楽天グループのAI活用が大きな成果を上げている。2025年度(2025年1~12月)のAIによる利益貢献は255億円に達し、2026年度(2026年1~12月)は315億円の貢献を見込むという。
楽天グループは2025年度の決算説明会で、グループ全体で推進する「AI-nization(AI化)」の具体的な成果と今後の戦略を明らかにした。AI活用による利益創出額が当初目標を大きく上回ったことを報告。「楽天市場」における検索体験の刷新、広告の自動化、AIエージェントの導入がもたらした成果を説明した。
2025年度のAI利益貢献は255億円、2026年度は315億円へ
説明会冒頭で三木谷浩史会長兼社長は、2026年度から全事業部門に「チーフAIオフィサー」を設置する方針を示した。各事業部がより専門的かつスピーディーにAI活用を推進する体制を整え、AIと事業成長の統合を加速させる狙いがある。
AI関連の動向の説明は、ティン・ツァイCDO(チーフ・データ・オフィサー)が担当。楽天グループ全体でのAI活用による利益創出額は、当初目標の210億円を上回る255億円に達したという。ユーザー体験(UX)の向上による売上増加と、業務効率化によるコスト削減の両面が寄与したとしている。2026年度は、2024年度実績(105億円)の3倍となる315億円を見込む。
「楽天市場」の検索刷新、GMS創出効果は年255億円
「楽天市場」では、検索とレコメンデーション領域でAI活用が進む。従来の機械学習と比べ、ディープラーニングや大規模言語モデル(LLM)はユーザーの「意図」や「文脈(コンテキスト)」を理解する能力が高いと強調した。主な導入機能と成果は次の通り。
- 「パーソナライズ検索」と「人気検索」
AIがユーザーのブランド志向や好みを踏まえ、個々のユーザーに最適化した人気商品を検索結果に表示する機能。2025年に導入。これらの機能により、年間で255億円規模の流通総額(GMS)創出効果を見込む。 - 「ディスカバリーレコメンデーション」
ユーザーの過去の取引履歴や現在の文脈を踏まえ、商品だけでなく関連する動画や記事などのコンテンツを「無限スクロール」形式で提供する機能。導入後、アプリの滞在時間は導入前と比べて41%増加した。滞在時間の延長は、新たな販売機会や広告在庫の創出につながるとしている。
広告の自動化で店舗のGMSが5.1%増加
AIによる最適化は、出店店舗の広告運用にも影響を与えている。広告の配信面とタイミングをAIが自動最適化する「Rakuten Promotion Platform(RPP)」の導入により、店舗の流通総額で成果が出ていると説明した。2025年11月~12月の実績では、RPP経由の店舗あたりの流通総額が前年同期比で5.1%増加したという。
2025年10月に実装した「カテゴリワード広告」の事例も紹介した。検索キーワードをAIが自動的にブランドやカテゴリにマッチさせ、ディスプレイ広告を配信する機能で、広告主(店舗)によるキーワード選定などの手作業は不要。2025年12月の単月広告売上は1億5200万円に到達したという。
「Rakuten AI」体験ユーザーは再訪頻度が7倍
エンドユーザー向けの「Rakuten AI」の動向も説明した。「Rakuten AI」は2025年7月から本格提供を開始し、「楽天市場」のほか「Rakuten Link」「楽天トラベル」「楽天ビューティ」などでAI機能を実装した。2025年12月からは、「楽天市場」アプリの全ユーザーに向けてAIエージェント機能「Rakuten AI」を本格展開したという。
その成果として、「Rakuten AI」を体験したユーザーは、体験していないユーザーと比べて「楽天市場」の再訪頻度が7倍高いことが明らかになったとしている(集計期間:2025年11月26日~2026年1月26日)。
また、購入後のカスタマーサポートの高度化に向け、顧客サービスエージェント「Raptor(ラプター)」の展開も進める。従来のチャットボットが固定シナリオ(対話フロー)に依存していたのに対し、「Raptor」は生成AIの柔軟性を生かしてユーザーの多様な質問意図を理解する。チャットに加え音声対話にも対応し、自動解決率と顧客満足度の向上につながっているという。「Raptor」の導入により、2026年度は通期で43億円の利益向上を見込む。
自社開発LLM「Rakuten AI 3.0」でコスト競争力を強化
楽天グループのAIサービスを支える基盤として、2025年12月に発表した自社開発の大規模言語モデル「Rakuten AI 3.0」にも言及した。
「Rakuten AI 3.0」は楽天独自のデータで学習し、楽天グループのユースケースに最適化した高性能・低コストのモデルだという。他社の有力モデルと比べ、楽天のエコシステム内での利用においては、コストを10分の1に抑えつつ、世界トップクラスの日本語処理能力を実現しているとしている。
将来的には、「Rakuten AI」を楽天の各サービスをつなぐ基盤として育て、エコシステム内のクロスユース拡大につなげる考えだ。
2026年は楽天とテクノロジー業界全体にとってAIの重要な年。引き続き、高いインパクト、高い効率性、高い投資対効果を持ってAI業界をリードしていく。(楽天グループ ティン・ツァイCDO)
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