Adobeの調査によると、2025年のホリデーショッピングシーズンでは多くの消費者がさまざまな業界で生成AIを活用しました。なかでも、ECサイトへのAI経由のトラフィックの増加率は目を見張るものでした。生成AIが消費行動に与えている影響、EC小売事業者にもたらしている流入拡大を考察します。
生成AIからの流入拡大が与える影響
Adobe Analyticsのデータ分析によると、生成AIプラットフォームから小売事業者のECサイトへの流入が増加。生成AIが消費者のオンラインショッピングにおける、商品探しから決済までのあり方を変貌させています。
米国のEC専門誌『Digital Commerce 360』は2025年の米国ホリデーシーズンのEC売上高は2578億ドルに達したと報じました。これは、2414億ドルだった2024年の同時期と比較して6.8ポイントの成長です。
また、Salesforceは「ホリデーシーズン中の世界全体のEC売上のうち20%以上に、AIエージェントやその他の生成AIツールが影響を与えた」と推計しています。
なお、『Digital Commerce 360』とSalesforceはホリデーシーズンを11月1日から12月31日までと定義しています。
ECサイトへの流入増加が加速
この期間中、消費者はさまざまな業界で生成AIを活用しました。Adobeのデータによると、EC小売事業者のECサイトへの流入は、前年比の増加率がほかの業界と比較して最も大きくなりました。2025年の11月~12月において、生成AIプラットフォームからの流入は前年比で693%増加しました。他の業界の増加率は次の通りです。
- 旅行関連:539%
- 金融サービス:266%
- テクノロジーおよびソフトウェア:120%
- メディアおよびエンターテインメント:92%
小売業界に限定すると、Adobeの推計では前年比増加率は11月に前年同月比769%増加、12月に同673%増加となりました。
Adobe Analyticsは、このデータを集計するにあたり、米国の小売ECサイトへの1兆回以上の訪問数、1億件のSKU、および18の商品カテゴリーを調査しています。
北米の小売上位企業ランキング「北米EC企業トップ2000社」のうち215社がWeb分析にAdobe Analyticsを使用、106社がECサイトのデザインと開発に採用しています。また、「2026年度版 北米EC上位1000社向け主要ベンダー調査レポート」に掲載されているEC小売事業者も、コンテンツ配信、管理、ECプラットフォーム、マーケティングプラットフォーム、パーソナライゼーションなどさまざまな用途でAdobe Analyticsを活用しています。
2025年ホリデーシーズンに生成AIがもたらした影響
AI以外の流入元とのCVRの差が拡大
Adobeのデータは、消費者がオンラインでの買い物の際に、単に生成AIツールをより多く使っているだけではないことを示しました。むしろ、他の流入元から小売事業者のECサイトを訪れた場合よりも、購入に至るコンバージョン率は31%も高かったのです。他の流入元と生成AIからの流入を比べた際のコンバージョン率の差は、2024年のホリデーシーズンと比較して2倍に広がりました。
この傾向は、米国の祝日「感謝祭(11月の第4木曜日)」のセールにおいて、AI経由のコンバージョンが非AI経由より54%高かったという流れに続くものです。感謝祭とその翌日から始まるブラックフライデーでは、AI経由と非AI経由のコンバージョンの差は38%でした。
AI経由、訪問あたり売り上げが高い傾向
また、Adobeの調査によると、AI経由の流入による訪問あたりの売上高は、前年比で254%増加しました。感謝祭やブラックフライデー期間のAI経由の売り上げは前年比で大きく増加しましたが、2025年1月から7月までの期間における、AI経由の1訪問あたりの売り上げの増加率は前年同期比85%にとどまりました。
Adobe Digital Insightsのリードアナリストであるヴィヴェック・パンディア氏は、AIを通じて消費者がサイトに流入した「後」の動きこそが、小売事業者にとって注目すべきポイントだと提唱。「AI経由の消費者がECサイトを訪れてからの行動は、非常に興味深いデータを示しています」(パンディア氏)
AI経由の流入で直帰率が改善
調査によると、AI経由の流入は、非AI経由の流入よりも直帰率が改善し、消費者がすぐにECサイトを離れる確率が33%低くなりました。Adobeは、これは2025年初頭と比べて14ポイント改善していると説明しています。パンディア氏によれば、AIからの流入は、直帰率の面で他の流入元を“一貫して”上回っています。
サイト滞在時間もアップ
またAdobeのデータによると、生成AI経由のトラフィックにより、消費者が小売事業者のサイトに滞在する時間は45%増加しました。AI経由の消費者は、非AI経由の消費者と比べて、1回の訪問につき13%多くのページを閲覧しています。
「ChatGPT」「Gemini」「Perplexity」といった生成AIツールからの流入は急速に拡大しています。より注目するべきは、それらからの流入が購入に結びつく、質の高いトラフィックであるという点です。小売事業者やブランドにとって、これは消費者が商品を発見し、評価する方法が変化したことを示唆しています。
オンラインショッピングにおける生成AIの役割は、一時的な流行ではありません。重要なファクターになりつつあるのです。(パンディア氏)
多くの消費者が生成AIの提案に「信頼」「満足」「積極的にクリック」
Adobeの消費者調査によると、オンラインショッピングでAIアシスタントを利用した81%が「AIツールによって体験が向上した」と回答しています。
1000人以上の米国消費者を対象とした2025年ホリデーシーズンの調査データによると、半数近く(46%)の消費者が「AIによって生成された結果を信頼している」と回答。またAdobeのデータによれば、64%の消費者が「AIプラットフォームが提案するリンクに満足している」と答えました。そして、55%以上が「それらのリンクを積極的にクリックしている」と回答しています。
返品率改善にも貢献
Adobeによると、AIは消費者が自分の購入判断に自信を持つのにも役立っています。オンラインショッピングでAIを利用する消費者の3分の2以上(65%)が「AIツールのおかげで購入に自信が持てた」と回答。加えて、68%が「AIを使用して購入した商品は返品する可能性が低い」と答えました。
Adobeは、こうした要因が2025年のホリデーシーズンにおけるオンライン注文の返品率の1.2%減少に寄与したとしています。
より多くの消費者が、商品の調査、選択肢の比較、そして意思決定のために大規模言語モデル(LLM)を活用するようになるにつれ、一つのことがはっきりしてきました。それは「生成AIはもはや『ショッピングにおける商品発見のための補助的なツール』にはとどまらない」ということです。(パンディア氏)