森野 誠之[執筆] 2023/10/24 8:00

岐阜の食品卸企業「ナカヤマ」は2020年にECサイトを開設し、2年で月商1千万円を達成しました。コロナでの売上減を乗り越え、在庫管理を改善し、社内協力でサイトを構築。プレオープンや周囲の人への宣伝を通して改善を進めていった結果、ここまで伸びたようです。

プレオープンで身内に買ってもらうのはいいアイデア

岐阜の老舗食品卸企業がECサイト立ち上げから2年で月商1千万円超え!成長の軌跡を訊く | コマースピック
https://www.commercepick.com/archives/42266

株式会社ナカヤマ(以下、ナカヤマ)は食品卸を中心に展開する岐阜県恵那市の企業です。創業70年と老舗企業ながらも2020年にECサイトを立ち上げてから、わずか2年で月商1千万円を超え、3年目になりコロナ特需が明けた今も売上は安定的に成長しています。

今回はネットショップの構築~運営の事例記事です。2020年と言えばコロナ。食品卸業であるナカヤマさんも影響が大きく「売り上げがまったくと言っていいほどない状態」になってしまったとのこと。そこからどうやって月商1千万円までもっていったのでしょうか?

プロジェクトが動き始めるときに社長から「売れ残っている商品の賞味期限が迫っているため、サイトの立ち上げを1か月でなんとかして欲しい」と依頼を受けました。この時点では、商品に関するリストやデータなど整理されている情報はない状況です。倉庫を見ると棚割りもされておらず、それまでの棚卸の作業は、白紙の紙とえんぴつをもって倉庫に行き在庫を数えていました。何がどこにどれくらいあるのか全員が正確に把握できていなかったのです。

ネットショップを作るところから始めずに、まずは在庫の管理から始めたようです。卸であれば大量の数が出ていきますが、通販となると1個単位なので細かい在庫管理が必要ですね。また、小売りの売価も決まっていなかったのでそこも決めたとのこと。売るための準備って意外と多いです。

お取引先の飲食店などに営業できないことで、社員全体のリソースをECサイトの立ち上げに集中することができました。営業部だけでなく、ラベル部やデザイン部、化成部などさまざまな部署に協力してもらい、一丸となって商品情報の作成を行います。

コロナで手が空いてしまった社員の皆さんが協力してくれたんですね。平時ではこういった対応は難しいですが、非常時となればこうなります。皆さんも2020年当時はこんなことが多かったと思います。ある意味、いいタイミングだったとも言えますね。

売上が立たないと社内のモチベーションが下がりかねないため、運用の練習を兼ねてプレオープン中はナカヤマさんの社内の皆様に買っていただくようお知らせしました。そこから徐々に知り合いやグループ会社など、身近な方に購入してもらいやすいように宣伝を広げていきます。
(中略)
社内の多くの方にサイトを見ていただいて「商品ページに違う商品の説明が入っているよ!」とか、細かい指摘をたくさん頂き、どんどん改善を進めていきました。

これはうまいやり方! 完璧を期すと時間だけが過ぎていきますが、プレオープンとして社員の人に買ってもらう。社員なので商品には詳しいでしょうし、作っている側の視点で校正もしてくれます。

月商が1,000万円を超えたのは大手メディアサイトに商品を紹介いただいたタイミングです。一見、メディア掲載による一過性の売上向上はまぐれのように思われがちですが、取り上げていただくきっかけはコツコツとお二人が作り上げたコンテンツがあったからこそなのです。

Yahoo!ニュースTOPで紹介していただきました!-給食食品・冷凍食品ネット通販 食のプロ御用達ネット通販ナカヤマフーズオンライン
https://nakayama-foods.com/html/page67.html

実際に紹介された商品がこちら。給食に出てきたものが買えるというのは話題性がありそうですね。それもこれもきちんとコンテンツを作って発信していたからこそ。黙っていてはメディアに気づいてもらえません。

今回、ナカヤマさんは良い意味で会社に染まっていない2人の担当者をつけていただき、先入観を持たない状態でユーザー目線のサイトやコンテンツを作り上げることができました。ECサイトを作ることで売上を伸ばせる企業はたくさんありますが、既存の商品やサービスをECにフィットさせるのは一筋縄では行きません。

最大のポイントはこちら。社歴が長いと外からの目線で見ることができないのですが、会社に染まっていないお2人を担当に抜擢したことでうまく進んでいます。卸業が小売りを始めるときに最も難しいのが、消費者が思っていることがわからないことなので、消費者に近い人を担当にする方法が正解だと思います。ここは大いに参考になります。

今週の要チェック記事

【EC売上ランキング2023年版】1位アマゾン、2位ヨドバシ、3位ZOZO、4位ヤマダHD、5位ビックカメラ、6位ユニクロ | ネットショップ担当者フォーラム
https://netshop.impress.co.jp/node/11447

コロナの影響もなくなってきて実力を現したランキングになってきました。Amazonは別格です。

ステマ規制に関するECモールの最新対策+今後の注意点まとめ | ネットショップ担当者フォーラム
https://netshop.impress.co.jp/node/11482

「広告ですよ」とわかるようにすることが大切。細かい対応はその先で。

27.1%がふるさと納税を寄付済 | 2023年ふるさと納税の利用状況に関する調査(2023年9月) | コマースピック
https://www.commercepick.com/archives/42258

そろそろ年末が近くなってきて伸びる時期。出品者の皆さんは忙しさ対策を。

令和4年度のふるさと納税による経済波及効果 4兆1,259億円 | 経済効果.NET
https://economicimpact.net/2023/10/18/231018/

都会の富が地方に分配されたと考えるといいことなのですが…。何とも判断が難しいです。

「2024年問題に関するアンケート」調査 コスト上昇による業績悪化など、マイナス影響が生じるとみている企業が6割を超える | ECのミカタ
https://ecnomikata.com/ecnews/40713/

わかっている未来なら対応しないといけません。残された時間は少ないですが早めに。

「ZOZOTOWN」の商品受取を「置き配」に初期設定。選択率は2倍超+対象商品の約7割が「置き配」配送に | ネットショップ担当者フォーラム
https://netshop.impress.co.jp/node/11501

置き配はどこでも当たり前になってきますね。

アマゾン、リヤカー付き電動アシスト自転車を導入。運転免許不要で配達が可能に | ASCII.jp
https://ascii.jp/elem/000/004/163/4163608/

平地かつ住宅街という条件なら活躍しそう。

売る時の安心感も“売る以外”の業務効率化も実現 土屋鞄とMOONRAKERSのShopify活用法 | MarkeZine
https://markezine.jp/article/detail/43549?mode=print

「Shopify」はカート以外の機能が豊富。そこを使いこなせればやれることが大きく広がります。

今週の名言

#1水江日々生 『終わりなき旅』 | 京都大学硬式野球部
https://ameblo.jp/kyoto-bbc/entry-12824567524.html

4年間のうち、自分が成長するタイミングは突然やってきます。そのタイミングを見逃さないために思考を続け、実践を繰り返し、失敗し、何を失敗したかを考えて何かを掴む、このサイクルに溺れる事なく、これを上手く回せるようになる事です。

売れるタイミングも突然やってきます。「ちょっとずつ売れてきたな~」と思ったらそこから急に伸びるパターンが多いです。その時のために試行錯誤を。

筆者出版情報

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