D2Cの会[執筆] 2023/6/7 8:00

インフィニタス・バリューの田村浩社長、ZENB JAPANの高橋宏祐氏(執行役員 最高ダイレクト戦略責任者)、ベルタの武川克己社長が「D2Cの会」(売れるネット広告社主宰)に登壇し、「売上をアップする広告論」をテーマに各社の取り組み、成功事例、D2Cビジネスにおける広告との向き合い方について語った。

インフィニタス・バリューによる【事業フェーズ初期】の取り組みとは

インフィニタス・バリューは、2020年に米国発のマウスウォッシュ「エレメンタナノシルバーマウスリンス」のD2C定期通販をスタートした。

虫歯、歯周病、口臭などの原因期を減らす抗菌作用があるマウスウォッシュについて、日本では酸性の製品が多い。ただ、酸性度が強いと抗菌作用が高まる一方、歯が溶けてしまうといった可能性もある。田村社長はこの状況をつかみ、オーガニック原料を使用したアルカリ性のマウスウォッシュに着目。米国のelementa社が開発・製造する「エレメンタナノシルバーマウスリンス」の取り扱いを始めた。
【登壇者】インフィニタス・バリュー 代表取締役社長 田村浩氏
インフィニタス・バリュー 代表取締役社長 田村浩氏

事業開始後、まずは500円モニターの「ツーステップマーケティング」を実践。CPA(顧客獲得単価)は3000円前後だったが、引上率は6.7%と絶望的な数字に。その後、100円モニターの「ツーステップマーケティング」、同梱物、漫画風LPなどで引上率の向上を模索したものの、定期初回で解約するユーザーが多く、F2転換率が低いという課題を抱えた。

同梱物を追加してF2転換率アップを図った
同梱物を追加してF2転換率アップを図った

まとまった量の購入を訴求し、LTVアップに成功

そこで、同梱物を追加し、エコでお得な詰め替えパックのおまとめ購入を訴求。2か月分・4か月分をまとめて購入できるようにしたことで、F2転換率・LTVが大幅にアップした。

さらに、エコ訴求の同梱物の封入を継続しつつ、「フォーム一体型記事LP」の運用を開始。すると、CPO(購入客1人あたりの広告費)が5644円、年間ROAS(広告費用対効果)が451.62%という成果に結びついた。2~3か月おきにA/Bテストを繰り返しながら、このような結果が出るまで約1年かかったという。

申し込みフォーム一体型のランディングページ
申し込みフォーム一体型のランディングページ

【ZENB JAPAN】事業フェーズ中期の広告運用

「ZENB」は食品の皮・芯・種など、本来は捨てられる部分までまるごと使った食品ブランド。ZENB JAPANはミツカンのグループ会社で、2019年に事業をスタートした。

【登壇者】Mizkan Holdings 兼 ZENB JAPAN執行役員 最高ダイレクト戦略責任者 高橋宏祐氏
Mizkan Holdings 兼 ZENB JAPAN執行役員 最高ダイレクト戦略責任者 高橋宏祐氏

現在、世界初の豆100%ロングヌードル「ZENBヌードル」が起爆剤となり、事業成長を続けている。

ブランド「ZENB」の変遷
ブランド「ZENB」の変遷

立ち上げ当初、社内説明など大企業から分社化したコーポレートベンチャーならではの苦労があった。転換となったのは2021年の「売れる仕組み」の再構築。本サイト(ショップ)からカートに誘導するのではなく、LP主体・定期主体での販売に切り替えたことだ。その再構築が功を奏し、定期が売り上げの9割を占めている。

LTV(顧客生涯価値)向上の取り組みとして、解約の兆候と連動するNPS(Net Promoter Score:顧客ロイヤリティを計る指標)を重視。「顧客の商品やサービスへの不満の声から、半月後・1か月後の予測ができます。これを先んじてケアすることで、解約率を下げる取り組みを繰り返してきました」と高橋氏は言う。

2022年以降は、事業を本格的にスケールする段階に入っており、最近はいかに広告を打たずに買ってもらうか、いかに値引きをせずに買ってもらうかといったことを重視して取り組んでいる。

消費者心理に響く、「見せ方」を工夫した値引き

これまでの広告運用の成果からわかった成功法則は、バナーは「1000円」などと具体的な金額を記載するよりも、「○○%OFF」と値引き率を記載する方が顧客を獲得しやすいこと。

また、LPでは最初から値引きをして見せるのではなく、「クーポンを使うと安く買える」という見せ方にするのが効果的という。そうすることで、生活者は「クーポンをもらったら使わないと」という心理になるため、LPにクーポンを取り入れたことで、CVRが1.5~2.0倍に上がったという。

【BELTA】事業フェーズ長期の広告運用

「BELTA」は、女性のライフステージをサポートするサービス・ブランド。プレコンセプションケア、マタニティケア、産後・育児中ケア、ベビーケアに加え、「トータルサポートケア」として、ヘアケア商品やボディケア商品、インナーケア商品などを展開している。

