松原 沙甫[執筆] 5/10 7:00

スクロールは3か年の中期経営計画(中計)を策定、中計最終年度となる2027年3月期に連結売上高900億円、経常利益80億円、当期純利益54億円をめざす数値目標を掲げた。

前期の2024年3月期連結業績は、売上高が前期比1.5%減の798億2600万円、営業利益は同13.2%減となる53億1300万円、経常利益は同11.0%減の55億1200万円、当期純利益は同12.5%減の36億4900万円だった。

連結売上高は当初830億円を見込んでいたが、eコマース事業の売上高が190億円の計画に対して159億4200万円にとどまった。子会社のナチュラムが手がけるアウトドア・キャンプ用品の市場縮小、AXES(アクセス)によるブランド用品販売は競争の激化など市場環境が悪化、減収に影響した。

スクロールは3か年の中期経営計画(中計)を策定、中計最終年度となる2027年3月期に連結売上高900億円、経常利益80億円、当期純利益54億円をめざす数値目標を掲げた
これまでの実績と今後の定量目標(画像はIR資料から編集部がキャプチャ)

こうした環境を踏まえ、新中計では従来のダイレクトマーケティングソリューションカンパニー(DMSC)から、マーケティングソリューションカンパニー(MSC)への進化を掲げた。事業ドメインの拡大に取り組むとし、既存事業に対して機能やテクノロジーを追加して、提供価値を高めていく。

スクロールの新中期経営計画では従来のダイレクトマーケティングソリューションカンパニー(DMSC)から、マーケティングソリューションカンパニー(MSC)への進化を掲げた
事業ドメインの拡大(画像はIR資料から編集部がキャプチャ)

新中計のけん引役は、他社の通販事業を支援するソリューション事業の領域拡大。BtoBに対する物流代行事業に向けた事業ドメインの拡大、新たな市場開拓として食品ECへの支援事業への着手、M&AによるBPO事業や決済代行事業の拡大と安定化を図る。

その一環として4月11日付で、連結子会社のスクロール360が多言語同時通訳を強みとしたコールセンター業務のビーボーンの全株式を取得した。

スクロール 事業ポートフォリオの修正
事業ポートフォリオの修正(画像はIR資料から編集部がキャプチャ)

生協組合員向けに事業を展開する通販事業は、事業・商品・業務価値を高めることで収益力の向上を図る。新サービスとしてアパレルAIシステム「Lightchain(ライトチェーン)」の提供を開める。子会社のスクロールインターナショナルがアパレル商品企画・開発に特化した生成AIシステムで、ユーザーが商品画像(元データ)をアップロードし、変更内容を指示すると、それを反映した商品企画案をAIが生成する。デザインや色・柄の変更を数クリックで実現し、アパレル企画業務の大幅な時間短縮が期待できるという。

課題のeコマース事業では、「止血を最優先」とする。事業領域を縮小し、赤字脱却を優先すると同時に事業転換の方向性を模索。健康・美容・旅行を手がけているHTB事業は今期からeコマース事業へ統合する。eコマース事業による2024年3月期のセグメント損失は11億2900万円。同事業による売上高、セグメント利益ともに第4四半期(2024年1-3月期)の落ち込みが際立っており、早急に業績悪化の歯止めをかけていく。

スクロールのセグメント別中期経営計画
セグメント別中期経営計画(画像はIR資料から編集部がキャプチャ)

 

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