返品ポリシーはコスト管理の重要な要素の1つです。昨今は、インフレや関税引き上げの影響から、返品時に手数料を請求する事業者が増えています。2026年1月発表の返品に関する調査結果は、事業者のこうした動向や、消費者の世代ごとに返品時に重視していることをまとめています。調査レポートを基に返品に関連する動向を解説します。
返品分野の地殻変動
米国の配送事業者FedExと調査会社Morning Consultが2026年1月に発表した返品に関する共同調査レポートによると、EC小売事業者と消費者の双方が「返品において重要な変化が起きている」と認識していることがわかりました。
米国のEC専門誌『Digital Commerce 360』のデータによると、「北米EC事業トップ2000社」にランクインしている小売事業者の約半数が、配送事業者としてFedExを利用しています。「北米EC事業トップ2000社」とは『Digital Commerce 360』が発行する、年間EC売上高に基づく北米のEC小売事業者のデータベースです。
調査対象となった企業は「顧客からの返品率は前年よりも高まると予想している」と回答。さらに、消費者のAI活用や、返品ポリシーなど企業側が提示するメッセージの明確さ、返品手続きにおける「心理的なストレス」の有無が重要な役割を果たしていると考えています。
返品手数料を課す事業者が急増
近年、返品手数料の導入が一般的になっています。特に小規模事業者でその傾向が顕著です。小規模事業者は2025年にかけて、より積極的に顧客に返品手数料を課す傾向にあり、40%の企業が「手数料を導入した」と回答しています。手数料を課す割合は、2024年は25%でした。

インフレ・関税引き上げが影響
積極的に返品手数料を課すようになった背景として、事業者は、原材料や仕入価格のインフレ、関税引き上げの影響を主な理由にあげています。EC小売事業者の80%以上が「2025年の配送・返品戦略やポリシーを変更した背景にはインフレの影響があった」と回答。ほぼ同数のEC小売事業者が「同時期の決定において関税も影響した」と答えています。
返品手数料への消費者の反応
過半数が嫌えん
小売事業者は、自社が定める返品ポリシーが顧客のコンバージョンに影響を与えることを理解しています。消費者の反応がその影響を裏付けており、消費者の59%が「返品手数料がかかるとわかっている小売事業者のECは利用を避けることを検討する」と回答しました。
若い世代ほど手数料を払う意向
若い年代の消費者は返品手数料を支払う意向が比較的高い一方で、40~50代が多いX世代(65%)と、60~70代が多いベビーブーマー世代(72%)は、手数料がある場合に他の選択肢へ移る可能性が高いことがわかりました。
それでも、3人に1人以上が「ホリデーシーズンのオンラインでの買い物を例年よりも増やす予定だ」と回答。そのトレンドをけん引しているのはZ世代(10代後半~20代)とミレニアル世代(20代後半~40代前半)であるため、EC事業者は返品コストのバランスを取りながら、それらの新しい若い世代の消費者を確実に獲得する機会にしています。
返品スキームにおけるAI活用の高まり
37%の事業者がすでに活用
レポートでは、EC事業者と消費者の双方でAIの活用が進んでいることも示しています。すでに事業者の37%が「返品対応にAIを活用している」と回答。51%が「将来的にAIソリューションを導入する計画がある」と答えました。AIの主な活用事例としては、在庫管理、不正検知、返品率の予測があげられています。
消費者の20%が返品方法を調べるためにAIを利用
消費者の回答を見ると、消費者の20%は「返品方法を調べるためにAIチャットボットを利用している」と回答しました。特筆すべきは、カスタマーサポートにAIを利用した人のうち53%が「人間よりもAIを好む」と答えた点です。
しかし、これらのAIチャットボットやAIエージェントとやり取りする際の信頼レベルは、まだ低い傾向にあります。EC事業者がAIの利便性に適応するなかで、この「信頼のギャップ」が大きな課題として浮き彫りになっています。
FedExのデジタルポートフォリオ担当シニアバイスプレジデント、ジェイソン・ブレナー氏は次のように話しています。
返品がより頻繁かつ、フローが複雑になっている昨今、顧客による返品手続きの手間を減らすことは極めて重要です。注文が集中し、繁忙期となるショッピングシーズンの直後はなおさらです。AIは返品フローのわかりやすさ向上、簡便化の取り組みにおいて中心的な役割を果たしつつあります。
活用例は、企業の返品ポリシーに関する情報の収集、AI搭載のカスタマーサポートの活用、返品手続きをスムーズにするためのパーソナライズされたAIレコメンデーションなどがあげられます。(ブレナー氏)
消費者利用を分けるのは「利便性の高さ」
企業が定める返品ポリシーは多くの場合、「経営上の懸念事項」「在庫状況」「消費者のニーズ」という3つの要素が重なり合うところで最終的に決定されます。
EC小売事業者が原材料・仕入価格のインフレや関税引き上げによるコストを自社で吸収し、その結果として返品ポリシーに手数料を課すなどと調整するなかで、消費者にとっては返品時の「利便性」が依然として大きな魅力です。
たとえば、返品時に「商品のラベル不要・箱不要」の返品サービスを利用する消費者の割合は、2024年の31%から、2025年には41%へ増加しました。この増加は、手続きの手間が省ける選択肢があれば、消費者はより積極的にそれらを利用するようになるという傾向を象徴しています。
