ゲスト購入者の利用2.6倍、新規購入金額1.5倍に拡大! ナラカミーチェジャパンが自社ECで成功した「Amazon Pay」の活用事例
高価格帯のシャツやブラウスを販売するナラカミーチェジャパンは、自社ECサイトの離脱率改善とコンバージョン率向上を目的にしたサイト改善で、ゲスト購入者の利用促進や新規会員獲得を実現した。この改善効果を引き出したのがAmazonのID決済サービス「Amazon Pay」の活用だ。ここでは、ナラカミーチェジャパンの事業概要と、サイト改善を成功に導いた「Amazon Pay」の特徴を解説し、さらに、ナラカミーチェジャパンの末吉聖人氏(執行役員CSO販売本部本部長)とアマゾンジャパンの井野川拓也氏(Amazon Pay事業部 カントリーマネージャー)による対談から、「Amazon Pay」の活用法や導入効果などを紹介する。
自社ECとモールでMDを変えるEC戦略
RIZAPグループのナラカミーチェジャパンは、ビジネスシャツやブラウスを中心にイタリアから仕入れた衣料品を販売している。直営店や百貨店への出店など合計25店の実店舗を展開するほか、ECでは、自社EC、仮想モールへの出店など合計8店舗を運営している。現在のEC化率は30%台。
EC売上は、注力している自社ECがEC全体の約7割を占めており、残り3割がECモール売上。コロナ禍では自社EC売上が前年比40%増程度で増加したという。
ナラカミーチェジャパンは自社ECとECモールでMD戦略を変え、自社ECの強化につなげている。自社ECではイタリアの高価格帯のこだわりのアイテム、自社EC限定商品を展開する一方、ECモールではモールに適したアイテムを強化。価格競争力を重視して、アウトレット商品のラインアップも強化している。こうしたEC戦略で、それぞれ異なるニーズの顧客を獲得している。
自社ECサイトの課題は決済時のページ遷移数
ナラカミーチェジャパンが自社ECサイトを運営する上で抱えていた課題は、決済時に商品をカートに入れてから画面を3回遷移しなければ決済が完了しないこと。これを2回に減らすことで購入時のストレスを減らし、離脱の抑制、コンバージョン率の向上につなげようと考えた。
「ページ遷移が増えると離脱率が高くなるだけでなく、サーバーの負荷も高くなります。移動数は絶対に減らした方がいい。そこは多くの企業が同じ考えを持っているはずです。カート内の遷移ページ数を減らすことで、売り上げと顧客体験が大きく変わると考えました」と語る末吉氏が、この課題を解決するために採用したアプローチが、Amazonが提供するID決済サービス「Amazon Pay」の導入だった。
「『Amazonアカウント』を使い自社ECサイトで買い物ができる」「住所や支払い情報の入力が不要」「『Amazonアカウント』へのログインと注文確定の数クリックで決済が完了する」――顧客の利便性向上につながり、決済までのページ移動数を減らすという目標も実現できる「Amazon Pay」の導入は、ナラカミーチェジャパンのECサイトが抱えていたさまざまな課題を解決していくことになる。
やはりページの遷移数が増えれば増えるほど、コンバージョン率が下がっていくのは間違いありません。「カート離脱率を改善したい」「CVRを高めたい」「顧客の利便性を向上したい」――。EC事業者が抱えるこのような課題を数クリックで決済が完了する「Amazon Pay」を、さまざまな事業者さまがマーケティングツールとして導入されています。(井野川氏)
「Amazon Pay」の特徴・強み
Amazonアカウントに登録した住所情報と支払い情報を利用して自社ECサイトで商品を購入ができるID決済サービス。「もはやマーケティングツール」とEC事業者が「Amazon Pay」を支持する機能や特徴は次の通り。
- 支払い機能
- Amazonアカウントを使って、Amazon以外のECサイトで買い物できる
- 住所や支払い情報を入力せずに買い物できる
- Amazonアカウントへのログインと注文確定の数クリックで決済が完了できる
- 「Amazonギフトカード」や「あと払い(ペイディ)」を使って、クレジットカードがなくても支払い可能
- 「Amazon Pay」も通常の与信保持期間は30日。再オーソリ機能を実装し、再度与信を取り直すことにより180日まで延ばすことができる。さらに180日を過ぎる商品を取り扱っている場合には別途設定によって最大13か月まで延長可能
- 「Amazon Pay」では、不正利用防止の観点から、決済時に審査を実施。Dynamic Authorizationおよび非同期オーソリを利用することで、審査に時間を要する場合でも、注文機会ロスを最小限にできる
※単体での実装は不可。すでに「Amazon Pay」を導入済みの事業者を対象とする
- セキュリティ
- アカウントやクレジットカードの不正利用を24時間365日監視する不正検知システムを採用
- Amazonアカウントへのログイン時に2段階認証を採用するなど厳格な情報管理を実施
- チャージバックが発生した取引に関して、要件を満たしている場合に、事業者への入金額を保障する支払保証ポリシー。事業者向けの支払保証ポリシー(参照:https://pay.amazon.co.jp/help/201212410)と購入者向けのAmazon マーケットプレイス保証を用意している(参照:https://pay.amazon.co.jp/help/201751470?ld=APJPLPADirect)
