休業者が上限1日1.1万円を直接申請できる個人向け「新型コロナ対応休業支援金・給付金」、対象者は? 条件は? 申請方法は?
新型コロナウイルス感染症の影響で勤務先から休業させられたものの、勤め先から休業手当を受け取れないといった労働者が直接、生活資金を申請できるようにする労働者向けの給付制度の詳細を、厚生労働省が公表した。
名称は「新型コロナウイルス感染症対応休業支援金・給付金」(新型コロナ対応休業支援金)。新型コロナウイルス感染症、そのまん延防止措置の影響で、勤務先の中小企業から休業させられ、休業中に賃金(休業手当)を受けることができなかった労働者個人に対して、支援金・給付金を支給する制度。
中小企業の選択によって雇用調整助成金を活用しない企業から休業手当を受け取れないといった労働者が直接、現金を申請できる仕組みで、中小企業の被保険者(労働者)に対し休業前賃金の80%(1日上限1.1万円)を休業実績に応じて支給できるようにする。なお、支援金・給付金は非課税のため、所得申告は不要。
労働基準法26条では、業績悪化などによる従業員への休業要請など「使用者の責めに帰すべき事由」で従業員を休業させる場合、平均賃金の60%以上の休業手当を支給しなければならないと規定。事業者に対しては、「新型コロナウイルス感染症対応休業支援金・給付金の支払いによって休業手当の支払義務が免除されるものではありません」とし、次のように事業者へ要請している。
労働基準法上、休業手当の要否にかかわらず、経済上の理由により事業活動の縮小を余儀なくされた事業主に対しては、雇用調整助成金が、事業主が支払った休業手当の額に応じて支払われます。こうしたことも踏まえ、事業主の皆様には、雇用調整助成金をご活用いただき、雇用維持が図られるよう努めていただくようお願いします。
対象労働者・対象事業主
2020年4月1日から12月31日までの間に、事業主の指示を受けて休業(休業手当の支払いなし)した中小企業の労働者。雇用保険に加入していない学生アルバイト、日本国内で働く外国人の労働者、技能実習生なども対象となる。
休業開始時点で、原則として以下の「資本金の額・出資の総額」「常時雇用する労働者の数」のいずれかを満たす「中小事業主」にて勤務していたことが必要になる。
申請方法
郵送かオンライン。7月10日(金)に郵送での受け付けを始めた。オンラインについては現在、システム開発を進めている。
郵送受付先
〒600-8799
日本郵便株式会社 京都中央郵便局留置
厚生労働省 新型コロナウイルス感染症対応休業支援金・給付金担当 行
支援金額の算定方法
支援金額=休業前の1日あたり平均賃金×80%×(各月の日数(30日または31日)-就労したまたは労働者の事情で休んだ日数
※1日あたりの支給額は1日1万1000円が上限
休業前賃金の日額は、原則として過去6か月のうち任意の3か月分の賃金を90で除して算定(上限1万1000円)する。「休業前」の賃金は、休業開始月より前に支払われた賃金を指す。
休業前賃金を確認できる書類は、「賃金台帳」「給与明細」「賃金の振込通帳」の3種類。「なるべく事業主に協力していただき、賃金台帳により休業前賃金の証明を提出していただくようお願いします」(厚生労働省)としている。なお、各種控除前の金額が不明の場合、控除後の金額で給付額を算定することになる。
必要な書類
- 申請書
- 支給要件確認書
- 本人確認書類(運転免許証などの本人確認書類の写し)
- 口座確認書類(振込先口座を確認できるキャッシュカードや通帳の写し(口座番号および名義が確認できる通帳を開いた1ページ目と2ページ目))
- 休業開始前賃金および休業期間中の給与を証明できるもの(振込先口座を確認できるキャッシュカードや通帳の写し(給与明細などの休業前および休業中の賃金額が確認できる書類の写し)
※ 事業主の指示による休業であることなどの事実を確認するもの。事業主およびび労働者それぞれが記入の上、署名
※ 事業主の協力を得られない場合は、事業主記入欄が空欄でも受付(この場合、法律に基づき労働局から事業主に報告を求める)
支給申請の期間
申請の締め切りは以下の通り。
申請から給付までの期間
申請後、支援金集中処理センターにおいて審査を行う。書類が整っている場合に、概ね2週間程度で支給決定(支給完了)、または不支給を決定する。
郵送申請の場合は休業者の住所または代理申請した事業主の住所に支給決定・不支給決定通知書を送付。支給決定通知から入金まで数日要することがあるとしている。
なお、申請開始直後は申請が集中することが考えられるため、立ち上げ当初は支払いまで2週間以上かかる可能性があるとしている。
相談受付
新型コロナウイルス感染症対応休業支援金・給付金コールセンター
- 電話番号:0120-221-276(月~金 8:30~20:00/土日祝 8:30~17:15
特に注意が必要な点
事業主が休業証明に協力しない場合の個人からのみの申請について
労働者が事業主に申し出たものの、休業証明を拒むようなケースが生じた場合、申請時にその旨の申告を要請している。具体的には「支給要件確認書」の事業主欄の事業主名欄に事業主の協力が得られない旨とその背景となる事情を記載してほしいという。
こうした場合、労働局から事業主に対して報告を求め、事業主から回答があるまでは審査ができないことになるという。
複数の事業所で勤務し、その複数事業所が休業している場合
複数事業所の休業について申請可能。ただ、申請時に複数事業所分の情報をまとめて申請する必要がある。
たとえば、A事業所とB事業所の2か所で働き両事業所分を申請する場合、A事業所分とB事業所分まとめての申請を要請している。1つの事業所の分を先に申請し、後からB事業所分を申請しても無効になるという。
なお、複数事業所申請は通常の申請書とは異なり、郵送での手続きのみになるという。複数事業所用の申請様式や受付開始時期は準備が整い次第公表する。
偽りの申請について
偽りその他故意の不正行為により」新型コロナウイルス感染症対応休業支援金・給付金」の支給を受けた場合、労働者に対して支給を受けた額に加え、支給額の2倍まで(合計し、最大で支給額の3倍)の額、年3%の割合の延滞金を請求することがあるという。