Digital Commerce 360[転載元] 2023/6/1 8:00

オンライン通販の利用者がどのようなマーケティングに反応するのかを理解することは、小売事業者が事業に投資する際の指針になります。米国のEC専門誌『Digital Commerce 360』と調査会社のBizrate Insightsが実施したデジタルマーケティング調査(2023年5月にオンライン通販利用者1070人を対象に実施)から、Eメール、マーケットプレイス、リテールメディア、ソーシャルメディア、インフルエンサーなど、デジタルマーケティングに生かせる消費者動向をお伝えします。

記事のポイント
  • オンライン通販の利用者は、メルマガを開封して、メール経由で購入している人が多い
  • Facebook広告は、購入につながる可能性が最も高いSNS
  • 調査対象となったオンライン通販利用者の55%は、インフルエンサーの影響では購入しない

購買行動への影響力トップはEメール、SNSは3位

オンライン通販利用者の購買行動には、さまざまなマーケティング施策が影響を与えており、なかでもEメールは購買行動に結び付く大きな要素になっています。

「どのような取り組みが購買行動に影響力を持つか」という質問に対して、43%が「以前見た商品がセール中であることを示すメールが最も影響力がある」と回答。一般的な内容のメールでも39%が影響力を受けていると答えています。Eメールによるマーケティングの有用性が高いと言える結果ではないでしょうか。

そのほかには、「在庫切れ商品の再入荷メール」(24%)「カートに入れたままの商品」(20%)「注文・発送確認メール内のプロモーション」(13%)なども、購買行動に影響を与えているようです。

ソーシャルメディアが購買行動に大きな影響力を持つと回答したのは36%。ソーシャルメディア上の広告に注目していると答えたのは27%でした。一方、インフルエンサーの影響は14%にとどまり、購入を促進する可能性は低いと言えます。

また、カタログや印刷物などのアナログなマーケティングが購買行動に影響すると回答した割合は24%実店舗やショッピングモールでの広告は26%でした。これらのマーケティングや広告も、購買意欲を高める要因となっていることがわかりました。

会員やロイヤルティプログラムの特典は、オンライン通販利用者の22%がコンバージョン促進する影響力があると答えています。

また、購買行動に影響力があるマーケティング施策に21%がテキストメッセージをあげました。マーケティングの観点からテキストメッセージが購買行動に影響力を与えていることは興味深いことです。

一方、「検索エンジンに連動した広告」(16%)「オンラインで閲覧したコンテンツ」(14%)「オンラインで商品を見た後に消費者を追跡するリターゲティング広告」(10%)は、他の項目よりも購買行動への影響力が低いようです。

オンライン購入のきっかけとなる、影響力のあるマーケティング施策( 出典:『Digital Commerce 360』とBizrate Insightsが実施した調査)
オンライン購入のきっかけとなる、影響力のあるマーケティング施策( 出典:『Digital Commerce 360』とBizrate Insightsが実施した調査)

数字でわかるEメールが商品購入に与える影響度

3人に1人がメールの内容を参考に週1回は商品を購入

以下のグラフから、Eメールが小売事業者にとってマーケティングの強力な武器であり続ける理由がわかります。オンライン通販利用者の半数が少なくとも毎日Eメール広告を閲覧し、25%が少なくとも週に数回、9%が毎週、6%が毎月閲覧しています。

小売店からの広告メールを開封する頻度( 出典:『Digital Commerce 360』とBizrate Insightsが実施した調査)
小売店からの広告メールを開封する頻度( 出典:『Digital Commerce 360』とBizrate Insightsが実施した調査)

オンライン通販利用者の3人に1人は、単にメールを開封するだけでなく、メールの内容を参考にして、少なくとも週に1回は商品を購入。16%が「毎日」または「1日に何度も」という高い頻度で購入しています。「週1回」または「週に数回」と回答した割合は20%に達しています。

「月1回」は23%、残りの32%が年に数回購入していることがわかりました。「Eメールをきっかけに購入したことがない」と回答したのは9%にとどまっています。

小売事業者からのメールを読んだことがきっかけで購入する頻度( 出典:『Digital Commerce 360』とBizrate Insightsが実施した調査)
小売事業者からのメールを読んだことがきっかけで購入する頻度( 出典:『Digital Commerce 360』とBizrate Insightsが実施した調査)

開封率が最も高いメールは「以前見た商品のセール通知」

Eメールを開封する可能性が高い上位3つのプロモーションを聞いたところ、プロモーションや割引に関するメッセージが最多で、半数が「開封する」と答えています。

また、注文に関するメールも開封率が高くなっています。その内訳は、「発送確認」(40%)「注文確認」(38%)「配送確認」(32%)です。

そのほか、「ロイヤルティプログラムに関連したプロモーション」(31%)「送料無料の案内」(30%)「新商品の案内」(23%)なども関心を集めています。

回答割合が低かったのが、「在庫再入荷のお知らせ」が17%、「シーズンキャンペーンのお知らせ」が15%。「購入した商品のレビュー依頼」は14%、在庫切れする前に通知を送る「商品補充のリマインド」は9%にとどまっています。

いずれにしても、Eメールは、マーケティングおよび顧客に対する情報提供の重要な手段であることがうかがえます。

最も開封しやすいEメール(上位3つを選択)( 出典:『Digital Commerce 360』とBizrate Insightsが実施した調査)
最も開封しやすいEメール(上位3つを選択)( 出典:『Digital Commerce 360』とBizrate Insightsが実施した調査)

