コクヨは5月1日付で、本社を90年ぶりに移転した。JR大阪駅直結で、世界最大級規模の都市公園を擁する複合施設「グラングリーン大阪」に新本社「KOKUYO HQ(コクヨ エイチキュー)」を開設し、6月16日にライブオフィスとしてグランドオープンする。社員だけでなく、法人顧客やパートナー企業にも開かれた“公開実験場”として運用し、オフィス空間や働き方の提案、企業間交流の創出につなげる。

コクヨが提唱するライブオフィスとは、社員が実際に働くオフィスを顧客に開放し、リアルなワークスタイルを体感できる見学型オフィスのこと。
東京オフィスで培った知見を大阪の新本社へ展開
コクヨはこれまで、オフィスという「場」と、そこで生まれる「体験」のデザインを通じて、新たなワークスタイルを提案してきた。2021年に自社ビルを大規模リノベーションした東京・品川オフィス「THE CAMPUS」では、「街に開く」をコンセプトに、社会と企業が有機的に交わる場や体験を意図的に設計。その結果、多様でユニークな協働が自律的に生まれ、5年間で東京・品川オフィスに在籍する社員のエンゲージメントスコアも11ポイント上昇したという。
こうした「THE CAMPUS」で培った経験と実績をもとに、新本社「KOKUYO HQ」を構築した。同拠点のコンセプトは「未知を拓く」。グローバル成長を加速するための経営基盤の改革と、関西経済圏への貢献をめざすとしている。
所在地は大阪市北区大深町5番54号 グラングリーン大阪 パークタワー14階。床面積は1260.25坪。ライブオフィスの見学は予約制。
狙いは「経営基盤の改革」と「関西経済圏への貢献」
本社移転の狙いの1つは、経営基盤の改革だ。コクヨは2030年に売上高5000億円の実現に向け、第4次中期経営計画で経営基盤の強化を掲げている。不確実性の高い社会情勢のなかで成長を加速するには、内部統制の強化とグローバル水準でのコーポレート機能の強化が重要課題だという。
一方、旧本社ではコーポレート部門が機能ごとに複数フロアへ分散し、事業部門とも別拠点に在籍していたため、物理的にも心理的にも分断が生じていた。今回の移転では、コーポレート機能と事業部門を同じ拠点・ワンフロアに集約。自然な交流が生まれる場の設計に加え、交流を意図的に促す体験づくりによって、部門を越えたつながりや風通しの良さを促し、事業成長を支える経営基盤へとアップデートする。
もう1つの狙いは、関西経済圏への貢献だ。コクヨは1905年に大阪で和式帳簿の表紙製造から創業し、120年余りをかけて「働く・学ぶ・暮らす」を提案する企業へと事業を拡大してきた。再開発が進み、多くの企業が集う地を拠点に、オフィス空間の提案や交流イベントの企画を通じて、多様な企業とともに社会課題の解決に向けたイノベーション創出を図る考えだ。
コンセプトは「発見の散歩道」。4つのエリアで多様な体験を設計
空間デザインのパートナーには、米国のインテリア設計事務所「Studio O+A」を迎えた。日本のオフィスにおける働き方提案のノウハウを持つコクヨと、グローバル企業のオフィスデザインやコンサルティングを手がけ、ストーリーテリングとデザイン力に強みを持つStudio O+Aの知見を掛け合わせ、デザインコンセプト「Promenade of Discovery(発見の散歩道)」を策定した。活気あるエリア、静かな思考空間、自然を感じるゾーンなど、オフィスにおける多様な体験を促すエリアを、街を散策するような感覚で巡ることができるという。
主なエリアは「Gateway」「Parkside」「Treehouse」「Marketplace」の4つで構成する。
「Gateway」
来訪者を迎える「Gateway」では、単なる受付ではなく、「人と企業の新しい関係性を築く場所」と位置付ける。応接エリアへの導線には、コクヨの「今」を感じられるギャラリーや、120年間の好奇心の軌跡をたどる展示を設置する。

「Parkside」
社員の多様なライフスタイルに寄り添い、心身の健康を維持しながら持続的なパフォーマンスを発揮できるよう設計したエリアだ。社内会議だけでなく、家族や友人など仕事以外の関係者とも過ごせる「Wellness room」や、社内外の交流・学びの場として活用できる大型イベントエリア「Townhall」を備える。

「Treehouse」
ライブオフィス環境から離れ、静かで落ち着いた環境でインプットや思考に没頭できる、オフィス内のリトリートスペース。電話やWeb会議、会話による共同作業も禁止し、意図的にオフィスの喧騒から距離を置くことで、集中やリラックスを促す。

「Marketplace」
多様な体験の中心地となる広大な社内カフェで、ソロワークや会議、150インチの大型スクリーンを使った約100人規模のイベントも実施できる多目的エリア。鉄板も備え、お好み焼きなど「食」を通じた交流も促す。

社内外のつながりづくりと、AI活用による働き方の進化も検証
つながりを促す取り組みとして、本社移転後の3か月間を強化期間とし、社内BARやファミリーイベントを計画している。その後も、社員個人が自律的に企画するイベントやコミュニティを後押しする。また、近隣企業や地域を巻き込んだ催しをグラングリーン大阪と共同で2026年10月に実施する予定だ。
さらに、AIで次世代の働き方を支える「オフィスOS」の社内検証も進める。「オフィスOS」は、コクヨとTIGEREYEが共同開発中で、共同特許を出願中の技術「OFFICE AGENTIC AI」を核とするAIエージェント。会議室予約や貸出備品の管理など、これまで細分化されていたオフィス・事業運用に関わるシステムを統合し、オフィスでの困りごとをワンストップで解決することをめざす。個人の行動パターンの学習を通じて、社員が利用するほど利便性が向上する設計で、AIが社員一人ひとりの行動・感情・目的を理解し、働き方そのものを進化させるプラットフォームの構築をめざすとしている。

