サステナブルな消費行動として注目を集めているレンタル・リユース型ビジネス。すでに取り組んで実績を上げている企業も多いが、複雑なオペレーションや鑑定ノウハウといった専門知識の欠如など、参入に二の足を踏む企業は少なくない。しかし今、その障壁はAIと柔軟なECシステムによって劇的に下がりつつある。
市場の拡大背景から、AIが解決する具体的な運用課題、そして「EC-CUBE」を活用して成果を上げている最新事例まで、イーシーキューブの梶原氏が解説する。
注目度急上昇中のレンタル・リユース市場の現状
現在、EC業界においてレンタル・リユースビジネスはまだニッチな分野だが、環境問題や物価高などの観点から、社会的なニーズは高まっている。政府はレンタル、リペア、リユースなどを「循環経済関連ビジネス」と呼び、循環型社会形成に向けて取り組むべき課題の1つとして「2030年までに循環経済関連ビジネスの市場規模を現在の約50兆円から80兆円以上にすることを目指す」という目標を掲げている(参考資料:環境省「第五次循環型社会形成推進基本計画」)。
「循環型社会」とは「天然資源の消費を抑制し、環境への負荷ができる限り低減される社会」と定義されている。大量生産・大量消費・大量廃棄という「リニア型(直線型)」ビジネスが限界に達していることもあり、市場は成長している。
環境への配慮や物価高、住環境の制約から、物を持たない「所有から利用へ」のニーズが高まっている。今後伸びるビジネスモデルである。(梶原氏)
イーシーキューブ マーケティング本部 マーケティング推進課 課長 梶原直樹氏
リユースビジネスの現状と事例
ここからは、リユースビジネス、レンタルビジネスの現状と各分野の事例を紹介する。『リユース経済新聞』の調査によると、2024年のリユース市場規模はおよそ3.3兆円。15年連続で成長している。成長をけん引しているのはスマホ、ブランド品、玩具、アパレルなどである。販路別ではコロナ禍で普及したCtoCの成長が鈍化し、BtoCが伸びている。
リユース市場の成長の背景には、物価高による新品から再利用への消費シフト、環境配慮意識の高まり、そして若者世代における「中古品購入=サステナブルでかっこいい消費」という意識の変化などがあげられる。
リユースビジネス事例① 三越伊勢丹
三越伊勢丹は百貨店として初の常設買取・引取サービス「i’m green(アイムグリーン)」を2021年から運営。高いブランド力が持つ安心感と既存の流通網を活用し、効率的な商品循環を形成している。
リユースビジネス事例② 無印良品
「無印良品」を運営する良品計画は、資源循環プロジェクト「ReMUJI」を中心に、返品商品をメンテナンスして再販する「もったいない市」などを展開。衣料を染め直して一点物として再販するなど、回収コストや採算性をブランドの力で克服し、衣服リユース品の年間販売数が8万8302着(2025年8月期)など、循環型ビジネスで成果を出している。
リユースビジネス事例③ ハードオフ
「ハードオフ」を展開するハードオフコーポレーションもEC参入やデジタル化を進めている。イーベイ・ジャパン運営の越境ECモール「eBay」へリユース通販ショップ「HARD OFF JAPAN」を出店するなど、海外マーケットにも進出した。中古ギターから販売を開始し、オーディオ、カメラなど、取扱商品を順次拡大していく予定。
このように、リユースは単なる環境貢献だけではなく、買取を通じて顧客維持と新規開拓を同時にでき、収益拡大を実現する次世代型ビジネスとして再注目されている。
いまや再販を前提としたビジネス設計が進んできている。商品を売った後もLTV(顧客生涯価値)向上、および返品された商品の中古販売による滞留在庫の削減など、全体的な設計を行う事業者が増えていることがリユース業界の成長を支えている。(梶原氏)
レンタル市場の現状と事例
一方のレンタル市場だが、経産省の調査によると、国内の市場規模は2023年度で1.9兆円。リースを含む総市場規模は5.2兆円。レンタルの方が伸びてきている状況で、建築機材などのBtoB向けレンタル市場は1.7兆円規模から2兆円への成長が見込まれており、こちらも注目の市場だ。(梶原氏)
