EC売上250億円規模のアルペンが語るOMOの裏側 ―ECシステム刷新、メディアコマース転換、評価制度

「増改築を重ねた老舗旅館」のようだったECシステムを刷新したアルペンが、リプレイスの裏側とその戦略を語る

小林 義法

8:00

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顧客がチャネルを意識することなく、店舗でもWebでも一貫した購買体験を提供する――。これがOMO(Online Merges with Offline)がめざすところだ。このOMOを本格的に実践している企業の1つが、スポーツ関連用品の小売を手がけるアルペンである。

アルペンEC事業部部長の照井敦氏と、同社のECプラットフォームを支えるW2(ダブルツー)の鴨下文哉氏による対談から、アルペンがOMO実現を果たした背景を掘り下げていく。

W2 S&M本部 執行役員 鴨下文哉氏とアルペン EC事業部 部長 照井 敦氏

EC売上が6年で250億円、急成長がもたらしたシステム面の課題

アルペンは「スポーツデポ」「ゴルフ5」「アルペンアウトドアーズ」など、全国に約400店舗を展開し、実店舗とECを融合させたOMO推進企業だ。会員数は約1500万人、ECの年間売上は約250億円規模に達している。

アルペングループは3領域で全国に店舗を展開。東京、名古屋、福岡に旗艦店を持つ
アルペングループは3領域で全国に店舗を展開。東京、名古屋、福岡に旗艦店を持つ

アルペンは2017年4月、自社ECサイト「アルペングループオンラインストア」を開設した。立ち上げから短期間で急成長し、社内からの「あれもやりたい」「これも実現したい」といった多様な要望に応え、改修や機能追加を進めてきた結果、システムは次第に複雑化し、改修スピードも低下していった。売上拡大には確かな成果を出した一方で、構造的な負荷が大きくなっていった。

アルペンのECシステムは、まるで築百年の老舗旅館のように増改築を重ね、構造が複雑化してしまった。わずかな変更にも全体の調整が必要なため、部分的な改修が困難になり、運用の柔軟性がなくなっていた。この複雑化は成長の過程で生まれたものであり、売上拡大の成果でもある。とはいえ、さらなる成長をめざすには、一度リセットして基盤を再構築する時期だと判断した。(照井氏)

アルペン EC事業部 部長 照井 敦氏
アルペン EC事業部 部長 照井 敦氏

アルペンがベンダーに求めたものとは

旧ECシステムの複雑化と改修スピード低下を解決するため、2025年6月にW2の開発でECサイトをリプレイスした。リプレイスにあたって、アルペンがECプラットフォームに求めたのはOMOへの対応力だった

会員基盤や物流基盤との連携だけでなく、全国の店舗との連携が重要だ。店舗のPOSレジなど、ECとはやや縁遠いシステムとのデータ連携は非常に複雑で、これまで試行錯誤を重ねながら最適化を進めてきた。この領域をどう設計するかはOMOを推進するうえで極めて重要な課題だった。

我々の規模感で一番合うのはどういった形なのか、カスタマイズに強いパッケージに絞ってから検討した。色々調べたが、今の我々のステージにはW2さんのパッケージ力と開発力がマッチした。(照井氏)

そして、もう1つ重視したのが展開力だ。必要に応じた柔軟なカスタマイズと、それを高い精度とスピードで実装できる開発力が不可欠だった。そのためパートナーとなるベンダーは、社内にエンジニアを抱え、迅速かつ的確に対応できることを期待した。

店舗との連携においては情報共有だけでなく、スタッフを巻き込んだオペレーション全体の見直しが不可欠で、システムには高い拡張性と柔軟性が求められる。これらが担保されなければ、現場との連動は難しい。アルペンは設計段階からその点を十分に考慮して明確な構想を持っていた。ベンダーであるW2は、アルペンの意図を正確にシステムへ落とし込むことができた。(鴨下氏)

W2 S&M本部 執行役員 鴨下文哉氏
W2 S&M本部 執行役員 鴨下文哉氏

アルペンが選んだW2とは

アルペンは自社の状況と業務プロセスと顧客接点設計の観点、そして何より未来を見据えてベンダーを選定した。最終的にパートナーとしたのは、パッケージの高い完成度と柔軟かつ優れた開発力を兼ね備えるW2だった

W2は、W2 UnifiedやW2 RepeatをはじめとするECプラットフォームを中核事業とするベンダーである。BtoCおよびBtoB領域のECサイト構築およびDX支援を主に行っており、近年は企業の海外展開サポートにも注力している。

特に同社が注力するのは、ECの進化を促すソリューションの提供である。具体的には、アルペンが実現したようにコマースをメディア化する仕組みや、生成AIを活用したトップラインの向上、および業務効率化を目的としたプラグインを多岐にわたり提供している。

「安さ」からの脱却をめざしメディアコマースへ

近年、ECサイトを単なる販売の場として位置付けるのではなく、商品とコンテンツを結び付け「メディア」として機能させることの重要性が高まっている。従来のECサイトは商品の情報や価格を提示することに重点が置かれていた。しかし、顧客は購入前に「自分にとって最適な商品は何か」を知るためのコンテンツを必要としている。商品のスペックだけでなく、商品の背景にある企業のコンセプトや実際の使い方といった“体験に近い情報”が求められているのだ。

