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GapがAI活用で描くリテールの未来。収益アップ+価値向上を生みだす独自戦略+取り組みまとめ

2025年のホリデーシーズンと、2026年に向けたGapのAI活用が進んでいます。2024年以降、AI活用の基盤を整え、その運用を加速しているGapの新たな取り組みを解説します

Digital Commerce 360

8:00

Gapは、パーソナライゼーションとフルフィルメントを拡張しています。それは、Gapのネットショッピングを消費者にとってより身近で価値あるものにするための取り組み。GapのこれまでのAI活用の取り組みと合わせて解説します。

Gap主要分野でのAI活用の取り組み

専任組織の設立

Gapは2024年、さまざまな用途で人工知能(AI)を活用するための基盤を整えました。

スポーツブランド「Athleta」、カジュアルファッションブランド「Banana Republic」「Old Navy」、自社名を冠した「Gap」ブランドを展開するGapは、社内でAIに関する知見を高めてきましたが、2024年に専任組織として「Office of AI」を設立しました。

Gapの社長兼CEOであるリチャード・ディクソン氏は、2024年2月期通期の決算説明会で次のように話しています。

Gapの「Office of AI」は、設立当初から「主に従業員の業務支援に関わる、初期段階の活用例」の積み上げに注力してきました。(ディクソン氏)

Gap 社長兼CEO リチャード・ディクソン氏(画像はGapのニュースリリースから追加)
Gap 社長兼CEO リチャード・ディクソン氏(画像はGapのニュースリリースから追加)

「Office of AI」は、Gapの事業戦略に長期的な影響を与える、戦略的な優先事項に関連するAIイノベーションを推進する役割も担っている点も重要です。

当時、ディクソン氏は次のように続けました。

2025年には、カスタマーエクスペリエンス、新商品のMD、そして組織全体の生産性アップに関連する分野で、AIによる収益化の仕組みを開発していきます。AIを活用して価値を創出するためのさまざまな方法を整理した今、Gapはこの枠組みに基づき、明確な方針をもって取り組みを進める準備が整いました。(ディクソン氏)

2026年の展望

Gapは2025年、ホリデーシーズンに向けて自社の最新のAI活用を本格的に展開。同時に、2026年に向けた取り組みとして、既存の施策を土台に、主要分野でAIの活用を進めています

AIでパーソナライズを深化

ECの大規模セール「サイバーマンデー」(2025年は12月1日)前、Gapは新たなパーソナライゼーション機能の一覧を公開。これらは、AIを使ってホリデーシーズンの買い物を、もっと手軽でわかりやすいものにすることを狙った取り組みです。

新機能の開発は、2025年7月からAI活用の目的で提携しているGoogle Cloudとのパートナーシップを活用。新たなパーソナライゼーション機能は「より速く、より賢く、よりインスピレーションを与える買い物体験」を実現することをめざしていると、スヴェン・ゲルイェッツCTO(最高技術責任者)は説明しています。

Gap 最高技術責任者(CTO)スヴェン・ゲルイェッツ氏(画像はGapのニュースリリースから追加)
Gap 最高技術責任者(CTO)スヴェン・ゲルイェッツ氏(画像はGapのニュースリリースから追加)

ゲルイェッツ氏は、11月25日に発表したニュースリリースで次のように説明しています。

Gapが長らく蓄積してきた小売販売の知見と最新のAIツールを組み合わせることで、顧客が何を求めているのかをより深く理解し、ニーズを先読みし、その人に合ったネットショッピングの体験を提供できるようになります。(ゲルイェッツ氏)

これらの新機能には、「Gap」の『Fall Trend Edit(秋冬シーズンのトレンド)』や、「Banana Republic」の『Fall Essentials(秋のファッションの注目コレクション)』など、トレンドを基にしたキュレーション型のレコメンデーションが含まれます。

ゲルイェッツ氏はニュースリリースのなかで、これらのレコメンデーションが「その時々に合ったスタイル、色、コーディネート」を強調するものだと説明しています。さらに、顧客のサイズや採寸情報がわかっている場合には、それらを反映した提案も行われます。

