銀行、保険会社、メタプラなどが投資する日本円ステーブルコイン「JPYC」、小売・EC事業者がチェックしておくべきポイントとは

銀行、保険会社系ファンド、メタプラネットなどが出資する日本円ステーブルコイン「JPYC」は、実店舗やEC決済、企業間送金、国際送金などへの活用拡大を打ち出している。

鳥栖 剛[執筆]

9:30

日本円ステーブルコイン「JPYC」を発行・運営するJPYCは4月20日、シリーズBラウンドのセカンドクローズで28億円を追加調達すると発表した。1stクローズと合わせたシリーズBラウンドの累計調達額は約46億円となる見込み。引受先には北洋銀行、横浜キャピタル、住友生命系のSUMISEI INNOVATION FUND、メタプラネットなどが名を連ねており、日本円建てステーブルコインの社会実装に向けた期待が高まっているようだ。

銀行、保険会社、メタプラなどが投資する日本円ステーブルコイン「JPYC」、小売・EC事業者がチェックしておくべきポイントとは
累計調達額は約46億円となる見込み

「JPYC」は、暗号資産の一種で日本円と1対1で交換可能な日本円ステーブルコイン。JPYCによると、裏付け資産は日本円の預貯金と国債で保全している。2025年10月の発行開始以降、クレジットカード払い、Web3ウォレットでの決済利用に加え、2026年には実店舗決済スキームの実現に向けた複数のプロジェクトも動き始めているという。

小売・EC事業者が注目すべきなのは、「JPYC」が暗号資産の一種としてではなく、決済・送金インフラとしてユースケースを広げようとしている点だ。JPYCは今回の調達資金の使途として、システム・アプリケーション開発、人材採用、ステーブルコインの発行・償還や決済関連事業、戦略投資の4分野をあげている。特に、消費者向け決済だけでなく、企業間(BtoB)送金や将来的なデジタル給与払いを見据えた法人向け基盤の拡充を進める方針を示した。

実店舗・EC決済、BtoB送金などの領域で活用拡大へ

JPYCは、国産のWeb3ウォレットアプリ「Hashport Wallet」を活用した実店舗での決済導入拡大に加え、ECサイトでの決済も実現していると説明。直近の関連した動きではWeb3・DAO領域で事業を展開するガイアックスが、「JPYC」を活用したEC・フリマ向け決済インフラの受託開発を開始している。

また、JPYCは消費者向け決済だけでなく、企業間送金や決済基盤の拡充も資金使途に明示。国外では、エルサルバドルの実店舗でクロスボーダー決済が確認されているとし、為替や国境の壁を越えた価値移転手段として機能し始めているという。

AIエージェント時代の決済基盤も視野に

今回の発表でJPYCが強く打ち出したのが、AIエージェント同士が自律的に価値を送受信する「M2M(Machine to Machine)決済」への対応だ。JPYCは、AIエージェントが自律的に価値の送受信を行う環境を見据え、シームレスな開発環境への投資を進めるとしている。

拡張するJPYC経済圏、AIエージェントなどの最新技術との連携を進めつつ、実店舗やECでの決済、企業間送金・決済、国際送金など、多種多様な方面でのユースケース拡大の可能性が期待されている。

累計発行額は21億円超、利用アドレスは13.7万を突破

JPYCによると、「JPYC」の累計発行額は21億円(2026年4月15日時点)を突破し、直近3か月で約2.6倍のペースで成長。発行残高(時価総額)に対する取引量も多く、日次での資産回転率が流通額の100%を超える日もあるという。「預金として眠るお金」ではなく、決済・送金・交換のために「常に動き続けるお金」として、実需に基づく利用が広がっているとする。

銀行、保険会社、メタプラなどが投資する日本円ステーブルコイン「JPYC」、小売・EC事業者がチェックしておくべきポイントとは
JPYCの累計発行額は21億円を突破

直接のアカウント開設数は1万7000件だが、実際に「JPYC」を保有したことがあるウォレットアドレス数はその約8倍の13万7000アドレスを突破したという。これは、「JPYC」でアカウント開設をしていないユーザー間でも流通していることを示している。銀行口座を持たずともデジタル通貨を利用できるという、ブロックチェーンならではの「摩擦のない金融体験」が受け入れられつつあるようだ。

銀行、保険会社、メタプラなどが投資する日本円ステーブルコイン「JPYC」、小売・EC事業者がチェックしておくべきポイントとは
JPYCを保有したことがあるウォレットアドレス数は13万7000アドレスに

複数ブロックチェーン対応で「経済圏」をまたぐ共通通貨をめざす

JPYCは現在、Avalanche、Ethereum、Polygonの3つのブロックチェーンに対応。今後はKaia、Arcへの追加も検討しているという。

各チェーンは単なる技術基盤ではなく、それぞれ異なる特長を持つ「経済圏」と位置付けられている。EthereumはDeFi(分散型金融)や大口決済、PolygonはNFTやゲームなどのエンタメ利用、Avalancheは高速処理を生かした即時決済向けといった具合だ。

JPYCは、こうした特性の異なるデジタル経済圏をつなぐ「共通通貨」としての地位確立をめざしており、今後も対応チェーンを拡大しながらユースケースを広げていく考えだ。

ソニー銀行、LINE NEXT、日本免税との連携も

JPYCは、広く社会で使われる「新しい円」として、各業界の大手プレイヤーとの提携も進めている。

ソニー銀行とは、サービス連携に向けたMOU(基本合意書)を締結。伝統的な金融機関との連携により、日本円ステーブルコインの社会的信頼やユースケースの拡大につなげる狙いがある。

また、LINE NEXTの「Unifi」にも正式採用された。数億人規模のユーザー基盤を持つLINEエコシステムの次世代Web3ウォレットでJPYCが採用されることで、マスアダプションに向けた大きなチャネルを獲得した形だ。

さらに、2026年の「免税リファンド新制度」を見据え、日本免税と共同でJPYCを活用した次世代インバウンド決済網の構築も進めている。インバウンド市場における免税還付や決済の課題解決につながる可能性がある。

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