「ChatGPT」などのAI(人工知能)はどんなもの? ECビジネスに役立ちますか? などの基礎情報を解説
近年、OpenAIの「ChatGPT」やGoogleの「Bard」といったAI技術が注目を集めており、EC業界でもその活用が期待されています。「AIはどのようにECに活用されるのか」「どのような展望が待ち受けているのか」「私たちはどのようにAIを受け入れていくべきなのか」を、GMOペパボの栗林健太郎(取締役CTO CTO室室長 ペパボ4推進室室長)に聞きました。
「ChatGPT」など生成AI(人工知能)はどのようなもの? どんな影響を与えるのか
「ChatGPT」の「GPT」は「Generative Pre-trained Transformer」の略。「Transformer」というディープラーニング(深層学習)の手法を用いて事前学習済み(Pre-trained)の、テキスト生成型(Generative)言語モデルといった意味合いになります。「ChatGPT」は2021年9月までの膨大な量のデータでトレーニングされています。
日本では2023年2~3月頃から「ChatGPT」について大きく報道されるようになりました。OpenAIのCEOであるサム・アルトマン氏が来日して岸田総理大臣と面会したり、「使ってみた」という声がSNS上を賑わせたりと、研究や技術の領域を越えて盛り上がっています。
AI自体のブーム(第3次AIブーム)は2000年代から始まっていて、ディープラーニングによりAIが飛躍的に発展したことで「AIはすごい」「AIがいろいろなことを変えるぞ」と期待感が高まっていました。盛り上がりの下地があったとはいえ、「ChatGPT」という1つのツールがこれほど話題の起爆剤になるのは、ITの世界においても珍しい現象です。
話題になった理由は「対話型AI」であること
また、少し前から話題となっていた画像生成AIの存在も、爆発的に注目が集まったことを後押ししているでしょう。2022年7月に「Midjourney(ミッドジャーニー)」がオープンベータ版に移行、同年8月に「Stable Diffusion(ステーブル・ディフュージョン)」がオープンソースとして公開されました。これら画像生成AIにテキスト(プロンプト)で的確な指示を出すと、いまや人間が描いたものとほとんど区別がつかないほど高精度のイラストを生成します。
このように、画像生成AIへの関心が高まっているところに「ChatGPT」が登場したわけです。日本語に対応しておらず英語で入力しなければならない場合も、「ChatGPT」を使えばプロンプト(テキスト)を作成してもらえますし、対話しながらプロンプト(応答を生成するための命令文)をより良いものに改善することもできます。
「ChatGPT」は、画像よりもさらに適用範囲の広いテキストを高いレベルで生成できる点でインパクトが大きく、社会に驚きをもって迎えられています。
従来のチャットボットとの違いは?
チャットボットのアルゴリズムにはいくつか種類がありますが、基本的には質問されたことに対してあらかじめ決められたルールやスクリプト(プログラム)に従い、データベースの中にあるより近い答えを抽出して提示します。チャットボットに汎用性はなく、突然「今日の晩御飯どうしたらいい?」と聞いても答えてくれません。
それに対して、「ChatGPT」のような生成AIは汎用性が高く、人間のように会話の文脈に応じてその都度最適な文章を生成することができます。ただし、必ずしも事実を提示するとは限らないんですよね。テンプレを適用していれば嘘をつきようがないですが、自分で文章を生成しているので間違えることもあります。
もし「ChatGPT」をECに導入したら、汎用性があることはネットショップ運営者にとってメリットが大きいですし、エンゲージメントの向上に寄与するだろうと思われます。一方で提示する内容のコントロールが難しいので、ブランディングを意識した対応ができない恐れもあります。「ChatGPT」の汎用性の高さにはメリット・デメリットがあることを理解しておくべきです。
一方で、スマートスピーカーとの組み合わせで、音声インターフェースを通して操作できるのは便利ですね。現状のAIアシスタントにも「ChatGPT」にはない良さがありますが、トヨタ社が「Alexa」に代わって「ChatGPT」の搭載を検討しているという報道があったように、AIアシスタントの裏側もより高性能で、自然な会話が可能なAIにアップデートされていくのだろうと考えています。
「ChatGPT」などの生成AI(人工知能)は人間の代わりになるのか?
ECだけでなくどんな仕事でも同じですが、AI導入を検討する際には必ず「100万人連れてきたら効率化する業務か」と考えてみてください。在庫管理や商品発送に人手が足りないのであれば、まさに100万人いれば解決することなので、AIを導入したら効率化するかもしれません。
一方で、「今までにない発想で新ブランドを立ち上げたい」というのは、効率の問題ではないですよね。100万人に頼っても解決しないと思います。なぜならブランドの方針を決めるのはオーナーさんですし、自分のブランドを立ち上げるのに人任せにはできませんよね。結局、何がクリエイティブであるかを決めるのは人間なのですから。
AIはコストを考え、ケースバイケースで使い分ける
イギリスの産業革命時に動力源として蒸気機関が登場した時も、「仕事が奪われる」と反対運動が起こりました。短期的にはコスト最適化で非効率な仕事は置き換えられてしまいましたが、長期的には鉄道が敷かれ、交通網が整備され、グローバルなネットワークができたことで、生産性が上がって社会が豊かになりました。AIでも同じことが言え、AIによって新しい仕事は山ほど生まれるので悲観することはないと思います。
次回は、「AIがEC運営にどのような影響を与えるのか」などについて解説します!
※記事初出時の栗林氏の役職名に誤りがあったため、修正致しました(2023/05/29 9時13分)