- マーケティング効果
- 「Amazonギフトカード」で支払うと、支払い額の最大1%を「Amazonギフトカード」で購入者に還元するプログラムを用意(還元額はAmazonが負担)
- 商品をカゴに入れたまま購入していないユーザーに対してメールで再アプローチする際、メールの文面に「Amazon Pay」ボタンを配置し、「Amazon Pay」を利用しているユーザーであればそのまま直接購入できるメール型機能(メールによる再アプローチ機能)も実装可能
- ECサイトで会員登録をせずに購入に進んだユーザーに対して、入力フォーム画面で「Amazon Pay」の利用を勧めるポップアップを表示する「Web接客型Amazon Pay」
※「Web接客型」「支払い救済型」「メール型Amazon Pay」は単体での実装は不可。すでに「Amazon Pay」を導入済みの事業者を対象とする。また、「メール型Amazon Pay」は別途審査あり
- 利用料金
- 初期費用・月額費用・トランザクション料は不要で決済手数料のみのシンプルな価格体系
- 決済手数料は3.9%。デジタル商材は4.5%
ナラカミーチェ末吉氏とAmazon井野川氏の対談~「Amazon Pay」でゲスト購入が増加
「Amazon Pay」導入で、ナラカミーチェジャパンの自社ECサイトはどのように変わっていったのか。末吉氏と井野川氏の対談から、ナラカミーチェジャパンが抱えていた課題を「Amazon Pay」がどのように解決していったのか、「6つの導入効果」の切り口で見ていく。
「Amazon Pay」を使う人はリピート購入しやすいという傾向が見えてきた
末吉氏:ナラカミーチェジャパンは2017年に「Amazon Pay」を導入しました。現在、自社ECの決済のうち「Amazon Pay」が利用されている割合は20%。クレジットカードに次いで2番目に利用される決済手段になっています。
井野川氏:「Amazon Pay」を導入している他の事業者さまも、20~30%程度の利用割合というところを多く聞きます。初めて購入するショップでも情報入力の手間が省けるので、新規顧客獲得に効果が期待できるという特長があります。会員登録する手間を省略できるので、ゲスト購入を選択するお客さまにも「Amazon Pay」は選ばれています。
末吉氏:ナラカミーチェジャパンの自社ECでは、ゲスト購入の利用が顕著です。2023年1~3月を見ると、ゲスト購入者が「Amazon Pay」を利用した件数は、前年同月比で1月は146%増、2月は273%増、3月は127%増で、1~3月累計では160%増で推移しました。
「新規購入」「リピート」「ゲスト購入」に分けて見ていますが、ゲスト購入のほか、「Amazon Pay」を使ったリピート数は1~3月で70%増、新規購入も同53%増でした。LTVも3か月間で同10%増と好調に推移しています。「新規購入」「ゲスト購入」に対する効果は想定していましたが、「Amazon Pay」を使う人はリピート購入しやすいという傾向が見えてきたのは驚きでした。
「Amazon Pay」経由の売り上げも好調に伸びています。2022年4~12月を見ると、「Amazon Pay」経由売上はすべての月で前年同月比プラス成長を達成しました。クレジットカードも前年実績を上回っていましたが、「Amazon Pay」はそれよりも高い伸び率を記録しています。
「Amazon Pay」導入効果①
- 「Amazon Pay」を使って「新規購入」「ゲスト購入」する顧客が多い。また、「リピート」購入しやすいという傾向も見えてきた
高単価商品の購入も「Amazon Pay」で。利用者には60代の顧客も
末吉氏:「Amazon Pay」の利用者は顧客単価も高い傾向にあります。ナラカミーチェジャパンの商品は、たとえばブラウスだと2万円から2万円台後半の価格。そのような高価格商品も、お客さまは「Amazon Pay」で購入しています。
「Amazon Pay」利用者には60代のお客さまも多く、私たちが思っていた以上に「Amazon Pay」は幅広い年齢層で使われており、比較的高齢層にも決済に「Amazon Pay」が使われているのはうれしい発見でした。
井野川氏:自社ECサイトで買い物する際に「Amazon Pay」「Amazon」のマークが自社ECに掲載されていることでお客さまに安心感を与えることができ、商品が欲しいときに買いやすくなるのではないかという声は導入事業者さまから多く寄せられています。
「Amazon Pay」導入効果②
- 高齢者の顧客が「Amazon Pay」を使って購入も。「Amazon Pay」「Amazon」のマークが安心感を与える
直近の会員数は15%増。会員登録につながる仕組みとは
井野川氏:「Amazon Pay」を利用する事業者さまに評価いただいているポイントとして、ゲスト購入だけでなく、「そのままAmazonアカウントの情報を活用して会員登録にまでつながる」という点があります。注文確定画面に会員登録やメルマガ購読の登録ボタンを配置すれば、Amazonアカウントの情報を利用して新規会員登録を促進することができ、その結果、会員獲得数が伸びたというお声をいただいていますが、ナラカミーチェさまではいかがでしたか?
