通販新聞[転載元] 1/23 7:00

キューサイは、22年3月の佐伯澄社長の就任以降、「ウェルエイジング」支援を掲げ、事業構造の転換を進める。化粧品、健康食品を軸として単品通販モデルの脱却も図り、エイジングケアの総合プラットフォーム構築をめざす。佐伯澄社長に改革の進展を聞いた。

キューサイ 代表取締役社長 佐伯 澄氏
キューサイ 代表取締役社長 佐伯 澄氏

事業構造の改革のポイント

チャネル横断のマーケティングを強化

――就任に際して「マルチチャネル・マルチプロダクト」を打ち出した。

以前は、ブランドの概念が希薄だった。チャネル別ではなくブランド軸で見る組織に変え、チャネル横断のマーケティング機能を強化した。

一例として福岡市内で行った「コラリッチ」のキャンペーンでは流通の配荷量、販促、EC誘導策など導線の設計、クリエイティブもこれに即したものに変えた。ブランド別のPL分析、認知から購買、顧客育成に至る分析も強化している。

社内外へ向け、組織&意識改革

――ウェルエイジングカンパニーを掲げ、組織・意識改革を進めた。

期待役割に基づく組織改編、名称変更に始まり、「ウェルエイジング」の文脈に沿った企画の検討・実施、コーポレートブランディングを進めている。広報部門もウェルエイジング戦略企画部に改称し、社内外にウェルエイジング発信の役割を落とし込んだ。(※1)

コーポレートブランディングには、お客さま、社員、ステークホルダー(取引先)の3つの軸が必要になる。独自に呼称する「ヒューマンダイヤモンド」(※2)に即した商品開発を行い、これをウェルエイジングの文脈で顧客に訴求している。

強みを持つケールとコラーゲンを生かした「ザ・ケール ビューティーリッチ」(内側からの健康・美容)、「ベースドコラーゲン」(ゆらぎ世代の女性向け)などの製品がそれだ。「ビューティー―」の初動も好調でコンセプトの浸透に対する好感触を得ている。

飲み物に混ぜて飲むパウダー状の青汁「ザ・ケール ビューティーリッチ」(画像はキューサイ公式通販サイトから編集部がキャプチャ)
飲み物に混ぜて飲むパウダー状の青汁「ザ・ケール ビューティーリッチ」(画像はキューサイ公式通販サイトから編集部がキャプチャ)

一方で、「人生初を、いつまでも。」という理念に沿う挑戦、業務の向き合い方を社員も体現していく必要がある。これをステークホルダーと共創していく。グループのユーグレナ、寝具メーカーの西川、福岡市とのコラボ企画の展開もその一環だ。

※1......銭湯とのコラボレーション企画では、単純な商品サンプリングではなく、「元気に歩いて通う」というウェルエイジングの啓発を意識した発信など。
※2......身体の一部ではなく、さまざまな器官のバランスを保つことが心身の健康を維持するために大切であるという考え方。

近年の振り返り+今後の展望を聞く

――前期(22年12月期)の実績は、3.5%増の257億円だった。25年に300億円の売り上げを掲げる。初年度の評価は。

昨年8月に子会社のキューサイ分析研究所売却のマイナス影響があるなかで増収増益を果たした。青汁は横ばいで新規を拡大しきれていない面はある(編注:「昨年」は2022年を指します。この記事は2023年12月22日配信の「通販新聞オンライン」を転載しています)。

――化粧品事業のてこ入れは。

オールインワン化粧品市場も機能性の差別化は難しい。ただ、ウェルエイジングの文脈であれば訴求の幅を広げることは可能だ。アンバサダーに起用するIKKOさんを中心にインフォマーシャルでは高い認知があり、コアなファン層の基盤が強みだが、いかに若年層にリーチするかも課題だ。

――どう対処する。

IKKOさんは契約の見直しで主力商品にとどまらない起用を可能にした。インフォマで購買意向を持つ顧客を動かす力は非常に優れている。15秒、認知施策において新しい取り組みも検証していく。

インフォマーシャルに美容家のIKKOさんを起用し訴求力を高めている(画像はキューサイのコーポレートサイトから編集部がキャプチャ)
インフォマーシャルに美容家のIKKOさんを起用し訴求力を高めている(画像はキューサイのコーポレートサイトから編集部がキャプチャ)

流通は、当初100店ほどだったが1500店ほどまで拡大した。チャネル連動の施策、SNSなどデジタルの設計も進め、一気通貫で導線を作り40~60代の獲得を強化したい

「広告の見直し」「顧客フォロー」「ウェルエイジング強化」で増収増益

――今期(編注:23年12月期)の見通しは。

増収増益の見通しだ。

――収益良化の要因は。

広告のバイイングを見直して買い付けの最適化を進めたのと同時に、新しいクリエイティブ開発強化を進めた。一方で、CRMツールを新たに導入し、優良顧客の解像度を高めた。育成が望める顧客のセグメント分析、シナリオ設計を精緻化し、LTVを意識した顧客フォロー、クロスセル提案を手厚くした

――デジタル強化も志向した。

媒体費の抜き差しだけではない、売り場としての大幅改善に注力した。サイトはブランド軸、ウェルエイジング軸で購買できる導線を整理した。ウェルエイジングの実現は自社製品でなくても可能だ。仕入れ品も活用して品揃えの充実も図る。現状は50ほどだが増やしていく。商品のセレクション、割引施策やアソートなどオファー設計、買い回りに対応した利便性、個々の顧客に応じたウェルエイジング提案の構築が重要になる。

24年12月期に270億円規模めざす

めざすのは顧客からの指名買い

――単品通販のイメージから離れる。

コラリッチ、ケール単体の関係構築など従来の単品通販モデルでは自ずと限界がある。機能性表示食品も差別化が難しい。ウェルエイジングといえばキューサイ、と指名買いしてもらうための環境整備を進めている

品揃えではウェルエイジングを軸に幅広い領域をカバーし、かつ顧客が自らの状態を知るための支援習慣を変える支援を揃えることが条件になる。SNSで商品の確からしさを確認するなど、消費者の購買行動が変化するなかで、導線もマルチチャネルで構築する必要がある

ウィルエイジングをサポートする新サービスを計画

――健康状態の可視化を通じた商品提案の新サービスを予定している。

ウェルエイジングを体現できるプラットフォームを構築する。測定結果を受けた顧客への商品、生活習慣のレコメンデーションの設計が肝になる。適切なエビデンスを背景に提案するため、ウェルエイジングの関心層を対象にした他社との共同研究も始めている。来年(編注:2024年)末から25年年頭にはベータ版の提供をめざしている。

顧客体験価値向上により300億円を射程内に

――来期(※編注:24年12月期)の数値目標は。

270億円前後はめざしたい。

――300億円の数値目標達成の見通しは。

十分射程にある。そのためにエイジングを包括的するプラットフォームとして顧客体験価値向上をめざす

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