BtoC市場では顧客接点を長期的に持つレンタル/サブスクリプション事業が好調で、これは「所有から利用」という価値観の転換と、経済的負担を軽減したいというニーズ、サステナビリティや環境配慮への意識の高まりなどが背景にあると考えられる。
レンタルビジネス事例① ヤマダデンキ
ヤマダデンキでは「ヤマダビジネスレンタル」を展開している。テレビ、洗濯機、冷蔵庫などの家電製品の保守サポートを手がけるレンタルサービスで、個人向けだけでなく、住宅展示場や病院、介護施設などでの利用も想定。従来は「買う」対象だった家電に「借りる」という選択肢を提示し、リユース・リサイクルとも連動させている。
レンタルビジネス事例② dinos
総合通販のdinosは新品家具レンタル/サブスクサービス「flect(フレクト)」を展開。従来は家具だけの取り扱いだったが、ロボット掃除機といった家電などもラインアップに追加した。レンタル期間は24か月で、期間終了後は買取か返却を選択する。高額商品のレンタルは購入前の試用を可能にし、購入を促す側面がある。
レンタルビジネス事例③ Laxus
ラクサス・テクノロジーズが運営する「Laxus(ラクサス)」は月額定額でルイ・ヴィトン、シャネルなど高級ブランドバッグを使い放題、交換自由でレンタルできるサービス。ラクサス・テクノロジーズは2024年12月に東京証券取引所グロース市場に新規上場するなど成長している。
このように、商品の「所有」ではなく「利用」に価値を見出した消費者向けのサービスに支持が集まっているレンタルビジネス。単に商品を貸すだけでなく、サブスクリプションなどを通じて顧客接点を継続的に持ち、ブランドロイヤリティを高める仕組みとして機能している。
レンタルビジネスは既存のチャネルや顧客基盤に付加価値を提供し、顧客との接点を維持・循環させることが可能。リユースビジネスと同様、始めるべき価値の高い事業である。(梶原氏)
AIで加速するレンタル・リユースビジネス
一方でレンタル・リユースビジネスには難しい側面もある。大きな障壁が、返品や期間設定など、運用面が通常の販売よりオペレーションが複雑になることだ。たとえば、1点ごとの商品情報登録、鑑定や真贋チェック、時期に応じた価格管理に加え、商品を循環させるための継続的な物流負担、買い取り時や貸し出し時における顧客の信用リスク判断、破損や未返却などがあげられる。
しかし、現在はこれらの課題をAIやテクノロジーを活用して解決し、ビジネスを加速させる時代に入っていると梶原氏は強調する。
AIの価値は、需要予測、真贋判定、価格の最適化といった再販プロセスを根本から効率化し、循環ビジネスの信頼性、スピード、収益性を同時に引き上げることにある。さらに、AIを活用することで商品登録時の負荷軽減、鑑定や検品、顧客の信用チェックといった具体的な運用課題を解決し、参入障壁を解消するという。
実際、画像アップロードによる商品登録や価格提案、AI鑑定・真贋判定、およびAIリバースロジスティクスによる、返品・回収にかかる物流改善などがすでに始まっており、参入を具体的に検討できるフェーズに入ったと言える。
「EC-CUBE」を活用したレンタル・リユース事例
AIの登場により、運用面から見ると誰でも中古ビジネスを始められる時代が到来した。経験値がない新規プレイヤーでも自社リソースを生かしたレンタル・リユースビジネスを容易に展開できる環境が整ったと言える。残る課題は、運用が難しいECサイトをどのようにして構築するかだ。運用が難しいということはECサイトへの落とし込みも難しいのと同じだが、ここで本領を発揮するのが、柔軟・自由にカスタマイズできる「EC-CUBE」。ここからは、イーシーキューブが提供するECサイト構築プラットフォーム「EC-CUBE」を活用し、レンタル・リユース事業で成果を出している企業の事例を紹介する。
リユースビジネス事例④ カードショップ セラ
数十万点の中古カードを扱う「カードショップ セラ」を運営する英宝は、中古カードの膨大な買取業務をシステム化。買い取りと販売をオンラインで完結できるようになり、業務が大幅に効率化した。商品点数が膨大なため、ECサイトでは検索のしやすさにもこだわっている。
