ミストで飲むスプレー型のサプリメント「IN MIST(インミスト)」を展開するゼロワンブースターは2025年12月、一般社団法人日本サブスクリプションビジネス振興会が発表した「日本サブスクリプションビジネス大賞2025」の「日本ネット経済新聞賞」を受賞した。新しい剤形とサブスクモデルで評価を集めるゼロワンブースターは、サンプリング施策などオフラインの取り組みを強化し成果を上げている。成果につながっている戦略などを取材した。
サントリー社内ベンチャー発・ミストで飲むサプリ
「IN MIST」は、スプレータイプのサプリメント。ワンプッシュでミスト状のサプリメントを口内に噴霧し、水なしで栄養素を摂取するという新しいスタイルを提案している。
「IN MIST」は、サントリー社内のベンチャー制度を活用して立ち上がった事業だ。ゼロワンブースターは起業家・社内起業家の事業化支援を主事業としており、サントリーホールディングスの社内ベンチャー制度の運営も支援。事業プランに採択された起案者がサントリーからゼロワンブースターへ出向、独自に商品開発や実証実験に取り組み、商品を販売している。
「IN MIST」は約5年間の開発期間を経て商品化し、2023年4月に応援購入プラットフォーム「Makuake(マクアケ)」で先行販売を開始した。
ゼロワンブースター IN MIST事業代表の長田知也氏は「栄養素とおいしさを両立するサプリメント配合技術を独自に開発している点が大きな特長だ」と話す。液体ミストのため、吸収されやすく、新技術を活用したビタミンを守る独自のアルミ2重構造「フレッシュキープボトル」を採用、開封後の衛生面・品質面を保てる設計とし、日常的に持ち歩いて使う前提のプロダクトに仕上げている。
2025年11月時点で、商品は2種類を展開している。
・ClearWhite Lemon(クリアホワイトレモン)
ワンプッシュで、厚生労働省が推奨する一日分のビタミンC・ビタミンB群を摂取できる設計。美容感度の高い女性や、美容を意識するユーザーの利用が多いという。
・Vitamin Maintenance(ビタミンメンテナンス)
7種類のビタミンを配合したマルチビタミンタイプ。ジューシーでおいしく飲める味わいが特長で、主に「栄養バランス・食生活が気になる」ユーザーに支持されている。男性ユーザーや高齢ユーザー、「いろいろな栄養素をまとめて取りたい」というユーザーは、「ビタミンメンテナンス」を選ぶ傾向が強いという。
一般的な錠剤サプリの課題解決から開発
サプリメントは錠剤・カプセルが一般的だが、ユーザーのなかには「飲むのが面倒で習慣化できない」「錠剤・カプセルを飲み込むのが大変」「水がないと飲めないため、外出時や旅行中に飲みにくい」「味がないので『義務感』で飲んでいる感覚が強い」といった課題があったと長田氏は話す。長田氏が在籍しているサントリーグループにはサプリメント事業を手がけるサントリーウェルネスもあり、こうしたユーザーの課題は以前から把握していたという。
「ユーザーのペインに対して、まったく新しいソリューションを提供できないか」と考えた結果、スプレータイプのサプリメントという発想に行き着いた。ワンプッシュ・1秒で、水なしで、どこでも手軽にビタミン補給ができる。このコンセプトが「IN MIST」誕生の背景にある。
私自身、もともと理系の生物専攻出身で栄養に詳しく、サントリー入社後は飲料部門に所属していました。もともとサプリを飲んでいましたが、「錠剤は飲みにくい」「もっとこまめに取りたい」という実感もあり、「飲料発想の飲みやすいサプリ」としてミストタイプのサプリに可能性を見いだしました。(ゼロワンブースター IN MIST事業代表 長田知也氏)
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ゼロワンブースター IN MIST事業代表 長田知也氏
メインターゲットは美容感度の高い30~40代女性
