カゴ落ち率84%のモバイルECでコンバージョン率を確実に伸ばす4つの方法
商品をモバイル経由でショッピングカートに入れた場合、たった16%しか購入に至りません。ただ、次に解説する4つのステップを踏むことで、小売事業者はモバイル経由のコンバージョンを高めることが可能です。
“mコマース”とも呼ばれるモバイルショッピングの台頭は、小売事業者にとって大変気になる動きです。消費者の行動は常に変化し、買い物にスマートフォンやタブレットを使う人が増えています。
インターネット利用者37億7330万人のうち、34億4800万人がモバイルでインターネットを利用している現実を考えると、当たり前のことかもしれません。
しかしながら、モバイル利用者が大量にECサイトへ流入してきても、期待しているほどのコンバージョン率になっていないのが現実です。モバイル経由でカートに入れられた商品は、たった16%しか購入に至っていないからです(編集部追記:調査結果は「Adobe 2016 Mobile Retail Report」、日本語訳のリリースはこちら)
小売事業者のやり方が間違っているのでしょうか? モバイル利用者の増加を売り上げアップにつなげるにはどうしたら良いのでしょう? mコマースの台頭に伴う、モバイルサイト最適化のための4つの方法を紹介します。
モバイルアプリ機能の拡充
多くの小売事業者が自社のモバイルアプリを運用していますが、使い勝手が悪いアプリが多く、多岐にわたる消費者のニーズを考慮した機能を搭載していません。最新技術が搭載されているように見えるアプリでも、多くの課題を抱えているのです。
その結果、売り上げが想定よりも伸びず、消費者もアプリ利用を止めてしまいます。Adobe社のモバイルリテイルレポートによると、小売事業者が提供するアプリの60%は10回以下しか利用されていないそうです。また、15%の消費者は全くアプリを利用せず、アプリを利用する45%の消費者も、1つ、もしくは2つのアプリしか利用していません。
この厳しい数字の背景には、アプリで買い物する時に消費者が感じるストレスが関係しているようです。たとえば、ほとんどのアプリは画像が小さく、商品やページのズーム機能がありません。アプリによく搭載されているプッシュ通知などの機能も買い物の妨げになり、消費者はさらにカートから遠ざかってしまいます。
同様に、アプリに搭載されている多くの機能は不十分であり、テキストメッセージや電話を受信すると落ちてしまいます。また、購買履歴を見ることができないケースが多く、最初からアプリで注文することが面倒になってしまいます。
モバイルサイトの最適化
多くの小売事業者がまだモバイルサイトの最適化を行っていません。消費者がデスクトップ用のECサイトをモバイル端末で見る際、ストレスに感じるのはそのせいです。
実店舗に行く前に商品をインターネットでチェックする人が87%、店舗内でインターネットネットをチェックする人は79%、店舗を出た後にチェックする人が35%という数字を見ると、モバイルを最適化していなければ大きな機会損失になる可能性があります。
ECサイトがモバイル端末に最適化されていない状況は、週に1回お店を閉店しているようなものです。2018年の第1四半期(1~3月期)には、モバイルのトラフィックがPCを超え、2020年には、イギリスにおいてスマートフォンからの買い物がeコマース全体の2/3を占めると言われている今、モバイル最適化は非常に重要な課題なのです。
87%の消費者が実店舗に行く前に商品をインターネットでチェックし、79%が店舗内で調べます。35%が店舗を出た後にチェックをしています。
モバイルでの買い物体験をポジティブなものにするために、小売事業者が取り入れることができるいくつかの機能があります。
まずは、モバイルのスクリーンサイズに合わせてページレイアウトを自動で変える機能は必須です(編集部追記:Googleが公開した「経営者のためのスマートフォンプレイブック 第2版」はモバイルサイトの運用に役立つコンテンツを掲載しています)。また、入力ミスなどスマートフォン上で頻繁に起こるエラーにも注意を払うべきでしょう。列ごとに記入するフォームをやめて、チェックボックスやドロップダウンを採用すると、消費者のストレスを軽減できます。
選択肢の多い支払い方法
モバイルショッピングが増える中、従来の支払い方法以外の多様な選択肢が求められています。
特に、モバイルで買い物をする消費者の間では、モバイルウォレットやモバイル支払いへの人気高まっています。Apple Pay(アップルペイ)、Android Pay(アンドロイドペイ)、PayPal、Venmoなどのアプリ経由による支払いが一般的になると、スマートフォンだけで買い物を済ませたい消費者が増えていきます。
モバイル端末で決済できる新たな支払い方法を取り入れることによって、消費者のトレンドに追いつくことができます。加えて、新しい支払い方法を利用している数多くの消費者にリーチし、客層を広げていくことができるのです。
最近、開催されたMobile World Congress(2017年2月開催)では、大企業が支払い方法の選択肢を増やしていることが明らかにされました。たとえば、マスターカードは、どこにいても、どのデバイスでもデジタルで支払いができる「Masterpass QR」(銀行カード、モバイルマネー、銀行口座など消費者が選択した他の支払い元で商品やサービスの支払いができるようにする決済ソリューション)という支払い方法をスタートしています。
スムーズなチェックアウトプロセス
オンラインのカスタマージャーニーの中で、チェックアウト(編集部追記:商品をカートに入れた後から決済手段確定までのフロー)は最も重要なステップです。チェックアウトプロセスを精査しない企業は、売り上げ目標に到達できず、複雑なチェックアウトがカート離脱につながっていることを理解できません。
実際、ECのコンサルティング会社Baymard社の調査によると、カート離脱する理由で2番目に多いのが、「時間がかかり過ぎる/チェックアウトのプロセスが複雑すぎる」でした。
チェックアウト時に入力するフィールド数の平均は14.88で、実際に必要な情報の倍のフィールド数になっているため、コンバージョン率が低いままなのです。
モバイルで買い物をする消費者は、同時にさまざまなことをしながら商品を選ぼうとするため、すぐにチェックアウトする傾向があります。スマートフォンの小さな画面で入力するので、多くの消費者が入力ミスをします。特に住所入力でのミスが多いようです。
デスクトップでも時間がかかる作業ですから、モバイルで行うにはミスが頻繁に起こりやすくなります。
何らかの自動入力機能や確認方法がなければ、チェックアウトはスムーズになりません。住所確認の技術を使えば、世界中の住所が自動入力でき、単純な入力でチェックアウトが完了します。スピーディに買い物ができるため、コンバージョン率が上がり、入力されたデータの正確性も高まります。そして、誤配送を軽減することが可能になります。
mコマースの台頭に対応するため、どんな技術を利用したとしても、最適化されたカスタマーエクスペリエンスを提供することが重要です。1つの買い物プラットフォームに注力すれば良い時代は終わりました。店舗、オンライン、アプリ、それぞれのカスタマーエクスペリエンスを考えなければいけません。
多様な新技術を活用することで、カスタマーエクスペリエンスを最適化し、どんな消費者にもポジティブな買い物体験を提供することが、ビジネスを長期的に成功させる秘訣になるのです。