データで見る「Amazon Pay」。販売事業者にもたらす3つのメリットとは?
2015年5月11日に日本で サービスローンチしたAmazonのID決済サービスした「Amazon Pay」。10周年を迎え、現在 は10万以上のECサイトが活用するまでに拡大した。「Amazon Pay」はこの10年間でどのように進化し、日本のECビジネスを 支えてきたのか。アマゾンジャパンの永田毅俊氏が解説した。

「Amazon Pay」10年の歩み
「Amazon Pay」は、「Amazon.co.jp」以外のECサイト、つまり事業者が運営する自社ECサイトで利用できるID決済サービスである。サービス提供開始から10年、消費者にとってより使いやすいサービス、またEC事業者にとってより簡単に導入しやすいサービスをめざし、さまざまな機能改善を繰り返してきた。
現在ではファッション、食品、ホーム&キッチン、旅行、メディカル、ふるさと納税など、10万以上のECサイトが導入している。「Amazon.co.jp」では扱っていないジャンルのECサイトでも利用していることも特長的だ。
Amazonアカウントを使って旅行商品などを買えるのは、「Amazon Pay」がその橋渡しをしているから。取り扱いのないジャンルも含めて、サービスを拡大してきた。(永田氏)
アマゾンジャパン合同会社 Amazon Payments Japan事業部 Principal Marketing Manager 永田 毅俊氏
「Amazon Pay」が消費者にもたらす3つのメリット
「Amazon Pay」の消費者は次の3ステップで、簡単、安心、便利に買い物を楽しめる。
- ステップ1:支払い方法で「Amazon Pay」を選択
- ステップ2:Amazonアカウントでログインし、内容を確認して「続行」を押す
- ステップ3:注文内容を確認し、購入を完了
「Amazon Pay」は、消費者に3つのメリットを提供する。
- 安心感……クレジットカード情報を入力する必要がなく、Amazonアカウントでログインし、支払いができるため、高い安心感がある。また、商品の不良など万が一の際にはマーケットプレイス保証の対象となる
- スピード感……AmazonアカウントのIDとパスワードだけで、スピーディに買い物が完了する。個人情報や支払い方法の入力を省略できるため、決済の手間が大幅に削減される
- 利便性……「Amazon Pay」を導入する10万以上のECサイトで買い物が可能。サイトごとに個別のIDやパスワードを管理する必要がないため、利便性が高い
データで見る「Amazon Pay」
「Amazon Pay」を使う消費者は買い物頻度が高い
「Amazon Pay」を利用したことがない消費者も含めて、ECサイトの利用について調査を実施したところ、「Amazon Pay」を使う消費者の特長が明らかになった。
利用頻度の結果を見ると、「週に1回以上」と回答した人は全体の約7%。また、約半数が2〜3週間に1回または1か月に1回程度ECサイトで買い物をしている。性別で見ると男性よりも女性の方がわずかに多いが、ほとんど差はない。また、年齢別に見ても、60歳以上で利用頻度がわずかに下がっているが、全体的に大きな変化はない。
これを「Amazon Pay」の利用経験の有無で比較したところ、「Amazon Pay」利用者は「週に1回以上」と答えた回答者が20%以上で、全体平均のおよそ3倍。さらに「1か月に1回以上」と答えた回答者までを含めると8割以上に達する。この結果から、「Amazon Pay」利用者は非常に高い頻度でECサイトを活用していることがわかった。
「Amazon Pay」を使う消費者が購入している商品とは?
次に、どのような商品を購入しているのかを調査した。
上の表では、全体平均よりも10ポイント以上高い場合は濃いオレンジ色、5ポイント以上高い場合は薄いオレンジ色、全体平均よりも低い場合はグレーで表示。「Amazon Pay」を使う消費者は、その他のカテゴリーを除くすべての商品カテゴリーにおいて、全体平均よりも利用率が高い。つまり、購入する商品の種類も幅広いということを示している。
「Amazon Pay」の満足度は?
