2026年の重要なECのトレンドを左右する要因は、消費者の支出額、そしてAI自立型のエージェントコマースとなっています。2025年までの動向を踏まえた10のトピックスから、2026年に有効なAI戦略のヒントを探ります。
AI活用をめぐるグローバルの潮流
EC小売事業者にとって新たなECのトレンドが次々と現れるなか、2025年は関税政策の変化や消費者行動の変化などがECビジネスに大きく影響しました。
コンバージョン率、ソーシャルメディア、ユーザーの検索や商品の提案をサポートするエージェントコマース、人工知能(AI)の活用に至るまで、EC・小売市場の名だたる企業は、よりインパクトのある優れた解決策を模索しました。
現時点において、2025年に小売事業者がどのようにAIを活用したかを分析することで、生成AIや大規模言語モデル(LLM)がECのどのような分野で最も効果的な結果をもたらしているかが明らかになりました。
次の10のトピックスは、ECプラットフォームが市場の潮流に適応し、EC事業者が成長のために何をすべきかを真剣に検討するなかで、2026年に何が重要になるかを示しています。
1.エージェントコマースのさらなる進化
2025年は、エージェントコマースの活用が飛躍的に進んだ年でした。活用事例は、AIアシスタントとの限定的なプロンプトと応答のインターフェースを超え、AIエージェントに消費者のタスクを自律的に実行させる段階へと進んでいます。
これまでに提供されているエージェントコマースの機能には、チェックアウト、キュレーションしたショッピングリストの作成、調査タスクなどが含まれています。
2026年は、これらの機能がさらに高いパフォーマンスを発揮し、顧客に対するサポートを超えて、サードパーティのエージェントやプラットフォームをつなぎこみ、より多くのエンドユーザーとAIエージェントが“対話”するようになる年になるかもしれません。
2.消費者が使いたいと思わせるAIツールの開発
ECの運用やユーザーの利便性向上に役立つ最高のテクノロジーを開発しても、肝心の消費者がそれを使いたいと思わなければ意味がありません。2025年の調査データによると、消費者は1年前よりも頻繁にAIツールを使用しています。
消費者がAIに求めているのは、時間の節約やコスト削減といったシンプルで明確なメリットです。そのため、こうしたニーズに的確に応えられるAIツールであるかどうかが、小売事業者にとって、AIツールの活用価値が左右される分かれ道と言えます。
3.「Google Zero」に備える事業者が増加
EC利用者、特に若い世代の人々は、年齢が上の世代と同じ手法で商品を検索し、ほしいものを発見しているわけではありません。若い世代はインスピレーションを求めて、ソーシャルメディアやLLMに目を向けています。
そうしたなかで、オーガニック検索は、かつてのように小売事業者にとって信頼できる成長チャネルではなくなりつつあります。“オーガニック検索からのクリックがいつかほぼ完全に消失し、検索結果からのECへのトラフィックが激減する”「Google Zero」という将来のシナリオを想定して、多くの事業者は先を見据えた計画を立てています。
4.Z世代でAIエージェントの活用進む
18歳から28歳の消費者が該当する「Z世代」。2025年、この世代は他の年齢層に比べて、AIエージェントの活用に非常に強い関心を示しています。
若者たちがこうしたアシスタントを巧みに使いこなすようになる傍らで、EC事業者は、Z世代よりも上の年代の層がECで具体的にどのような点に難しさを感じているのかを、より明確に把握し始めています。
5.安定し始めたコンバージョン率
北米のEC小売事業者は、2023年にコンバージョン率が大幅に低下しました。その後、AIやパーソナライゼーションなどの施策に取り組み、顧客満足度の改善やカゴ落ちの問題に対処、コンバージョン率低下の緩和に成功し、2025年までに安定したようです。
2026年は、AIをより本格的に活用するなかで、2025年までに行ったECサイトの改善が本当に長期的な効率化につながっているのか、その真価が問われる年になるでしょう。
6.AmazonのPrime DayがEC市場にもたらす効果
Amazonが有料会員向けに実施している「Prime Day」のセールの影響は、もはやAmazonだけのものではありません。毎年恒例の「Prime Day」や、Amazonによる年間を通じたその他のプロモーションは、他のEC小売事業者にとっても商品を動かすための重要なタイミングになっています。
「Prime Day」は、ECにおける消費者の行動パターンを分析し、最新の動向を把握するための「絶好の指標」にもなっています。たとえば、Adobe Analyticsの分析データによると、2025年の「Prime Day」におけるAIからのWebトラフィックは前年比で3300%増加。こうしたAI利用の急増は、まず夏の「Prime Day」で顕著に現れ、その勢いがそのまま、年末のCyber Mondayにおける前年比増へと引き継がれました。
7.「送料無料」を購入促進の武器として活用
EC利用者がAIツールに「時短」や「節約」を求めるのと同様に、消費者にとって購入の最終的な決め手となるのは、やはり「送料無料」という選択肢です。送料無料を打ち出すショップは競合よりも圧倒的に有利です。
各事業者は2025年、単なる無料だけでなく、送料無料を条件にまとめ買いを促したり、会員登録を誘ったりと、戦略的な武器として巧みに活用しました。
8.年末商戦で見えた、消費者の買い物や決済手法の変化
11月末のブラックフライデーから、その後に続く5日間のセールイベント「Cyber 5」では、AIの活用だけでなく、人々の買い方の変化や「BNPL(後払い決済)」のさらなる浸透も見られました。
9.マーケットプレイスがAI活用を推進
オンラインマーケットプレイスも、小売事業者と同様に、買い手(エンドユーザー)と売り手(出品者/出品事業者)の両方に向けた独自のAI機能を追加しました。その代表的な事例は、eBayと、ハンドメイドEC「Etsy」を運営する米国企業Etsyに見ることができます。たとえばeBayでは、AIの活用により、出品者向けには商品説明の自動生成、購入者向けには好みの商品のレコメンデーション機能を展開しています。
AIエージェントの新たなユースケースは、2025年にeBayがどのようにAIを活用していたかを示す、ほんの一部分に過ぎません。
10.AIツールの継続利用率アップ
EC利用者は、自分の望みを反映したより良い結果が得られるとわかれば、AIツールを利用する可能性が高まります。AIからのWebトラフィックが前年比で増加する一方で、米国のEC専門誌『Digital Commerce 360』と調査会社のBizrate Insightsが発表した最近のCyber 5の調査結果が示すように、AIツールがさらに普及する余地はまだ十分にあります。
最終的には「ChatGPT」「Gemini」「Perplexity」といったAI検索エンジン側も、小売事業者と同様に、いかにして消費者の利用ニーズに応えるかという課題に直面することになるでしょう。
2025年のホリデーシーズンに何が有効であったかを分析し、「2026年に消費者がどの程度AIを使って商品探しや購入を行うのか」、そして「AIの利用頻度にプラスの影響を与えるための施策」を求められることになるでしょう。
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