「IN MIST」は幅広いユーザーに利用されているが、最も多いのは30~40代女性。比較的美容への関心が高い層で、「クリアホワイトレモン」を選ぶユーザーが多いという。「ビタミンは一度に大量に摂取しても排出されてしまうので、こまめに取ることが大切」という知識を持つ美容感度の高いユーザーにとって、こまめに取りやすい形であり、仕事中や外出時にも使いやすい点が支持されている。
一方で、実際に販売してみると、想定していた美容志向の女性だけでなく、高齢ユーザーや「錠剤が苦手」「旅行に便利だから」という理由で購入するユーザー、男性ユーザーなど、想定以上に多様な層に広がっているという。
売上構成トップは「Amazon」。オフラインも展開
販売チャネルはオンライン・オフライン共に展開しているが、売上比率はオンラインが大半を占める。オンラインでは、「楽天市場」「Amazon」「Qoo10」「TikTok Shop」などのECモールを中心に販売。オフラインではハンズ、ロフト、蔦屋家電や個人経営の小規模サロン、美容外科医が運営する美容クリニックなどにも卸している。
売上構成としては「Amazon」が最も高く、「楽天市場」が続く。サプリメントという商材はモールとの相性が良く、「サプリを買いにくる」ユーザーが多い場であることから目に留まりやすく、購入単価も上がりやすいという。
「IN MIST」は見た目と体験がわかりやすく、動画映えするという強みがある。スプレーでミストを口に吹きかけるという体験が視覚的に伝わりやすい、商品としての新しさ、パッケージデザインの良さがSNSと相性が良いといった理由から、動画コンテンツを活用しやすい「TikTok Shop」にも出店している。定期的にライブ配信も行い、出演ライバーのファンが毎回ライブを視聴し、購入につながるケースも増えているという。
「体験」を軸にした認知拡大を重視
ゼロワンブースターが商品認知において重視しているのは、「どれだけ多くの人に実際に飲んでもらえるか」という体験の数である。「メディア露出」「オフラインイベントへの出展」「サンプリング施策」「インフルエンサーへのギフティング」などを通じて、まずは「飲んでもらう」ことに注力しているという。
「『ミストでサプリを取る』と言われてもピンとこない」「味がわからないと不安」というユーザーも多く、オンラインだけで完結させるにはハードルが高い商材だと長田氏は見る。そのため、クチコミやSNS投稿を生み出すリアルな体験接点を増やすことを優先し、ウェブ広告による新規獲得にはあえて大きく投資していない。オフラインイベントでは売り上げへの直接的な寄与を定量化しにくい面もあるが、インフルエンサーの投稿やユーザーのクチコミを通じて、着実にファンが増えている手応えがあるという。
喫煙所サイネージメディアを活用し、「IN MIST」体験機会の創出、認知拡大などにつなげる
体験重視の文脈で、ゼロワンブースターが活用し成果をあげたのが、ニューステクノロジーが展開するオフィス喫煙所サイネージメディア「BREAK」である。
「BREAK」は、喫煙所ブランド「THE TOBACCO(ザ・タバコ)」を展開するコソドと共同運営するメディアで、都心を中心とした喫煙所に最大55インチのディスプレイを設置し、音声と映像で情報を伝える。オフィスビルやオフィス街の公衆喫煙所にも設置されており、ビジネスパーソンが主なターゲットだ。設置面数は2026年3月で530面に到達する予定だという。
「THE TOBACCO」では、サイネージとセットで商品のサンプリングなどを行うことができる。実際に商品を体験してもらうことで、効果実感やリアルな声の収集につなげられる点が特長だ。一方、都内大型デベロッパーの施設内など、サンプリングができない場所では、サイネージで商品・サービスの魅力や特長を伝え、ウェブへの誘導導線として活用している。
ニューステクノロジーの調査によると、オフィスビルの喫煙者は可処分所得が高い傾向があり、消臭・口臭ケアなどのセルフケアを行っている人も多い。喫煙者特有の肩身の狭さを感じつつも、セルフケア関連の情報には敏感で、「自分が気持ち良く過ごすため」の消費・自己投資への意識が高い層だという。