「Amazon Pay」を使う消費者に満足度を聞いたところ、91%が「満足している」と回答した。
頻繁にネットショッピングを楽しみ、幅広いカテゴリーの商品を購入し、積極的にECを活用している顧客を迎え入れる準備をすることが顧客満足度向上につながる。「Amazon Pay」を導入することは、そのような優良な顧客層を自社ECサイトに呼び込む体制を整える意味がある。(永田氏)
「Amazon Pay」が販売事業者にもたらす3つのメリット
ここからは、「Amazon Pay」が販売事業者にもたらす3つのメリットについて、実際の導入事例を交えて紹介する。
メリット①:安心して買い物できる環境
初めて利用するECサイトで決済をする際、クレジットカード情報を入力する必要がないことは、単に手間が省けるだけではなく、それ以上に不安を解消し、安心感をもたらす効果が高い。
「Amazon Pay」ではグローバルで24時間365日、不正利用に対するチェックを行っており、顧客サポートと同様に、不正利用へのサポートが出品サービスと同等に提供されている。この世界レベルで高度なセキュリティ対策は、商品を販売するEC事業者にとっても大きな安心感につながる。
ここで実際に導入している事業者の声をいくつか紹介する。
転売などの不正取引のターゲットになりやすいブランドリユース品を扱っているため、安全かつスピーディーな決済方法を探していた。「Amazon Pay」を導入後、不正取引に関する確認作業が軽減された。これにより、チャージバックのリスクを実質的にゼロにすることが可能となり、安心して取引を進められている。(コメ兵)
クレジットカード番号や個人情報を預けることに抵抗を感じる顧客もいたが、導入することで、Amazonが持つ高い信頼感が後ろ盾になっていると実感した。「Amazon Pay」は、決済に関するネガティブな体験を、圧倒的な利便性で減らしてくれる。(Greenspoon)
お客さまに安心して決済してもらうためには、Amazonの高い知名度と利用者数が不可欠だった。(担当者自身が)消費者として普段から「Amazon Pay」を利用しており便利で安心な決済手段というイメージを持っていたため導入を決めた。(俺の)
なお、永田氏は「『Amazon Pay』導入によって、自社ECサイトの商品や顧客データがAmazonに利用されるのではないか」というEC事業者からの懸念の声を聞くことがあるという。しかし、「Amazon Pay」を通じて得られるECサイトのデータは、「Amazon.co.jp」のビジネスに利用されることはない。顧客の個人情報や購入履歴は厳重に管理しており、「Amazon Pay」のサービス提供と改善のみに活用する。
また、Amazonアカウントで預かっているクレジットカード情報が、EC事業者へ渡ることもない。これにより、EC事業者のクレジットカード情報の非保持化にも貢献できる。
メリット②:新規顧客獲得に貢献
2つ目のメリットは新規顧客の獲得である。フューチャーショップの調査では、「Amazon Pay」未導入のECサイトと導入済みのECサイトで、新規会員登録数の増加率を比較したところ、57ポイントもの差が出た。
導入後3か月で、「Amazon Pay」で決済した顧客の新規会員登録完了率は、「Amazon Pay」を選ばなかった顧客に比べて20%高かった。この結果、全体の新規会員登録完了率が7%押し上げられ、新規顧客による売り上げも2%~3%増加した。この登録完了率の向上は想定以上だった。(ワコール)
以前は会員登録の完了までに11のステップがあった。しかし「Amazon Pay」の導入によって、わずか3ステップで完了するようになった。その結果、新規会員登録完了率は11.07%に増加した。(SUZURI)
こういった事例からも、「Amazon Pay」が初めてのECサイトで買い物をする際のハードルを下げている効果をイメージいただけるのではないか。(永田氏)
メリット③:コンバージョンレートの改善
下の図はフューチャーショップの調査で、月間注文件数の増加率を「Amazon Pay」未導入のECサイトと導入済みのECサイトで比較した結果である。
「Amazon Pay」導入済み店舗では、プラス38ポイントという結果が出ており、注文数の増加やコンバージョン率の向上に効果が期待できることを示している。
「Amazon Pay」導入後、前年同期と比べてコンバージョン率が2倍近く向上した。ECサイトで新規購入した顧客の半分以上が「Amazon Pay」を利用している。(加茂商事)
「Amazon Pay」の導入は、まるでザルの目を小さくするように、購入に至らない顧客を減らし、コンバージョン率を向上させる効果があると言える。(永田氏)
「Amazon Pay」活用の最新事例
最後に「Amazon Pay」のOMO(Online Merges with Offline)における活用事例を紹介する。
寝具専門店の西川では、ショールームに置かれたカードに記載されたQRコードを自宅で読み取ると、ショールームで試した商品がECサイトのカートにすでに入った状態になる。このため、顧客は「Amazon Pay」の決済ボタンを押すだけで簡単に商品を購入できる。QRコードが店舗での体験と自宅での購入を結ぶ役割を果たしている。
「Amazon Pay」は単に決済オプションを増やすだけでなく、顧客に安心して買い物できる環境を提供し、新規顧客獲得やコンバージョンレートの改善に貢献する。それにより、客数や購入回数の増加、さらに購入単価の上昇も期待でき、相乗効果により、全体的なマーケティング効果の向上が期待できる。
今回ご紹介したAmazon Payに関するデータはこちらの資料でご覧いただけます。
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