントにリソースを配分するために、この「マス取引先」との取引をEC化するのは有効な戦略だ。

BtoB-ECサイトのためにShopifyが実装した6つの機能

ここではShopifyのBtoBサイト向けの機能で、どのようなことが可能になるのかを説明していく。

ShopifyのBtoB向け機能
ShopifyのBtoB向け機能

企業プロファイル

複数のバイヤーとロケーションを、それぞれ独自の支払い条件とユーザー権限でパーソナライズして表示する機能だ。「この企業は掛け払い」「この企業は企業のクレジットカード」「この企業に対しては全商品を10%引きで提供する」というような、買い手企業に応じた決済や価格、取引条件を個別に設定できる。

価格リスト

タグやアプリを使わずに、購入者個別の価格を設定できる。

お支払い条件

支払い条件を自動的に設定する機能。管理画面で支払い期限が来た注文を追跡して回収できる。

カスタムストアテーマ

美しくキャッチーなBtoC-ECサイトのUIは、BtoB-ECサイトとしては逆に使いづらく、網羅性が低いことがある。「カスタムストアテーマ」ではサイトのテーマをカスタマイズしたりパーソナライズしたりといったことが可能だ。

カスタマーアカウント

決済条件、支払い方法、卸売割引など、チェックアウトをカスタマイズし、自動化できる機能。

セルフサービスポータル

アカウントの管理、購入する会社の拠点の選択、自社の購買履歴確認などが可能な機能。

このほか、BtoBとBtoCでストアフロントを共通にしたうえでAPIを連携させてログインする機能や、卸売先登録や取引のサマリー、卸価格の一括あるいは個別設定といった機能も追加できる。

「専用ストア型」と「ブレンド型」

BtoB-ECサイトには大きく分けると2種類ある。1つは「ブレンド型(Blended Format)」。これはBtoB、BtoCの注文を両方受け付けられるタイプで、法人の顧客は認証手続きを行うとBtoB専用の商品や専用価格を見ることができる。もう1つが「専用ストア型(Dedicated Format)」。BtoBの注文専用に別のストアフロントを用意し、BtoBの認証を行った顧客だけがアクセスできる

「ブレンド型」は売り上げや製品情報、価格の管理が容易で、「専用ストア型」は管理が二重になり面倒が生じる。しかし、顧客が個人なのか法人なのかがわかりやすいのは「専用ストア型」。「ブレンド型」と違って完全に別々に管理できるからだ。

Shopifyは「専用ストア型」と「ブレンド型」のどちらにも対応でき、導入オプションも選択可能だ。もともとあるBtoCのオンラインストアに、法人向けのログイン画面を追加し、法人としてログインするとBtoB向けのページにアクセスできるパターンや、BtoC向けストアのなかに専用IDでログインしないと表示されないBtoBコーナーを作るパターンなど、企業の方針に合わせてBtoB向けのストアを構築できる

さまざまな形態のBtoB-ECサイトを構築できる
さまざまな形態のBtoB-ECサイトを構築できる

まだまだあるBtoB取引をフォローするShopifyの最新機能

2023年6月、Shopifyは「Shopifyエディションズ」というおよそ100個の新規機能を発表した。このなかのBtoB向けの機能をいくつか紹介する。

「Sales Rep Support」

BtoB取引の場合、買い手企業に売り手側の営業担当者が付くケースが多い。その営業担当者が買い手側の購買活動を簡単に行える機能だ。電話発注があった場合、営業担当者が買い手に代わってオンラインストアで発注する「ドラフトオーダー」と呼ばれる仮注文を営業担当が行える。

「Sales Rep Support」
「Sales Rep Support」

「Company Account Requests」

従業員数や売り上げといった初回購入時に入力する企業プロファイルフォームを、カスタマイズ不要で作成できる機能。新規取引先企業の登録を簡略化できる。

「Company Account Requests」
「Company Account Requests」

「More Automations with Flow」

もともとあった「Shopify Flow」というルーティンワークを行う機能を自動化したもの。「More Automations with Flow」によりBtoBでも取引先企業ごとにセグメント化したコミュニケーション(ステップメール)、支払い条件やサイクル設定、注文ステータスに基づく請求書通知などを自動で行える。

「More Automations with Flow」
「More Automations with Flow」

「Quick Order List」

「Quick Order List」は商品のリスト表示とカートへの一括追加が可能になる機能だ。たとえばアパレル商品について、「各サイズとカラーを何着ずつ」という発注が非常に簡便になる。

「Quick Order List」
「Quick Order List」

「Volume Pricing」

購入数に応じたディスカウント率の設定を可能にする機能。たとえば50個購入しようとすると自動的に15%安くなるといった設定を行える。

「Volume Pricing」
「Volume Pricing」

「Store front Contextualization」

前述した「ブレンド型」のオンラインストアでBtoB顧客向けの購入体験ができる機能。BtoBのIDでログインすると、商品のリスト表示や一括カート追加が可能になる。

「Store front Contextualization」
「Store front Contextualization」
◇◇◇

短いスパンで新機能を実装し続け、進化が止まらないShopify。BtoB取引のEC化を考えている企業のEC担当者は、Shopifyと自社の製品・サービスとのマッチングを検討してみてはいかがだろうか。

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