マーケットプレイスの広告が与える影響

AmazonやeBayなどのマーケットプレイスで買い物をする際に閲覧できる広告について、ユーザーに与える影響を調べたところ、「いつも影響がある」または「よく影響がある」と回答した割合は35%、「たまに影響がある」とのは37%でした。

一方、「めったにない」または「まったくない」と回答した割合は28%。小売事業者にとって、このようなマーケットプレイスに表示する広告で自社の存在感を出すのは難しいことですが、購買行動につながるマーケティングの機会にもなり得ます。

AmazonやeBayなどのマーケットプレイスで買い物をする際に目にする広告は、どれくらいの頻度で購入に影響を与えているか( 出典:『Digital Commerce 360』とBizrate Insightsが実施した調査)
AmazonやeBayなどのマーケットプレイスで買い物をする際に目にする広告は、どれくらいの頻度で購入に影響を与えているか( 出典:『Digital Commerce 360』とBizrate Insightsが実施した調査)

購入につながる可能性が高いSNSはFacebook

6つのSNSについて、オンライン購入につながるかどうかの順位を調べたところ、Facebook、YouTube、Instagramはオンラインでの購買に関連する機会を多く提供している可能性があることがわかりました。順位は次の通りです。

  • Facebook: 58%
  • YouTube: 45%
  • Instagram: 40%
  • Pinterest: 27%
  • TikTok: 21%
  • Snapchat: 10%

オンライン通販利用者の半数以上が、ソーシャルメディアのアプリやプラットフォームを通じて商品を購入することに抵抗がないことが判明しました。このことは、デジタルマーケティングや市場の成長にとって良い兆候です。

ソーシャルメディアのアプリやプラットフォーム内で購入をする際の快適さ( 出典:『Digital Commerce 360』とBizrate Insightsが実施した調査)
ソーシャルメディアのアプリやプラットフォーム内で購入をする際の快適さ( 出典:『Digital Commerce 360』とBizrate Insightsが実施した調査)

インフルエンサーの影響力は限定的

オンライン通販利用者の大半は「インフルエンサーの影響で購入しない」(55%)と回答。一方、26%は「小売事業者のWebサイトに掲載されているインフルエンサーのコンテンツから購入する」と答えています。

「インフルエンサーのリンクツリーを通じて購入する」と答えたのは19%。このことから、インフルエンサーの役割は購買行動の観点では限定的であると言えます。

インフルエンサーがSNSで紹介した商品を購入するか( 出典:『Digital Commerce 360』とBizrate Insightsが実施した調査)
インフルエンサーがSNSで紹介した商品を購入するか( 出典:『Digital Commerce 360』とBizrate Insightsが実施した調査)

SNSを通じて買い物「しない」人は少数。大多数は「新しい商品を見つける場所」の位置付け

ソーシャルメディア利用者がSNSを通じて買い物をする理由は、商品発掘と魅力的なプロモーションが上位を占めています。

オンライン通販利用者の38%がソーシャルメディアを新しい商品を見つける場所として捉えていると回答。26%は新しいブランドや商品を試すことができる、22%はインフルエンサーを評価すると答えています。

利便性の側面もあります。36%はソーシャルメディアを定期的に利用して買い物をしています。また、24%は、ソーシャルメディアの影響で常に最新の情報を得ることができると回答しました。ソーシャルメディアを通じて買い物をしないと答えた人は、わずか4%でした。

ソーシャルメディアを通じて買い物をするようになった理由( 出典:『Digital Commerce 360』とBizrate Insightsが実施した調査)
ソーシャルメディアを通じて買い物をするようになった理由( 出典:『Digital Commerce 360』とBizrate Insightsが実施した調査)

広告表示が購買行動に与える影響、「影響することがある」のは少数派

多くの小売事業者が、自社のECサイト上でさまざまなブランドや外部の小売事業者からの広告を配信しています。

オンライン通販利用者の4人に3人は、小売メディアネットワーク上の競合他社の広告に気が付くものの、その多くは購買行動に影響を受けていないようです。ECサイト上に表示される広告について、「まったく気にしない」(24%)を除くと、以下のような調査結果が得られました。

  • いつも広告を見ている:21%
    -買い物に影響することがある:11%
    -買い物に影響を与えない10%
  • ときどき広告に気が付く:55%
    -買い物に影響を与えるかもしれない:28%
    -買い物に影響を与えない:27%
ある小売事業者のWebサイト上で別の小売事業者からの広告を見たとき、最もよくとる行動( 出典:『Digital Commerce 360』とBizrate Insightsが実施した調査)
ある小売事業者のWebサイト上で別の小売事業者からの広告を見たとき、最もよくとる行動( 出典:『Digital Commerce 360』とBizrate Insightsが実施した調査)

消費者は、いつ、どこで、どのように事業者からのマーケティングをうけとり、購買行動に影響を受けるかを自ら決めています。

つまり、小売事業者が効果的なマーケティングを行うには、消費者の行動やニーズを観察し、マーケティング施策に注意を払い、結果を分析することが必要です。

マーケティングで唯一変わらないことは、「変化していくこと」だからです。

この記事は今西由加さんが翻訳。世界最大級のEC専門メディア『Digital Commerce 360』(旧『Internet RETAILER』)の記事をネットショップ担当者フォーラムが、天井秀和さん白川久美さん中島郁さんの協力を得て、日本向けに編集したものです。

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