AIを活用したキュレーションや商品レコメンデーションのイメージ(画像はGapのニュースリリースから追加)
AIを活用したキュレーションや商品レコメンデーションのイメージ(画像はGapのニュースリリースから追加)

また、デジタルアシスタントも導入しました。このツールは、各ブランドのECサイトやモバイルアプリにあるカスタマーサポート提供機能「Chat with Us」オプションを通じて利用できます。さらに、Daydreamが開発したチャットベースのAIショッピングエージェントdaydream.ingなどのAIプラットフォームを使ってGapの商品を見つけ、各ブランドのECサイトにジャンプすることも消費者に推奨しています。

フルフィルメントにおけるAI活用の成果

ディクソン氏は2025年3-11月期(第3四半期)の決算説明会で次のように話しています。

Gapはロボットによる荷下ろしから、高精度な保管・ピッキングシステムに至るまで、オムニチャネルのフルフィルメントネットワーク全体に新たな自動化とAI機能を導入してきました。その結果、数年前と比べて生産性は約30%向上しました。

これにより、需要が最も高まる時期でも、より迅速で柔軟かつ正確に対応できるようになります。(ディクソン氏)

ディクソン氏は、これらの取り組みによって、ホリデーシーズンの繁忙期に向けた体制がより整ったと考えています。

世界に約2500店舗を展開し、米国最大級の専門アパレルEC事業を持つGapは、2025年のホリデーシーズンにおいて、お客さまが望む場所や方法でサービスを提供できる体制にあります。(ディクソン氏)

GapのAI活用の変遷

需要の予測

2022年に、当時の暫定最高情報責任者だったヘザー・ミックマン氏が、GapがどのようにAIを活用しているかを明らかにしました。AI活用の目的には、データプラットフォームをより効果的に活用し、消費者需要を予測することが含まれていました。

ミックマン氏は2022年3月、「予測分析を用いて、販売データや製品の特性など多様なデータを分析し、Gapの全ブランドにおける、仕入れ内容、配置、価格設定に関する在庫判断に活用しています」と米国のテック系メディアVentureBeatに語っています。

在庫最適化に活用

ミックマン氏によると、こうした取り組みは在庫最適化にも及んでいます。その一環として、分析モデルを活用し、売り上げや利益率を左右する要因を分析。どれだけの商品を在庫として持つべきかを判断します。

ミックマン氏は「こうした分析結果が、特定の商品について店舗ごとにどのサイズが最もよく売れるかを判断するために活用できる」と説明しています。

商品画像を生成

AIの活用範囲はGapの業務全体に広がっています。ゲルイェッツ氏は、デザイナーが生成AIを活用していることにも言及。デザイナーが描いたラフスケッチを、AIが写真のようにリアルな商品画像に仕上げるために使われています。

商品開発からカスタマーケアに至るまで、GapのAIへの取り組みは、すべての買い物体験に、より高精度なパーソナライゼーション、より多くの創造性、そしてより深いつながりをもたらしています。(ゲルイェッツ氏)

Gapの2025年EC売上高は5%増、60億ドルの見込み

米国のEC専門誌『Digital Commerce 360』は、2025年におけるGapのEC売上高は60億4000万ドルに達すると予測しています。

Gapの年間EC売上高と成長率の推移(単位:10億ドル。出典:GapのIR資料、『Digital Commerce 360』(2025年12月時点)。2025年は『Digital Commerce 360』の予測)
Gapの年間EC売上高と成長率の推移(単位:10億ドル。出典:GapのIR資料、『Digital Commerce 360』(2025年12月時点)。2025年は『Digital Commerce 360』の予測)

この記事は今西由加さんが翻訳。世界最大級のEC専門メディア『Digital Commerce 360』(旧『Internet RETAILER』)の記事をネットショップ担当者フォーラムが、天井秀和さん白川久美さん中島郁さんの協力を得て、日本向けに編集したものです。

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