グローバルに展開するECモール「Temu(テム)」が日本市場での活動を加速させている。2025年1月から日本国内の事業者向けに招待制で出店申込受付を開始、5月からは招待なしでも出店ができるようにした。12月にはShopifyとの連携を強化し、ECプラットフォーム「Shopify」の利用企業が自社のアカウントから「Temu」上で商品を出品・管理できる新アプリの提供を始めた。「Temu」のビジネスモデルや事業成長の変遷、日本国内向けの出店を後押しする施策などをまとめた。
日本では2023年から事業を展開
手頃な価格商品の販売、「低い参入障壁」と独自の「製造業者と消費者を直接つなぐモデル」をコア戦略に事業を拡大してきた「Temu」。2022年9月に米国でサービスを開始し、日本では2023年7月からサービスを開始した。グローバル全体では90以上の国と地域で事業を展開。決済方法はグローバルで100種類以上を展開、物流面では300社以上と連携している。
2024年8月からは、プラットフォーム上の商品ラインナップを充実させ、消費者により多くの現地ブランドの選択肢を提供するため、「Temu」は国内発送の出店者ニーズにも順次対応し始めている。現在は最短で注文から2営業日で商品が届く。
イプソスが国内20~69歳の男女を対象に実施した調査(2025年8月に公表)によると、約3割の「Temu」ユーザーが「他のECサイトよりも常に利用している」または「よく利用している」と回答している。
2024年5月のニールセンの調査データでは、「Temu」は日本のECプラットフォームの利用者ランキングで4位を獲得。3106万人に利用されている(2024年5月時点)。
2025年のAppleストアの「日本のトップアプリランキング」では無料ダウンロードアプリで8位を獲得。2024年は2位だったが、「トップ10にランクインした唯一のECプラットフォーム」として、日本国内において依然として高い注目度と影響力を維持している。
「Temu」はEコマースプラットフォームであり、いわゆるECモールとして事業を展開している。取り扱いジャンルは約600種類にのぼり、アパレル以外にも日用品なども広く扱っているほか、米国向けサイトではショベルカーなど工事現場で使用されるような商品も販売している。
「Temu」は、顧客を世界クラスの製造業者と直接つなぐことで、不要な関連コストを排除し、製品の品質を損なうことなく、より高いコストパフォーマンスを消費者に提供することをめざしている。また、出店者にとっては、「Temu」が消費者とのつなぎ役になることで、より迅速にフィードバックを得ることが可能となり、経営計画や商品開発に役立てることができる。(「Temu」担当者)
Temuの価格の秘密:消費者とメーカーを直接つなぐ仕組みとスケールメリット
商品価格が安価であることが度々注目される「Temu」だが、手頃な価格を実現できている理由は、消費者とメーカーを直接つなぐ仕組みとスケールメリットのためという。
「Temu」は、出店者をグローバル規模の製造業者と直接つなぐため、不要な関連コストを排除し、無駄な生産が削減される。このモデルはサプライチェーンの効率化だけでなく、消費者の需要にも迅速に応えることができる。
さらに、「Temu」を通じた大量の注文によりスケールメリットが得られるため、より有利な配送費と配送条件が実現され、結果的に出店者の運営コストが削減される。こうして削減されたコストは、消費者に還元され、より手頃な価格で品質の良い商品を提供することを可能にすると同時に、出店者が商品開発や改善により多くの資源を投入できる環境を生み出し、好循環を形成している。
「Temu」のPR責任者は「『Temu』は、消費者が自身の夢や理想とするライフスタイルを実現するにあたって、より現実的で実行可能な選択肢を提供している」と説明。「手頃な価格で品質に信頼のおける商品を提供することで、人々の生活の質を高め、消費者と出店者のそれぞれの夢を実現できるよう支援していきたい」(同)としている。
日本企業の出店“後押し”する施策
「国内販売事業者の募集プログラム」を推進
「Temu」は「国内販売事業者の募集プログラム」の取り組みを進めている。日本では2025年1月から「国内販売事業者の募集プログラム」を開始。グローバルではすでに35か国ほどで展開している。
日本では多くの中小企業は製品力に強みを持っている一方で、「商品をどのようにプロモーションするか」「ECサイトで販売する際はどのような準備が必要か」といったことに苦戦している会社が多く見られる。
「Temu」は1対1の運営サポートを提供し、出店企業が効率的にショップ運営できる環境を整えている。(「Temu」PR担当者)
「Temu」のサポートで、複雑な運営スキルや各種の費用を要らず、魅力ある商品であれば、より多くの露出や販売のチャンスを得ることができるということだ。
特定のプロモーションへの依存を軽減し、予算や力を品質改善や新商品開発に集中させることで、出店者はより主体的に自社の経営リズムを築くことが可能になる。(「Temu」PR担当者)
2025年12月時点で、日本では電動自転車ブランド「ERWAY」や食品ブランド「全国産直お取寄せ TOKKA」などの企業が「Temu」に出店。
「国内販売事業者の募集プログラム」は当初、日本では招待制で運営されたが、2025年5月より全面開放された。現在では「国内販売事業者の募集プログラム」には、インテリア、食品、家電など幅広いジャンルの日本企業が出店しているという。
Shopifyとの連携強化
なお、「Temu」は2025年12月にShopifyとの連携を強化。自社の「Shopify」アカウントから直接「Temu」上で商品を出品・管理できる新アプリを公開した。これにより、「Shopify」 の利用者は「Temu」出店のために個別のインフラを構築する必要がなく、「Temu」の顧客基盤にアプローチできるようになった。
アプリは「Shopify App Store」で公開しており、企業はこのアプリを通じて「Temu」の「国内販売事業者の募集プログラム」に参加することができる。日本、米国、カナダ、英国、ドイツ、スペイン、オーストラリアなど「国内販売事業者の募集プログラム」が開設されている30以上の国・地域で利用可能だ。
国内企業の出店事例:ハンドメイド素材ブランド「tryangle」
「Temu」の出店事例として、(トライアングル)の事例を紹介する。
tryangleは「LIFE STYLEをデザインする」というミッションを掲げ、ハンドメイドのクリエイター同士が学び合い、交流できるソーシャルアプリ「croccha」(クロッチャ)を運営する企業。「ハンドメイドを教え合う」ことを理念に、ITの力を活用してハンドメイドをもっと身近にして、誰でも「作りたい」を実現できる世界を創造している。
tryangleが運営する手芸材料のオンラインストア「croccha shop」は「作家のためのレジン」を中心にアクセサリーパーツや花材などのハンドメイド材料を販売している。2025年8月に「Temu」に出店し、レジン小物やモールドなどの販売を開始した。
販売開始からわずか1か月で販売件数は想定を超える800件に達し、Z世代を中心とする新規顧客のリピート購入も増加しているという。tryangle代表の藤原真吾氏は「『Temu』の集客力がすごい。より若い消費者層へのリーチを実感している」と話している。これまで手芸市場の主軸だった子育て世代やシニア層の“両極端”構造に、Z世代という新たな軸が加わりつつあるようだ。
現在、「Temu」は世界90以上の市場で展開中だ。藤原氏は「国が違ってもプラットフォーム構造は似ている。今のうちに使いこなせば、海外展開もスムーズに進む」と期待を寄せる。
かつて“ガラパゴス”と呼ばれた手芸業界はいま、Z世代の感性と藤原氏のようなテクノロジーを取り入れたビジネスマンによって新たな進化のステージに立っている。