アルペンもまた、売り場としてのECからメディアコマースにかじを切った。アルペン全体の売り上げは依然として多くを実店舗が占めている。そのためセール情報の発信による集客は重要で、会員への発信内容も店舗への送客を主な目的としていた。しかし、値引きやセールだけに頼るビジネスモデルでは、顧客との関係を深化させることができず、ブランドとしての価値が希薄になってしまうと考えていた。

アルペンではこの課題を踏まえて安さからの脱却を図り、顧客が自ら情報を求め、能動的に商品を見つけ出す仕組みを作りたいと考えた。めざしたのは顧客が「信頼できる情報源」として「Alpen Online」を訪れるような状況だ。そのためには、単に商品を紹介するだけでなく、顧客の関心やライフスタイルに寄り添う有益な情報を的確に、かつ継続的に発信する必要がある。

スポーツ分野においては、本格的に競技に取り組むユーザーほど、品質の高いプロパー商品を求める傾向が強い。こうした層に対してどのような情報を提供すべきか、そのニーズに応える記事やコンテンツを制作することが、今後のECの成否を左右するとアルペンは考えた。

課題は「役立つコンテンツをどう作るか」。アルペンでは専門ライターが店舗のスタッフや各分野のアドバイザーに取材して記事を書き上げたり、店舗もECも含めた社内のナレッジを独自編集して記事化したりするやり方を選択した。現場の言葉を記事化することで、店舗のリアルな声を反映したコンテンツを継続的に発信することをめざした。(照井氏)

現在は外部メディアと連携し、約4000本もの記事を「Alpen Group Magazine」で配信している。以前はメディアとオンラインストアが分離していたが、今回のサイトリプレイスで両者を統合。記事から商品、商品から記事へと自然に回遊できる設計を実現した。

アルペンの「Alpen Group Magazine」
アルペンの「Alpen Group Magazine

店舗とECの関係は、対立から補完関係に

こうして情報発信と購買体験を一体化させるメディアコマースとしての進化を遂げ、顧客との新たな関係構築をめざす一方で、アルペンはOMOを実現するための体制を設計した。具体的には、店舗とECそれぞれの強みを生かし、相互に補完し合うというものだ。

実店舗の接客には、対面による信頼感や人の言葉の力といった、ECでは代替できない価値がある。しかし、実店舗の売場面積には限りがあり、夜間に買い物をしたい顧客には対応できない。ECは実店舗の時間と空間の制約を補完する役割を担うことができる。両者は対立構造ではなく連携構造で捉えるべきだ

しかし、OMOを推進するうえでの大きな課題の1つは、店舗とECが顧客を奪い合う関係に陥りやすいという点だ。顧客をECに誘導すると「売り上げを奪われた」と感じてしまう。こうした対立は多くの企業が直面する構造的な問題であり、完全に解消するのは難しい。しかし重要なのは「会社全体の利益をどう最適化するか」という共通認識を持つことである。

売り上げや利益がどこで発生しても企業として成果であるという理解を全員が共有するのが理想ではある。ただ、現実には各部署のKPIや評価制度が独立しているため、心情的な溝が生じやすい。アルペンではこの問題を解消するため、店舗とECが連携することを前提とした仕組みを構築した。

店舗とECの在庫情報を連携させ、オンライン上で近隣店舗の在庫状況を確認できるようにした。店舗に在庫がない場合にはEC在庫から顧客へ直接配送し、ECでの注文には店舗在庫を用いて対応する。従来は売り上げを計上した側のみが利益を得る仕組みだったため、どちらかが損をする構造になっていた。そこでアルペンは、売り上げは注文発生元に計上しつつ、利益は実際に関わった部署間で按分する制度を導入した

「アルペンオンライン」における店舗在庫確認
「アルペンオンライン」における店舗在庫確認

どちらか一方が「ボランティア」にならない公平な評価体制を実現し、全社的に「全体最適」を重視する文化を根づかせた。そうして「どこで売れてもいい」という共通認識を浸透させることができたのだ。

「変化を止めない」アルペンのOMO戦略と今後の展望

アルペンではEC購入商品の店舗受け取りサービスの導入も準備している。さらに前述のメディアも、顧客が商品への理解を深めたうえでECや店舗に来訪する導線の形成に一役買っている。顧客は記事を通じて商品に共感し、ECで在庫を確認し、必要に応じて実店舗で購入するという流れだ。

デジタルの世界は日進月歩で、今日正しいと思っていることが明日正しくなくなるということもよくあること。お客さまのニーズは変わっていくので我々も変わっていかなければならない。目標を決めてゴールを決めることよりも、市場の変化に食らいついていくことをやめないことが必要

アルペンのパーパスは「スポーツをもっと身近にする」。誰もが健康的な人生を送れるよう、スポーツを生活に取り入れてほしいという思いが根底にある。その実現のために店舗・ECを問わず連携を深め、成長を続けていくことが重要だと考えている。(照井氏)

今後のECは展示場ではなく、お客さまに価値を伝えるためのメディアコマースを実現することが重要になってくる。またこの先、AIをどう活用していくかもやはり重要。アルペンさんと一緒にメディアコマースの最大化に取り組んでいきたい。(鴨下氏)

W2 S&M本部 執行役員 鴨下文哉氏とアルペン EC事業部 部長 照井 敦氏
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