ゼロワンブースターは2025年9月1日~12日の期間、「THE TOBACCO」20店舗で「IN MIST」のプロモーションを実施した。実施内容は次の通り。
- スタッフによる対面での商品説明、サンプリング配布
- 商品紹介動画のサイネージ放映
- 喫煙者の興味・関心を引くようなポスター掲出
- 商品体験後アンケートの実施
施策の結果、商品配布数2000個、アンケート回答数1284件、公式LINE友だち追加数804件という成果を上げた。
喫煙者の健康意識と「IN MIST」の相性
アンケート結果からは、喫煙者の96%が「健康を意識している」一方で、約7割が「喫煙でビタミンCが失われることを知らなかった」ことが明らかになった。ポスターでは、喫煙者に向けたメッセージとして「喫煙でビタミンCが失われる」という事実を訴求。プロモーションを通じて、体験とセットで理解促進を図った。
さらに、約9割が何らかの健康行動を実施しており半数以上がサプリメントを摂取していた。また約5割がジム・フィットネスクラブに通っているといった結果も得られ、喫煙者のセルフケア意識の高さが浮き彫りになった。
「IN MIST」の評価ポイントとしては、「持ち運びしやすそう」が最多で「水なしで飲める」点も高評価だった。日常生活に取り入れやすいサプリとして受け止められていることがうかがえる。アンケート回答者の98%が「IN MISTを継続したい」と回答しており、体験を通じた好意形成に成功したと言えるだろう。
プロモーションでは、公式LINEへの友だち追加またはアンケート回答と引き換えに商品配布を行った。その結果、LINE登録数は前月比34倍に増加し、プロモーション時の初週EC売上は、前月1週目比で「楽天市場」は4.2倍、「Amazon」では5.3倍、サイトPV数は最大11倍となった。またプロモーション終了後も、CVは平均2.5倍を5週間継続し、大きなインパクトをもたらした。
喫煙者はビタミン不足のリスクがあることを以前から認識していたことに加え、吸うという行為とミストを口に吹きかける行為の類似性、口寂しさの解消とのシナジーも感じました。「BREAK」の取り組みは、美容女子をメインターゲットとしつつも、喫煙者という新たなセグメントの深掘りにつながった施策となりました。(長田氏)
モールの定期便機能で定期購入するユーザーも多く
「IN MIST」は単品販売に加え、定期通販も展開しており、これが「日本サブスクリプションビジネス大賞2025」での受賞にもつながった。定期通販導入の背景について、長田氏は次のように説明する。
企業側にとっては、定期的な売り上げが立つというメリットがあります。一方でサプリメントは「継続してもらうことで初めて効果・体感が得られる」商材のため、定期購入によってお客さまは毎月購入する手間が省けるし、私たちも継続してサポートできる。「ビジネスとしての安定性」と「ユーザーの継続・体感のサポート」を両立する仕組みとして、定期通販を位置付けています。(長田氏)
定期通販の利用は、自社ECサイトよりもモールの定期便機能を通じて定期購入するユーザーが多いという。
リピート促進施策としては、SNSでの情報発信、LINE・メルマガ配信、「TikTok Shop」での定期ライブ配信などを実施。ライブ配信では、出演ライバーのファンが毎回視聴・購入するケースも多く、コミュニティ的な関係性がリピートを支えている。
今後の展望は「ラインアップ拡充」「海外展開」
今後の展望としては、ミストタイプでどこでも水なしでビタミン補給ができるという強みを生かし、ビタミン以外の成分も含めた商品ラインアップを増やしていきたい考えだ。また海外展開も検討しているという。
海外向けイベントに出展した際、特にアジア圏のユーザーから高い関心が寄せられました。ジャパニーズブランドであること、見たことのない剤形、味がおいしいといった点が評価されており、今後は海外展開も視野に入れていく方針です。まずは国内でのラインアップ拡充と、オフラインの接点・販路拡大によるファン作りを進めていきます。(長田氏)
