英国の市場調査会社ユーロモニターインターナショナルが公表した「ボイス・オブ・ザ・コンシューマー:ライフスタイルサーベイ」2025年版によると、生成AIとの会話を経由したECサイトへの流入は、2025年の1月から12月の間に302%増加している。
調査は40か国で各国約1000人を対象に実施。「少なくとも月1回は生成AIツールを利用する」と回答した人に対して追加設問を行い、生成AIの利用実態と購買行動への影響を分析した。ユーロモニターは、生成AIが消費者の購買行動を「探す・比べる・選ぶ」という従来型プロセスから、AIとの会話内で完結する体験へと進化させつつあると指摘している。
生成AI経由のEC流入は302%増、他経路は23%増
消費者の過半数が「ChatGPT」「Google Gemini」「Perplexity」などの生成AIツールを、情報収集やアドバイス取得を目的に利用しているという。生成AIプラットフォームからECサイトへの流入は、2025年1月時点と12月時点を比較すると302%増えた。一方、検索エンジンやその他チャネルなど、AI以外の経路からの流入は23%増にとどまった。
「検索上位」から「会話内での言及」へ競争軸が変化
ユーロモニターは、AI主導のディスカバリーが進展することで、ブランドの可視性をめぐる競争軸が変化していると分析。これまで重視されてきたのは「閲覧数のシェア(どれだけ表示されるか)」だったが、今後は「会話のシェア(対話の中でどれだけ言及・推薦されるか)」が重要になるという。
グローバル・インサイト・マネージャー(Eコマース担当)のラビア・ヤスメーン氏は、ソーシャルコマースやライブコマースといった従来の進化とは異なると指摘。AI検索は「消費者がブランドを発見し、選択肢を評価、オンラインで購買意思決定を行う方法そのものを書き換えている」とコメントしている。
既存ブランドの存在感低下リスク、新たな勝者誕生の可能性も
ユーロモニターは、米国のスキンケア分野でオンライン販売を行う8700以上のブランドを対象に分析を実施。消費者の関心がAI主導のディスカバリーへ移行するなかで、既存ブランドの最大半数が徐々に存在感を失うリスクがあると指摘した。一方で、AIは新たなブランドが台頭する機会も生み出しているという。
従来の検索では、SEO対策や検索連動型広告、リテールメディアなどにより有利な表示位置を確保できた。しかし、AIが生成する回答内では、市場リーダーであっても「表示位置は保証されない」としている。
購買プロセスは「複数ステップ」から「単一インタラクション」へ
従来のECでは、「検索→一覧閲覧→レビュー確認→比較→カート投入」といった複数段階のプロセスを踏むのが一般的だった。
ユーロモニターは、AIが介在する購買体験では、こうした工程の多くが単一のインタラクションに集約されると説明する。
キーワード入力とスクロール中心の操作から、自然言語で質問し、文脈理解を前提とした回答を受け取る「会話型プラットフォーム」へとインタラクションが変化しているという。
ユーロモニターは、AI主導のディスカバリーが、2028年までに5950億ドル超と予測される世界のEコマース市場に大きな影響を与えると見ている。