末吉氏:「Amazon Pay」で注文を確定する際、お客さまの同意があれば顧客情報をマーケティングに活用できるのは、ありがたい機能です。その機能のおかげもあり、自社ECサイトにおける月次ベースの会員数は、直近では前年同月比15%増で伸長。2023年3月はセールを強化して広告費も投下したので、会員数の伸びがさらに高くなりました。「Amazon Pay」による決済金額を見ると、3月度は新規購入で前年同月比1.5倍を記録しています。
「Amazon Pay」導入効果③
- 「Amazon Pay」を使った決済の注文確定画面に会員登録やメルマガ購読の登録ボタンを配置し、会員登録の増加に成功
「Amazonギフトカード」残高で決済すると購入額最大1%を「Amazonギフトカード」で還元
井野川氏:2021年から「Amazon Pay」では、「Amazonギフトカード」の残高で決済すると、購入額の最大1%を「Amazonギフトカード」で還元するプログラムを実施しています(還元率はAmazonプライム会員には1%、通常会員には0.5%)。事前登録などは必要なく自動的にギフトカード残高に還元する仕組みです。この還元プログラムの還元費用はすべて「Amazon Pay」が負担しており、販売事業者さまの負担はゼロの施策となっています。
末吉氏:「Amazonギフトカード」残高で支払いできるのはとても便利ですよね。「Amazonギフトカード」還元プログラムに関するバナーをご提供いただけるため、ナラカミーチェジャパンでは、過去に「Amazon Pay」を利用して購入した既存顧客を抽出し、「Amazonギフトカード」の残高を「Amazon Pay」での買い物時に使えることで、より利用しやすくなったことをアピールするような案内を送ったりしています。
「Amazon Pay」導入効果④
- 「Amazon Pay」主催の還元プログラムがあり、事業者は費用負担ゼロで販促に活用することができる
不正取引対策に有効な「Amazon Pay」
末吉氏:2022年10月頃から不正注文が増加し、数百万円規模にのぼりました。ただ、10~11月時点では購入者の名前が明らかにおかしく、不正な注文であることが事前にわかったため防ぐことができました。しかし、12月に入ると実在しそうな人物の名前で不正注文が入るようになり、手口は巧妙化してきましたが、対策にかけるリソースと時間にも限界があるのが現実でした。
こうした状況下、世界水準のシステムで不正取引を検知し、事業者側の不正取引対策の手間やコスト、時間などを大幅に削減できる「Amazon Pay」を導入したことのメリットを感じることができました。「Amazon Pay」の決済の割合が増えたことにより、不正取引に関する確認作業などを軽減することができているんです。
井野川氏:Amazonにとって、セキュリティは最優先される事項で、大規模な投資を継続して行っています。クレジットカード決済に関する独自の不正検出ルールに加え、Amazonアカウントやカードの不正利用を24時間365日監視する世界水準の不正検知システムを採用しています。
グローバル化する不正取引に対しては、米国やヨーロッパ、インド、中国、南米などさまざまな国で事業を展開している強みを生かし、情報をいち早くキャッチして対応しています。また、「Amazon Pay」を利用すれば、セキュリティのメリットである、クレジットカード情報の非保持化を実現できます。
末吉氏:自社ECサイトにおける手の込んだ不正取引を1件1件確認していくことは非現実的なんです。世界水準のシステムで不正取引を検知する「Amazon Pay」の決済割合が増えていくと、チャージバックによる損失の軽減に役立てることができると感じています。また、購入者に対してはAmazonが購入者に対して保証している「Amazonマーケットプレイス保証※」の対象であることから、お客さまにとって安心・安全に買い物ができると思わせてくれる決済手段ですよね。
※「Amazonマーケットプレイス保証」とは、Amazonにおいて顧客に販売事業者の出品商品を安心して購入してもらうために、購入商品のコンディションや配送を保証するもので、一定の条件を満たす場合、配送料を含めた購入総額のうち、最大30万円まで保証を受けられる制度。「Amazon Pay」を利用した購入においても、同等の保証対象となる(ただし、一部の条件の場合は対象外となる)。