【登壇者】ベルタ 代表取締役社長 武川克己氏
ベルタ 代表取締役社長 武川克己氏

新規獲得においては「広告を止めたら新規獲得が止まるはNG」「すぐに成果の出る広告は、すぐにまねされてすぐに終わる」という考えをもとに、一時的ではなく、半年後も継続的に成果が出る施策に時間を使うことを重視している。

広告を打たなくても新規獲得ができる状態にするための1つの施策にSEOがある。ビッグキーワード、ロングテールキーワード、潜在層キーワードで1~3位を多数獲得しており、オーガニック検索流入は直近1年で10倍に拡大。直近6か月でも4.5倍になっている。

「SEOはちゃんとやれば成果の出る施策です。短期的な成果にはつながりませんが、長期的な新規獲得の成果を上げるには、SEOは必須の施策だと思っています」と武川氏。直近では、LPと同じように各コンテンツのCVR改善に力を入れているという。

ベルタが重要視している「ブランド資産の構築」
ベルタが重要視している「ブランド資産の構築」

NPO法人や関連団体とのアライアンス、PR記事、街中でのPR活動など、直接的な成果や短期的な成果の出ない施策、あるいはそもそも成果がわからない施策を通して、複利成果を狙ったブランド資産の構築にも取り組んでいる。

その基準は「権威性を作れるもの」「Webでも残るもの」「ポジショニングを作れるもの」。つまり、継続性があって資産として蓄積できる施策を重視している。

さまざまな専門性を持つベルタの社員が顧客をサポートする
さまざまな専門性を持つベルタの社員が顧客をサポートする

さらに、胚培養士・管理栄養士・薬剤師・育児セラピスト・助産師・看護師・妊活マイスターなどBELTA社員による専門家の相談サポートが無料で受けられる仕組みも構築。

その専門家や医療機関によるイベントも毎週開催しており、顧客に徹底して寄り添う組織・文化・理念を作ってブランド構築に注力している。

新規獲得とCRMはセットで考える

そこからコンバージョンに導くという目的もあるが、「商品を販売して終わりではなく、顧客の目的や顧客とのつながりを大切にしたサポート」という顧客価値の創出にも重きを置いている。「こうした取り組みは、新規獲得だけでなく、既存顧客との接点強化にもつながっています。新規獲得はCRMと常にセットです」と武川氏。

潜在層へのアプローチは長期的な視点を重視し、「ツーステップマーケティング」に加えて、独自の「スリーステップマーケティング」も実施している。「診断・チェック」「専門家相談」からのナーチャリングを通してモニターになってもらい、気に入ってもらえれば本商品にという流れで、短期ではなく中長期な取り組みだ。

広告領域では1商品2人体制。広告担当者とLP制作者がタッグを組み、密にコミュニケーションを取りながら運用を進めているという。

事業の進展に合わせた広告の打ち方とは

3社の取り組みや成功事例の共有に続き、セッションの後半では、「事業進展によって広告とどう向き合えばいいのか?」をテーマにしたディスカッションが行われた。

当社はまだD2C事業をスタートしたばかりです。社内に広告運用できるスタッフがいない状態だったので、代理店に依頼して広告運用を行ってきました。どの広告媒体がいいかは、やってみなければわかりません。

扱っている商材がマウスウォッシュなので、マウスウォッシュの広告が出せる媒体は一通り出稿し、数字を見て判断しながら取り組んできました。

今はまだ広告代理店におんぶにだっこの状態ですが、ゆくゆくは内製化して、ベルタさんのように、広告を運用するスタッフとデザイナーがタッグを組む体制を作りたいです。

インフィニタス・バリュー 代表取締役社長 田村浩氏
インフィニタス・バリュー 代表取締役社長 田村浩氏

売上広告費比率で見ると、立ち上げ期は売り上げ以上の広告費を使っていましたが、今は売り上げが広告費を上回っています。数年後には売上広告費比率を10~20%にすることをめざしていて、将来的には広告費をなくしたいというくらいに考えています。

この3か月で広告費を半分にしましたが、売り上げは伸びています。広告に頼りっきりでは事業が進展しないので、事業を立ち上げてしばらく経つと、広告削減を決断しなければならない時期がやってきます。

今は組織を引き締めつつ、制作はできる限り内製化し、広告代理店には運用だけをお願いする形にしています。最適な形はステージごとに変わっていくと思います。

Mizkan Holdings 兼 ZENB JAPAN執行役員 最高ダイレクト戦略責任者 高橋宏祐氏
Mizkan Holdings 兼 ZENB JAPAN執行役員 最高ダイレクト戦略責任者 高橋宏祐氏

「いかに再現性のある広告を作れるか」を何よりも重視しています。できるだけ外的要因に左右されない状況を作りたいと考えると、「どこを内製化するか?」という問いは必ず出てきます

ベルタ 代表取締役社長 武川克己氏(右)
ベルタ 代表取締役社長 武川克己氏(右)

次回の「D2Cの会 フォーラム」は、2024年6月13日の開催を予定している。

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