新型コロナの感染拡大で消費者の買い物意識と購買行動はどのように変わったのか?
購買行動には常にリズムがあり、季節ごとの特徴があります。しかし、あまりにも多くのことがあっという間に変わってしまいました。今回は、購買が滞っているように見える理由を簡単に探ってみましょう。
消費者は新型コロナによるさまざまな影響を受け購買意欲を失っている
購買行動が止まってしまっています。買い物好きの筆者は迷子のような気分で、何曜日なのかわからず、時間を忘れてしまったような気さえします。
購買行動には常にリズムがあり、各季節に特徴があります。毎年、12月のホリデーシーズンの後、1月のセールでは家庭用品や衣料品が大幅に値下げされます。
憂うつな冬を過ごす地域もありますが、2月のバカンスや本格的な春の準備に向けて、春の大掃除を活用する方法、家を最新のインテリアにアップグレードするためのアイデアなどが紹介されます。
その後、学校の学年末が近づくにつれて、話題の中心は子どもの事になります。そして、プロムのドレス、卒業式の洋服を用意した後、夏のキャンプの準備を始めるのです。
多くのことがあまりにも急速に変わってしまいました。私たちは皆、楽しみが必要で買い物は気分を上げてくれる大きな要素です。しかし、我々のほとんどが通行止めを食らって、購買意欲を失っているようです。その理由を1人の女性のショッピングを例に取って説明したいと思います。
必需品以上に「必要性」があるものがない
コロナ禍で小売業が行っている取り組みとは? 107の事業者に調査
Digital Commerce360が107の小売事業者を対象に行った4月の調査(以下のグラフ参照)によると、97%の小売事業者が消費者の消費意欲の低下を報告。また、大多数(54%)は新型コロナウイルスが消費意欲を大きく低下させている原因だと考えていることが明らかになりました。
これらの小売事業者に、自社が直面している最大の課題について尋ねたところ、44%が消費者にオンラインでの購入を促すことをあげました。
健康・美容、ペット関連商品が健闘
状況は常に変わっていますが、EC利用者の55%が、新型コロナウイルスの影響で今までより多くのオンライン注文を行ったと回答しており、ECビジネスは成長しています。
Digital Commerce360と調査会社のBizrate Insightsが1,064人の消費者を対象に行った2020年4月の新型コロナウイルスに関する調査では、22%のEC利用者がオンラインでの注文が大幅に増えたと回答しています。
必需品の購入が大半を占めている一方で、健康や美容分野を含む補充商品は調査対象者の45%が購入しており、ペット関連商品の購入率も28%と健闘しています。残念ながら、アパレルと家庭用品は、この時期にしては販売が芳しくなく、オンラインでの購入率はそれぞれ30%と24%となりました。
この1か月の間に私自身が購入した商品のいくつかを見てみると、他の人がどのような行動をとっているかわかるでしょう。1つのサンプルに過ぎませんが、それでも参考になるはずです。
健康と美容分野は持ちこたえています。多くの人がそうであるように、私もヘアケアはサロンで購入していました。オーナーの厚意で、年間を通して20%オフのお得なサービスを提供してくれるので、他を探す必要がなかったのです。月に1度のヘアサロン来店時に必要な商品を選んでいました。
もちろん、新型コロナウイルスが流行している間は、手持ちの商品が少なくっていますが、ほとんどのサロンが閉まっています。そんな中、定額での支払いを避けようと、ネットで掘り出し物を探している状況。ネットで見つけた最大の割引が10%オフ。販売元のAllbeauty(編注:美容などのECサイト)はレビューによると、評判が良さそうです。
欲しい商品が30ドルで、たとえ失敗してもリスクは少ないので、思い切って購入しました。無事に配送されることを祈ります。これが新しい「普通」なのです。ただ、注文してから1週間経ちますが、出荷の通知はまだ届きません。
衝動買いは“過去の遺物”に
私たちが、毎週衝動買いをすると決めれば、経済に貢献できるチャンスかもしれません。ここでは、私が購入する可能性のある商品をいくつか紹介します。
プロムと卒業式のドレスは可能性があるでしょう。娘の小規模な学校では、今後の活動について、それがバーチャルもしくはリアルになるかどうかも含めて流動的です。時間はたっぷりあるので、さまざまな小売事業者を見て回らずにはいられません。
以前なら、何時間もかけてセレクトしたものから商品を吟味していたかもしれませんが、今はほんの数分後に「様子見」の思考に戻ってしまいます。注文したいという衝動に駆られることは、もうありません。