リユースビジネス事例⑤ Nico-Nico Guitars
創業27年で2000年からオンラインに参入した渋谷のギターリサイクルショップ「Nico-Nico Guitars」を運営するNico-Nico Guitarsは、高付加価値なギターを1点ずつ詳細な商品ページで丁寧に販売し、越境販売も展開している。写真によるオンライン査定も行っている。
リユースビジネス事例⑥ Groovenut Records
大阪・心斎橋の中古レコード店「Groovenut Records」を運営するデジサポートは、中古レコードという商品の特性上、通常のECサイトでは難しい楽曲試聴機能を「EC-CUBE」で追加した。海外注文にも対応し、グローバルで展開している。
レンタルビジネス事例④ Cariru
トレジャー・ファクトリーは、利用実績25万件を超えるドレスレンタル「Cariru(カリル)」で、レンタル期間、在庫、返却管理といった複雑な運用要素と、高い利便性を両立させている。自動在庫チェック、延長料金の徴収、物流連携によるステータスの自動変更など、多数の複雑な機能を「EC-CUBE」で実現している。
レンタルビジネス事例⑤ アールワイレンタル
旅行の目的、日数、荷物量に応じたスーツケースを選べるスーツケースレンタルサイト「アールワイレンタル」を運営する日本鞄材は、最新の物流設備と「EC-CUBE」を連携させ、年間10万件以上の複雑な取り引きを実現している。
レンタルビジネス事例⑥ パンダスタジオ・レンタル
PANDASTUDIO.TVが運営する、125万点以上の出荷実績を持つネット配信用機材レンタルサイト「パンダスタジオレンタル」では、撮影機器、録音機器、三脚など、異なる機材の一括レンタル時の複雑な在庫・期間チェックが課題だったが、独自の物流システムと「EC-CUBE」を連携させることで課題を解決し、DXを実現している。
AI時代のレンタル・リユースEC構築において、運用効率化、独自のUX、AI連携というすべての要素を叶えられる「EC-CUBE」は最適なソリューション。(梶原氏)
100%業務にフィット、理想を可能にするECカート
イーシーキューブが2006年にリリースした「EC-CUBE」は、純国産のオープンソースパッケージ。カスタマイズが可能なため、業務に100%フィットする理想のECビジネスを構築できるのが特長だ。レンタル・リユース事業は、定額課金、在庫の循環、状態ランク管理など、一般的な物販とは異なる複雑な要件の塊だ。これらを既存のASPカートや小回りの利きにくいECパッケージで無理やり実現しようとすれば、運用が破綻しかねない。だからこそ、ビジネスモデルに合わせて100%フィットさせられる「EC-CUBE」が選ばれている。
梶原氏は「レンタル・リユースサイトの構築やBtoBとBtoCの統合対応など、将来を見据えた複雑なニーズに応えられることこそ『EC-CUBE』の得意分野」と語る。大規模ECの事例が増加しており、大規模顧客向けには、戦略立案からマーケティングまでをワンストップで支援する「EC-CUBE Enterprise」を提供している。
開発面では、パッケージ化された機能からの独自カスタマイズにより効率化を図り、さらに19年以上のノウハウをAIに組み込む「AI駆動」の開発体制を確立。これにより、複雑な要望に確実に応える安心感を提供し、「EC×AI」によるさまざまなビジネスモデルに対応できるという。また、開発後もECビジネスを成長させるグロース支援のサービスを展開し、顧客に継続的な満足を提供する循環型ビジネスモデルを構築している。
レンタル・リユースのEC構築は難しいと考える方もいると思うが、イーシーキューブにお任せいただければ、AIでの運用改善、そしてすべての運用課題を解決したEC構築ができると自信を持って言える。売り切り型モデルの限界を感じているなら、今こそレンタル・リユースという新たな鉱脈を掘り起こすべき。AIとEC-CUBEがあれば、もはや運用は壁ではない。(梶原氏)
次世代の収益柱を構築するために、まずは相談から始めてみてはいかがだろうか。
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