「Amazon Pay」導入でコンバージョン率1.5倍のケースも! 事業者・お客さま双方のメリットを解説
「Amazon Pay(アマゾンペイ)」を利用する企業が増えている。「Amazon Pay」は、「Amazon.co.jp」以外のECサイト、例えば企業の自社ECサイトでAmazonアカウントを使って、簡単・安全に買い物ができるサービスだ。サービスのローンチから5年で導入企業数は1万社を超えた。「Amazon Pay」を統括するアマゾンジャパン合同会社の井野川拓也氏(Amazon Pay事業本部本部長)が語った「Amazon Pay」の特徴やメリットとは。(写真◎Lab)
1万社を超える事業者が導入
「Amazon Pay」とは、企業の自社ECなど「Amazon.co.jp」以外のサイトにおいてもお客さまがAmazonアカウントを使って簡単・安全・快適に買い物ができるサービス。日本では2015年にサービスを開始、「出前館」「劇団四季」が最初の導入企業だ。
「Amazon Pay」は決済金額、事業者数ともに増加しており、現在は1万社を超える事業者が導入している。同サービスはアメリカやヨーロッパなどさまざまな国で展開しているが、日本の決済金額と事業者数の伸びは特に大きいという。それだけ日本のお客さまに支持されているとみている。
商品ジャンルでみると「ファッション・スポーツ」のほか、「食品」「ホーム・キッチン・ビューティ」「家電・PC・ホビー」「寄付・サービス」「デジタル」など多岐にわたっており、幅広い事業者に利用されていることも特徴だ。
お客さまの「Amazon Pay」利用の流れ
「Amazon Pay」を導入した自社ECサイトには「Amazon Pay」ボタンが表示される。お客さまがボタンをクリックすると、「Amazon アカウントでログイン」という画面が表示される。ここで、もしブラウザにIDやパスワードを記憶させていればそのままログインできる。Amazonアカウントに保存している支払い情報や住所情報が自動的にECサイトに連携されるので、その内容を確認してクリックすれば購入完了できる仕組みになっている。
お客さま側の3つのメリット
「Amazon Pay」を利用するお客さまにとって、メリットは大きく3つある。「利便性」「スピード」「安心感」だ。
利便性
さまざまなECサイトで購入するお客さまからすると、さほど頻繁には訪れないECサイトのIDやパスワードを忘れるケースも少なくない。そうした場合でも、使い慣れたAmazonアカウントで簡単にログインできるのが魅力になる。
スピード
さまざまなECサイトで買い物をする際に毎回、メールアドレス・電話番号・住所・クレジットカードといった情報を入力するのは面倒。その時にAmazonアカウントに保存している情報が自動的に表示され、それを確認してクリックするだけで購入できる。
安心感
「Amazon Pay」を使って決済をすると「Amazon.co.jp」以外のサイトでも、マーケットプレイス保証の対象となる(一部対象外の商品もあり)。また、クレジットカード番号は Amazonが管理し事業者側には渡さないため、カード情報が漏えいするリスクを減らすこともできる。
実際、「Amazon Pay」を利用したお客さまの声をみると、「初めてのサイトでお買い物する時、新たに情報入力しなくて良いから」といった声が47.3%と最も多く、次に「ID・パスワードを覚えているから」が35.7%となった。
事業者側の3つのメリット
「Amazon Pay」を導入する事業者側のメリットも3点ある。それは「新規顧客の獲得」「コンバージョンレートの改善」「不正取引対策」だ。
新規顧客の獲得
ゲスト購入の場合、「Amazon Pay」で決済をする割合が40~50%にのぼるという事例があり、そのうち最終的に会員になる割合は60~80%で、他の決済方法と比べて3倍程度高くなっているという。
こうした数値が出る背景には購入画面が影響している。「注文を確定する」というボタンの上に「お客様情報を会員として登録する」と「メールマガジンを購読する」というボタンが設置されている。これにより、注文の確定と同時に会員登録とメールマガジン購読につながるというわけだ。
「Amazon Pay」は決済サービスであると同時に、セールスマーケティングツールでもある。我々の決済サービスを使っていただくことで、より効果的・効率的に会員になっていただくことが期待できる。(井野川氏)
会員登録のハードルを下げる目的で導入した阪急阪神百貨店は、6か月で会員の15%が「Amazon Pay」を利用して会員登録したという。阪急阪神百貨店はそれまで、百貨店を展開している関西エリアの会員が多かったが、同サービス導入後は関西エリア以外からも会員を獲得できているようだ。
コンバージョンレートの改善
「Amazon Pay」を使っていない場合は65%、およそ3人に2人が購入フローに入れば購入を完了するという調査結果がある。つまり、3人に1人は購入フローに入った後に途中で離脱している。一方同調査では、「Amazon Pay」は購入完了までの操作が簡単なため、途中のカゴ落ちが減り、購入フローに入ると93%が購入完了に至るという。コンバージョンレートはじつに1.5倍高くなっている。