もちろん、買い物が私の趣味なので、自分用の商品をチェックする機会を逃すことはありません。卒業式用にぴったりのドレスを見つけたので、返品は問題ないだろうと思って購入しました。今後必要になるかどうかもわからないのに、そのドレスは私のクローゼットに掛かっていて、元の生活に戻るための希望にもなっています。
ドレスを着る機会がなかった場合は、箱に入れてお店に送り返します。その他の個人的な買い物に関しては、特に予定はなく、クローゼットにある洋服で済ませるつもりです。
たまには実店舗に行ってみたいと思うこともありますが、残念なことに、春物の商品はシャッターが閉まったお店の中に放置されていて、全く実感が湧きません。
地元の食料品店以外のお店に入りたいです。ふらりとお店に立ち寄るのは刺激的ですし、消費者行動の一部でもあります。時間がたくさんなくても、牛乳を買いに行ったり、日用品を返品するついでに立ち寄ったりできます。
現在、このような行動に制限があるだけでなく、もしお気に入りの商品を見つけた後に気が変わった場合、Target(編注:米国のディスカウントストア)のような店が返品を許可してくれるまでに2か月かかることもあるかもしれません。小売事業者は、購買を促進するために、より短い期間で返品に対処する必要があるでしょう。
家のインテリアもまた、私が買い物を保留にしている分野です。オンラインとオフラインの両方を駆使しつつ、整理整頓アイテムを使ってインテリアを変更することもありますが、ビジュアルの助けが必要なのです。今のような厳しい時代に消費を促進するために、ARのような可視化ツールを導入している企業には感心します。
でも私は、もう少し具体的なものを必要としているのです。高価なソファに座ってみたり、リビングルームに二人掛けソファを置いたらどう見えるか知りたいのです。小物やその他、購入の可能性のある商品の多くは、デザインからインスピレーションを得ますし、実店舗でディスプレイされているとより魅力的に見えます。
新型コロナウイルス感染拡大後の消費行動の変化は?
発送や配達は、もはや通常通りではありません。私たちは皆、時間をかけて培われてきた消費パターンを持っています。注文をして数日以内に商品を受け取ることを当たり前としています。3月にDigital Commerce360が行った独自調査「Click,Ship&Return(注文、配送、返品)」(以下グラフ参照)では、79%のEC利用者が配送に満足していると回答しています。
一方、私は何か注文しただろうか? そして、商品は実際に届いたのだろうか? と考えてしまいます。このような時間も全て無駄です。今のような状況でなければ、瞬時に買い物が終了する、シームレスなショッピング体験ができていたのですから。
配送が遅くなるということは、商品に対するワクワク感も失われることを意味します。消費者のほぼ半数が在庫切れ(47%)を経験し、同数が出荷の遅れも経験しています。
店舗をフルフィルメントセンターとして活用するNordstrom
オンラインで注文すると、リードタイムが長くなるのが普通のようです。大手百貨店のNordstromのセールを隅々まで確認しながら、なんとか気持ちを奮い立たせることができました。
道端での商品受け取りも可能でしたが、急ぎではなかったので、通常の配達を選びました。そして、実際に商品を注文した時、配達まで14日間かかると言われたのです。これほど長い時間がかかると言われたことはありませんでした。しかし驚いたことに、その商品は地元の店舗から翌日配送されました。多くの店舗がフルフィルメントセンターに変わっているようです。
さまざまな影響が出ている返品対応
オンラインで購入した場合、すぐに返金してくれる店頭での便利な返品が、もはや不可能になってしまいました。もっと大きな問題は、郵送で返品した商品の返金が1か月経っても口座に入金されなかったことです。
資金がひっ迫しているのはもちろん大変なことですが、1ヶ月かかっても返品を処理できないのは受け入れ難いです。ソーシャルディスタンシングが長期に渡って行われることを考えると、今後も返品処理に影響がありそうです。同じような経験は、スポーツファッションブランドの「Athleta」でも起こりました。別のサイズを注文して2度返品しましたが、まだ返金されていません。
前述した「Click,Ship&Return」の調査(以下のグラフ参照)では、すでにEC利用客の25%が返金までに1週間以上かかる小売事業者に不満を持っていたことがわかります。それが何ヶ月もかかるとしたら、彼らはどう思うでしょうか。私にはわかります。フラストレーション以外の何物でもありません。
オンラインで購入した商品返品時に、消費者がフラストレーションを感じること
二度と起こって欲しくない、常軌を逸した現状にもかかわらず、EC利用者の58%が、今後数か間にオンラインでの注文を増やすと回答しているのは良いニュースでしょう。再び経済をパワーアップさせるために、必需品から衝動買いまで全ての購買が必要になります。