大村 マリ 2023/12/13 8:00
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大手ECモールが台頭するなか、自社ECはどう戦うべきか――。支援案件12000件以上、数多くのEC企業を支援してきた、いつもの望月智之氏(取締役副社長)は「品ぞろえと商品レビューが大事」と言う。その理由やレビューを増やすのに効果的な施策を、最新の国内EC事情、「楽天市場」「Amazon」の動向などを交えて解説する。

成長を続けるECモール、自社ECは?

2022年における物販系ECの市場規模は14兆円。コンビニ市場(約12兆円)を超え、スーパー市場(約15兆円)と同じレベルにまで迫っている。カテゴリー別には食品、化粧品、家電、アパレルが順調に伸びている。

2022年 物販系EC市場規模予測
2022年 物販系EC市場規模予測(経済産業省の調査をもとに、いつもが作成)

下図はネット通販売上高ランキングの上位500社が、どのECモールに出店しているかをまとめたものだ。約5割以上が「楽天市場」「Yahoo!ショッピング」「Amazon」に出店している

ECモールへの出店・出品状況
ECモールへの出店・出品状況(日本ネット経済新聞の調査から、いつもが作成)

いつもの調査によると、物販系EC市場規模のおよそ7割にあたる10.5兆円が「Amazon」「楽天市場」といったECモールの流通額で占められているという。

2022年 ECモールと自社ECの市場規模
2022年 ECモールと自社ECの市場規模

同じくいつもの調査によると、自社ECの市場規模は約3.5兆円だが、毎年この数字は成長が鈍化してきている。一方、ECモールの市場規模は毎年5%〜10%で成長。自社ECサイトの数は増え続けているため、1サイトあたりの売り上げが下がっている、もしくは勝ち負けがはっきりしてきているということが言えるという。

「楽天市場」の最新動向

「楽天市場」には毎年4000〜5000の新規出店があるが、2020年〜2021年はコロナ禍で出店数が特に伸び、通常の1.5倍から1.7倍程の出店があった

「楽天市場」では現在、「SKUプロジェクト」が動いている。服などの色違いやサイズ違いで別の商品ページを作っていたものを、1つのページにSKUを統合し、ページを訪れた消費者がサイズや色を選びやすくするためのプロジェクト。また、商品ページをまとめることで、商品レビューが分散しないというメリットもある。

「楽天市場」の「SKUプロジェクト」
「楽天市場」の「SKUプロジェクト」

これができていないと、「楽天市場」のランキングに影響があると言われているので、各企業は急いで対応する必要がある。(望月氏)

いつも取締役副社長 望月智之氏
いつも取締役副社長 望月智之氏

もう1つ、EC事業者にとって重要なのが「配送品質向上制度」だ。早期の発送や土日も出荷できるなどの条件を備えている店舗にはラベルが表示され、検索結果も上位表示されると考えられている。

配送品質向上制度の概要
配送品質向上制度の概要

Amazonの最新動向

いつもの調査によると、「Amazon」はすべてのカテゴリーにおいて伸長しており、なかでも低価格商品が特に強いという。いつもが支援する企業において平均注文単価は、「Amazon」では3000円以下で、「楽天市場」は5000円〜6000円。およそ倍の開きがある。

「Amazon」には各企業が直接出品する「セラー出品」と、「Amazon」に卸す「ベンダー出品」がある。下図は「Amazon」の世界的な流通額におけるセラーとベンダーの動向を調べたもので、セラーの流通額が伸びているのに対し、ベンダーの流通額はそれほど伸びていないという傾向がわかる。

「Amazon」における世界のセラーとベンダーの動向
「Amazon」における世界のセラーとベンダーの動向(Statistaの調査をもとに、いつもが作成)

これは日本だけでなく世界的な動きとして、中国で製造されたものが安く流通するケースが増え、中国セラーが流通額の大部分を占めていると言われている。「Amazon」では、日本の他プレイヤーよりも中国のセラーやメーカーと戦わなければならないという状況が増えているのである。

ECで戦うために必要なのは「戦術」ではなく「戦略」

競争が激しいEC市場で生き残るためには、いろいろな規模、資本力の会社と戦わなければならない。また、国内に約20万社近くあると言われるEC企業において、店長や事業責任者といった人材が非常に少ないことも1つの課題である。EC事業をただ運用するだけでなく、戦略的に売り上げを作ることができる人材がマーケットに少ないのだ。

それでも事業を運営し続けなければならない。望月氏は「ECサイトができていて、メルマガや広告も打っているのに売れないという状況は、そこに戦略が不足しているから」と言う。

戦略と戦術の違い
戦略と戦術の違い

戦略とは、マーケティング戦略やSEO戦略、広告戦略のようによく使われる言葉だが、望月氏は、戦略と戦術は明確に違うという。

ページをどう直すのか、SEOをどう設計するのかはあくまでも戦術的な話。つまり、戦える状態にすることを「戦術」と呼び、「いつ、誰と、どう戦うのか」「予算をどこにどう投下するのか」「どれくらい売り上げを伸ばせる可能性があるのか」という、事業計画を含めたものが「戦略」だ。(望月氏)

たとえば「数年以内に10億円の売り上げをあげたい」という相談があっても、10億円のシェアはどこから取るのか、どう取るのかといったことまでは検討されていないことが多いという。

商品だけでなく品ぞろえで勝負する

たとえば扇風機を売る場合、ECモールで「扇風機」と検索すると、値段が安いものから高いもの、大手から中小メーカーまで膨大な量がヒットする。こうなると競合と戦うことを避けることはできない。

競合に勝つための施策として検索上位に表示されるには、広告を増やしたり、ページを改善したりする必要があるものの、当然予算も人材も必要になる。資本力がある企業なら一時的に赤字になってでも広告費をかけたり、粗利を削ったりという戦い方ができるが、資金力が限られている場合などはさらに複雑な戦略が求められる。