「Amazon Pay」を導入した眼鏡ブランド「JINS(ジンズ)」は、導入以来新規顧客が増加し、コンバージョン率は前年比30%増加。限定モデル販売では「Amazon Pay」利用率が40%を超えた。「限定販売のアニメキャラクターとのコラボ商品は、ゲスト購入の割合が高く、売り切れ前にすぐに買いたいというニーズがあることから、簡単に購入できる『Amazon Pay』の利用が増えたのではないか」とジンズの担当者は分析している。
不正取引対策
「Amazon Pay」では不正取引の検知の仕組みについて、Amazonで利用しているものと同様のものを使っている。アメリカやヨーロッパ、インド、中国、南米などさまざまな国で事業を展開しているが、昨今は不正取引もグローバル化しているという。そういった不正取引の情報を踏まえた上で、事業者が不正取引に遭うリスクを軽減する取り組みを行っている。
実際に「Amazon Pay」の導入で不正取引に関わる確認作業が軽減されたのが、中古商材を扱う「KOMEHYO(コメ兵)」だ。「Amazon Pay」が「マーケットプレイス保証」の対象となり、カード会社が加盟店に支払いの取り消しや返金を要求するチャージバックのリスクを実質的にゼロに近づけることが可能だとしている。
サブスクやギフト券などに対応
「Auto Pay」機能
「Amazon Pay」にはサブスクリプションに対応した「Auto Pay(オートペイ)」という機能も備えている。お客さまが注文時に選択したクレジットカードを利用して今後の支払いにも同意すると、自由に金額やタイミングを設定して請求が可能になる。また、頻度や金額、請求内容のカスタマイズもできる。
「Auto Pay」を導入している男性化粧品販売の「BULK HOMME(バルクオム)」では、「Amazon Pay」導入後すぐにコンバージョンレートが約50%改善した。その後定期購入の顧客も伸び続け、1年半前に比べて月商が3倍以上になっている。「Amazon Pay」経由の購入のうち約95%がスマートフォン経由だという。
「Amazonギフト券」支払い
「Amazon Pay」は、「Amazonギフト券」にも対応。若年層でクレジットカードを持っていない場合や、クレジットカードを使ってECサイトで購入することに不安を持っているお客さまでも、「Amazonギフト券」の残高を使って「Amazon Pay」で決済できるようになった。
同機能を利用する「ユナイテッドアローズ」によると、「Amazon Pay」が「Amazonギフト券」での支払いに対応したことにより、クレジットカードを使わないお客さまが自社ECを利用し、新規顧客が増加することに期待しているようだ。
「Web接客型」Amazon Pay
「Amazon Pay」を使わずにゲスト購入する際、入力フォームの記載項目の多さから離脱するケースがある。それを防ぐ狙いで開発されたのが「Web接客型Amazon Pay」という新しい実装方法だ。「Amazon Pay」以外の決済方法で買い物カゴに進み、そこで一定時間が経過した段階で「Amazon Pay」を案内するポップアップを表示。これにより入力フォームでの離脱を減らすというもの。
同機能を導入した「Otameshi(オタメシ)」は、「Web接客型Amazon Pay」を導入したことで入力フォームページでの離脱率が27%改善。これによりコンバージョン率も改善し、売上増加につながったようだ。
越境ECへの対応
「Amazon Pay」では、海外のお客さまが日本国内のECサイトで買い物する際の決済にも対応を開始した。ジグザグが提供する「WorldShopping BIZ(ワールドショッピングビズ)」という越境ECサービスを通じて、欧米のAmazonアカウントを持つお客さまが越境ECで商品を購入する際に「Amazon Pay」が利用可能になるというものだ。
「WorldShopping BIZ」のECサイトへの導入は、JavaScriptを数行入れるだけという簡単さ。これだけで海外からのアクセスに対して言語表示が切り替わってナビゲーションされ、決済で「Amazon Pay」が利用可能になる。
音声ショッピング
音声ショッピングへの対応も進めている。Amazon Alexa搭載デバイスで使える「Alexaスキル」には、すでに「Amazon Pay」の音声ショッピングに対応したものが提供されている。例えばピザや寿司の宅配、ふるさと納税の寄付、コンタクトレンズの追加注文などを行うことができる。
手数料は4~4.5%
「Amazon Pay」の利用費は、商品やサービスの販売では手数料 4%、デジタルコンテンツでは4.5%となっており、初期費用や月額費、トランザクション費は無料となっている。
「Amazon Pay」の導入に際しては、「Amazon Pay」のオフィシャルパートナーのショッピングカートやISV(独立系ソフトウェアベンダー)を利用すると、「Amazon Pay」が組み込まれているため、簡単にサービスを利用できる。