井野川氏:「Amazon Pay」で発生した不正取引には、Amazonが一定の条件のもとでお客さま、事業者さまそれぞれの損害を補填(ほてん)する仕組みがあります。Amazonアカウントから連携された配送先住所への取引であれば、万一チャージバックが発生した場合でも、必要な手続きを経ることで支払保証ポリシーの対象になり、事業者さまの取引リスクの軽減につながります。
「Amazon Pay」導入効果⑤
- 「Amazon Pay」は世界水準のシステムで不正取引を検知するため、事業者側の不正取引に関する確認作業などを軽減できる
- 「Amazon Pay」経由の注文は、クレジットカード情報の非保持化を実現できる
- 「Amazon Pay」はAmazonマーケットプレイス保証の対象。「Amazon Pay」で発生したチャージバックは、Amazonが一定の条件のもとで事業者への対象取引の入金を保証する
Amazon Payの新バージョン「CV2」への移行がもたらしたさまざまな効果
井野川氏:以前のバージョンはウィジェットとして住所情報・クレジット情報をサイト内に埋め込む実装が必要でしたが、「Amazon Pay」の新バージョン「CV2」では、「Amazon Pay」が実装されている事業者さまのサイトでは、Amazon側で表示するページ上で「配送先住所」も、「支払い方法」を、確認(または変更)するという購入フローに統一されました。
また、「Amazon Pay」のUIに関するエラーメッセージも、統一した内容をご案内し、購入者の方がどのサイトで購入した際にも同じUXを提供しています。これらの結果として購入者の買いやすさにつながり、ひいては、事業者さまの売り上げをしっかりと担保できるようになります。
末吉氏:ナラカミーチェジャパンではすでにCV2への移行を終えました。以前は「Amazon Pay」ボタンのサイズは4種類からの選択でしたが、CV2では事業者側で自由にサイズの変更が可能になりました。以前はカート画面内の「Amazon Pay」決済ボタンを目立たせることができませんでしたが、CV2によって目立つ形で表示できるようになり、「Amazon Pay」の利用が大きく伸びた一因だと感じています。
CV2移行に伴って、「Amazon Pay」利用促進につながるバナーを設置しました。このバナーは、Amazon側で表示されるコンテンツが管理されているので、新たなキャンペーンが開始されれば自動的にバナーも表示内容が切り替わるので運用の手間がないのも魅力的です。
また、「Amazon Pay」利用者に向けたメルマガも強化しました。メールの開封率は他のメルマガに比べてとても高い結果が出ています。今後もイベントやキャンペーンなどを展開する際には、メルマガを通じてしっかりと訴求し成果につなげていきたいと考えています。
「Amazon Pay」導入効果⑥
- CV2実装により、UIの統一感が生まれ、顧客は直感的にわかりやすく・使いやすく・買いやすくなった
- カート内に「Amazon Pay」利用促進を告知するバナーを実装。自動的に変わるため、運用に手間がかからない
新規顧客獲得や販売機会ロスの軽減をかなえる「再オーソリ機能」「Web接客機能」
井野川氏:CV2は再与信作業を自動で行う「再オーソリ機能」も備えています。再オーソリの期間は通常30日間ですが、ナラカミーチェジャパンさまが利用されているECプラットフォーム「ecbeing」では、「再オーソリ機能」を標準搭載しているので、注文から発送まで30日以上の期間がある予約商品でも「Amazon Pay」が利用できます。この機能によって、新規顧客の獲得や販売機会のロス・軽減などが期待できます。
末吉氏:この機能が使えるようになったことで、予約注文の際に、お客さまが予約を取りやすくなるため、ナラカミーチェジャパンとしても先の売り上げを見通しやすくなるのは大きな利点になります。現在、「再オーソリ機能」の導入について検討しているところです。
井野川氏:このほか、「Amazon Pay」には「Web接客型Amazon Pay」という導入方法もご提案しています。たとえば、購入者が住所などの情報入力ページに遷移した際に、入力内容の多さから離脱しようとするのを防ぐために、ポップアップ画面でAmazonアカウントの情報を使って簡単にエントリーフォームを埋めて、すぐに購入ができる旨を伝える。これが「Web接客型Amazon Pay」です。
事業者さまのなかには、この機能を活用することで、2割から3割程度のお客さまの離脱を防げたという結果も出ています。「Amazon Pay」のさまざまな機能を組み合わせて、自社ECの事業成長に役立てていただきたいです。