大村 マリ, 995[イラスト] 2022/7/4 8:00

「ネットショップ道場」第4回のテーマはスマホ。「スマートフォンで買いやすいサイトにするにはどうしたらいいのか?」をテーマに、講師の二天紀 山本頼和氏がスマホでのコンバージョンアップの方法を解説しました。ワークショップでは、参加者同士がお互いのECサイトでテスト購入を実施。自社サイトについて新たな気づきを得ることができ、他社サイトから多くのことを学びました。

これからのスマホECのあり方

山本氏山本氏

モバイルファーストの時代で、ECの主戦場はPCからスマホに変わってきている。まだPCの方が売上構成比が高いショップもあるが、今後PCが主流に戻ることはないだろう。だからといって、スマホでECサイトばかりを見てもダメ。一般的にはスマホで一番時間を使っているのはSNSやゲームで、ECサイトを見ている時間は短いはず。

これからECサイトを強化するなら、基本的にはスマホメインで考えていく必要があります。これまでは有名なECサイトや同業者のECサイトをチェックすることが多かったのですが、スマホにおいてはECサイトだけでなく、世間で一番使われているサービス(SNSなど)の導線やページ構成、ボタンの配置などを参考にした方がいいと山本氏は言います。

スマホECサイトのCV最大化で大事な5つのこと

コンバージョン最大化のために大事なことは次の5つです。

  1. 注文完了までの流れを確認する
  2. 利用しているカートの特性を理解する
  3. 各ページでの導線を整える
  4. 離脱の最適化を行う
  5. 再訪問したくなる仕組みを考える

注文完了までの流れをおさらいする

「ECサイトである限り、スマホでもPCでも、注文完了までの流れは当たり前に押さえておくべき」と山本氏は強調。特にスマホではシンプルでわかりやすいことが求められるため、そのページで何を伝えるのか、ページの役割をきちんと明確に定義していくべきと言います。注文完了までにいくつのページがあって、どういうURLコードなのかを把握していれば、消費者が離脱した場所を特定でき、対策に役立ちます。

買い物習慣の変化でカートの特性も変化

2つ目のカートの特性とは、たとえばカートの投入時間や会員のログイン時間、決済ステップの数など。最近はカートに投入した商品をキープする時間、ログインした会員をタイムアウトさせるまでの時間は長くなり、決済のステップ数が短くなっているECサイトが多いと言います。

これらの変化は消費者の買い物習慣(購入の意志決定パターン)が変わってきているため。以前は、商品をカートに入れたらほとんどの人が買うパターンが多かったのですが、最近は「カートに入れる=いったんキープ」に変化しています。

ECサイトとしては買ってくれるかどうかはさておき、とりあえず商品をカートに入れてもらい、そのなかから選んでもらうという流れに変わってきました

各ページの役割を確認し、導線を整理しよう

山本氏山本氏

大事なことはコンバージョン件数(受注件数)を高めること。そのために、今一度、「各ページの役割は何か?」「その役割を担えているか?」を確認する必要がある。特にスマホにおいては、各ページの役割を具体的にした方が良いページになる。

商品ページは、実店舗で言えば商品の販売スタッフ。訪問者数が多い商品ページから手を入れます。大事なのは「何を訴求するか」。価格や品質など商品の価値を伝える訴求ポイントはさまざまですが、何を訴求するかでページの構成が変わってきます。

また「縦スライドで接客するか、横スライドで接客するか」も大切です。以前スマホサイトは縦スクロールが多く、縦にページを作っていましたが、最近は横スライド、横クリックで商品を見せるパターンが増えています。どちらにするかは、お客さまがどんな動きをしているかをヒートマップなどで見て考えます。新規とリピーターのどちらが多いかによって、情報の出し方やページの作り方は変わります。

最後に確認すべきことは、商品ページに「次の導線」があるどうかです。購入を真剣に検討している人ほど商品ページをスクロールして下まで見に行きます。カートボタンを越えてさらに下にスクロールするということは、商品を良いと思ったけど「他にもっとないかな?」と考えている人と想定できます。たとえば、見ている商品の類似商品や関連する特集など、次の導線があるとさらに見てもらえるはずです。

普段、一消費者としてECサイトを見ていると当たり前に行動していることも、運営する側になってみるとなかなか気付かないところもありますね。

「また買いたい」と思わせる決済完了ページとは?