たとえば消費者がワンピースを買いにサイトに来た場合、1種類ではなく色や形の異なるいろいろな種類のワンピースを見たいはずだ。そのため、ECサイト内を回遊し、品ぞろえの豊富さや価格帯で購入するショップを選ぶだろう。だからこそ、商品単品だけの勝負ではなく、品ぞろえが重要なのだ。

下画像の赤で示した「自店舗」はECモールに出店している、いつものクライアント企業。横軸A〜Eはそれぞれ別の会社で、これらの会社の商品をすべて抜き出し、商品の価格をまとめたのが上段。下段は人気アイテムだけを抽出したものになる。

あるアパレル企業の品揃えマッピング表
あるアパレル企業の品揃えマッピング表

この表を見ると、まず自店舗の品ぞろえでは比較的価格が高いところに商品が多い。一方、人気アイテムを見ると、2000円〜6000円がボリュームゾーンになっている。では、どの企業と戦って、どのプライスラインのアイテムを増やすべきか。どこに広告費を使って人気アイテムに仕上げるのか。そういった戦略が必要になってくる

1商品ずつの戦いでは、広告費の使い方で大手の方が有利になる傾向が強い。特にECモールではCPA(1件あたりの獲得単価)を1回目の広告だけで回収できるようなケースは非常に少なくなっている。広告費の使い方よりも価格帯別の品ぞろえやマーチャンダイジングの方が重要だ。(望月氏)

商品レビューが最重要

実店舗で一等地を狙うように、オンライン上でも狙うべき一等地がある。それはECモールの検索上位や人気ランキングだ。出店するだけでは訪問者数が少ないので、一等地を押さえるために投資をして、検索結果の上位を取りに行く必要がある。

そして、良い場所を取ることと同じく、多くの消費者が買う直前に確認する商品レビューの重要性が高まっていることは必ず押さえておきたい。

下画像のグラフは、いつもの顧客データで、オレンジがレビュー数、青い線がコンバージョンレート(買い上げ率)。レビュー数とコンバージョン率の相関性が非常に高いことがよくわかるだろう。

ECの購買プロセスにおけるレビュー件数とCVRの関係
ECの購買プロセスにおけるレビュー件数とCVRの関係

商品レビューが付いていない状態で広告を大量に投下するのは効果的ではない。最初はレビューを貯める必要がある。(望月氏)

いつもでは100人の購入者のうち何人がレビューを書くかという「レビュー記入率」に注目している。通常は1%程度だが、購入者にレビューに関するフォローメールを送ると倍になるという。

さらに「レビューを書くとクーポンを配布」という施策によってレビュー記入率は5%になり、プレゼントを付けると最大30%まで上がる。クーポンやプレゼントは経費がかかるため継続は難しいが、商品をローンチしてからしばらくの間は、こうした仕掛けをしながらレビューを増やすのも戦略の1つだと説明する。

レビュー記入率の目安
レビュー記入率の目安

あるコスメブランドでは、レビューを増やす施策に150万円の投資を行った結果、1000件のレビューを獲得し、CVRが3倍になった

あるコスメメーカーECの実績
あるコスメメーカーECの実績

商品だけなく、店を覚えてもらう

以前は「ECモールだと消費者がどの店で買ったかを覚えていない」とよく言われてきたが、最近は消費者も目が肥えてきて、よく見る店や覚えている店、お気に入りの店を把握するようになった。

消費者もブランドや店舗を意識して買う流れがある。商品同士の戦いではなく、店舗やブランドの戦いに持ち込むことが重要。店舗独自の価値を顧客に知ってもらうこと、検索から見つけてもらって来てもらえることが大事。付加価値で勝負しないと広告費の戦いや価格競争になる。(望月氏)

では、選ばれる店舗とはどんな店舗なのだろうか。望月氏によると、大きく「マーケティング型」「親しみ・便利型」「商品価値型」の3つに分かれるという。

選ばれる店舗の3つのパターンとその代表的なブランド
選ばれる店舗の3つのパターンとその代表的なブランド

「マーケティング型」はいつ訪れても新しいトレンドの商品がある、新鮮味のある楽しい店ということ。「親しみ・便利型」は素早い配送スピードや、さまざまな配送パターンに対応している店。「商品価値型」は製造プロセス自体にこだわりを持っている店などだ。自社の個性を商品だけでなく、店舗全体としてメルマガやサイトなどで訴求することで選んでもらえるようになるという。

点ではなく線としてのノウハウ・支援

最近ではライブコマース市場やSNSを使ったECが伸びてきており、「ECモールのなかだけでプロモーションや集客をするといった戦い方は徐々に終わりつつある」と望月氏は語る。いつもではSNSなどから自社ECへ集客する支援も行っており、高い成果を上げてきた。

コスメや食品、インテリア、家電といったさまざまな企業を総合的に支援しているいつもの支援企業は12000件を超える。戦略立案から物流、デザイン、広告もすべて自社内で完結させることができ、自社ECだけでなくECモールを含めた複数のECプラットフォームにも対応している。

望月氏は「ノウハウや支援は、点ではなく線になっている必要がある」と強調する。「SEOだけができていても、集客した先のサイト内はどうなっているか、そもそもどういった顧客を呼ぶのかといった戦略がつながっているかどうか、点ではなく線としての支援ができないとクライアントの業績を上げることは難しい」と言う。

ECはサイトだけでなく在庫や開発、そこにいるマネージャーや運営担当者、物流担当者など、事業全体で見るべき。単純にサイトが良くなることより、事業のPLや資産などを見ながら、いかに利益を出すか、効率化するかという観点で総合的にサポートしている。(望月氏)

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