カートのページでは、会員登録やメルマガ登録のメリットの訴求、入力フォームが必要最低限であること、利用頻度が高く使いやすい決済サービスが導入されていることが求められます。

さらに、最後のサンクスページ(決済完了ページ)は消費者を見送る場です。消費者にどんな気持ちで帰ってもらうか、「またここで買いたい」と思ってもらえるような配慮が必要で、ここに次回のお付き合いにつながる情報があると良いと言います。たとえば、スタッフの紹介などがあると印象が良くなるそうです。

途中離脱はされるもの! 離脱の最適化をしよう

山本氏山本氏

「来たお客さんを離脱させたくない」という相談を多く受けるがこれは無理。重要なのは、「なぜ途中で帰るったのか?」という途中離脱の理由を知ることです。「離脱のされ方」がわかると対策が打てます。

まず前提として「途中離脱は悪ではない」ということが重要。ECサイトを運営していると「離脱されたくない」と思ってしまいますが、消費者側でネットショッピングをしていると、途中で見るのをやめて離脱するのはよくあるでしょう。

「離脱」とは、Googleアナリティクスが2ページ以上閲覧したけど「帰った」と判断した数。「帰った」というのはセッションが切れたということです。ユーザーが離脱する理由は基本的に3パターンしかありません。

① 不満離脱

「不明(何言ってるかわからない)」「不足(情報が足りない)」「不備(誤字脱字など)」といった「不」の付く理由で帰る離脱。これが一番もったいないので極力減らしましょう。

② また来る離脱(お客さま都合の離脱)

「サイトも商品も良かったけど、家に帰ってサイズを測らないとわからないからまた来る」というような離脱。これはお客さまの都合であって、もう来ないというわけではないので、きちんと再訪問を促す施策が有効です。

③ いつの間にか離脱

「電車が目的地に着いた」「昼休みが終わった」など、外的要因でスマホ自体を見るのをやめた結果、離脱したもの。こちらにもサイトを思い出してもらうための施策が必要です。

①の「不満離脱」に有効な対策がテスト購入です。良いと思って作っているサイトを第三者に見てもらい、客観的な意見を言ってもらうのが一番ということです。

山本氏山本氏

基本的に自分では良いと思ってページを作っているので、自分のお店の「不」の要素はわからない。でも、客観的に見てもらうと「不」の要素はゼロではない。第三者に見てもらって、声を聞くのは良い対策になる。

迷子になりやすいスマホには「道しるべ」を

訪問回数とコンバージョン率
訪問回数とコンバージョン率の関係

上の図のように、初回訪問、2回目、3回目と、訪問回数が増えると、多くの場合でコンバージョンレートは上がっていきます。初回訪問ですぐに買う人はそれほど多くないため、「どう帰ったか、その後いかにまた来てもらうか」が重要になります。再訪問したくなる仕掛けの1つががわかりやすいサイトであることです。

スマホでは特にサイト全体の中でどこにいるかわかりにくく迷子になりやすい。そのため、たとえば「トップに戻る」ボタンやマイページの所在など、迷子になった時の道標が画面の上や下に表示されていると安心して操作できます

多くのECサイトで3本線の「ハンバーガーメニュー」を採用していますが、「ハンバーガーメニュー」はタップして展開しないとメニューのなかに何があるかわかりません。また、画面の右上か左上にあるため、片手で操作することの多いスマホでは使いにくいと感じたことはないでしょうか。

SNSや大手ECサイトのアプリには、ハンバーガーメニューもありますが、よく使うメニューボタンは下部の「タブバー」に表示しています。タブバーではショップが伝えたいコンテンツをお客さまに表示することができます。商材にもよりますが、再訪問促進施策として特に有効なのが「閲覧履歴」だと言います。

「ハンバーガーメニュー」と「タブバー」

今回の言葉

山本氏山本氏

一番学びが深いのはテスト購入で、リアルな声をもらえて、買いやすさや買いにくさが如実にわかる。決済完了ページや注文確認メールなどもショップによって特徴があるので、それら1つを取ってもどういう工夫がされているかを見ると参考になる。テスト購入を通じて新しい視点から物事を見てみる、そしてサイトを見てもらうことで理解を深めてほしい。

今回はスマホサイトでコンバージョンを上げていくための施策として、すぐにでも実行できることを多く学びました。筆者も自分としてはベストな状態でお客さまにショップを公開しているつもりでしたが、お客さまの立場に立ってみると、不便だったり、操作しづらかったり、わかりづらかったりする部分も見えてきました。今後ますます増えていくスマホユーザー向けに、サイトを改善するための大変良い機会となりました。

◇◇◇

次回は、再びSEOをテーマに、「コアウェブバイタルとページスピードインサイト」について学びます。サイトの表示速度がSEOにどこまで影響するのか、Googleがどういうところを見ているか、PageSpeed Insightsの見方と対応方法について学びます。

つづく
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