コロナ禍でEC売上増! アダストリアのアパレルオンライン接客事例とは
「グローバルワーク」「ローリーズファーム」などのアパレルブランドを展開するアダストリアの2020年3-5月期(第1四半期)におけるEC売上高は前年同期比25.7%増の134億円で着地。コロナ禍で実店舗売上が落ち込んだ影響もあり、国内売上高に占めるECの比率(EC化率)は同23ポイント増の42.8%、自社ECが占める割合も同12.7ポイント増の22.7%まで拡大した。「実店舗休業中に自社EC『.st(ドットエスティ)』に注力」したというアダストリアが「接客」を軸に展開したコロナ禍の取り組みとは――。
新型コロナウイルス感染症の影響が直撃した3-5月期におけるアダストリア単体の売上高は同56.5%減の284億4400万円。新型コロナウイルス感染症拡大に伴う害宿自粛、商業施設の休業・営業時間短縮などが響いた。
こうした環境下で気を吐いたのがEC事業。大幅増収に加え、自社ECサイト「st(ドットエスティ)」の会員数は、2020年2月期末からの3か月で20万人増えた。自社ECサイトの売上拡大、会員増のけん引役となったポイントは3点ある。
スタッフによるスタイリング写真の投稿強化
2018年に始めた、スタッフ個人がスタイリングを投稿する「STAFF BOARD」(スタッフボード)。参加スタッフ数を約1.5倍に増やし、スタイリングコンテンツを拡充した。
従来より、店舗で実際に商品を見てからECで購入するという方も多く、外出自粛によりオンラインの情報だけでご判断いただかなければならない状況下、商品の着用感・使用感を分かりやすく伝えるための対応を強化いたしました。(アダストリア)
投稿数に加え、投稿コンテンツ経由の売り上げが大幅にアップしたという。では、実店舗休業中などのショップスタッフによる投稿を実現したのか。
アダストリアは自宅待機中のショップスタッフへ、EC倉庫から新作商品を配送。スタイリング投稿を継続できるようサポートを行った。そして、ショップスタッフは自宅からスタイリング写真の投稿を実施したという。
感染予防のためEC撮影スタジオでのモデルを使用した撮影は休止していたものの、スタッフの着用画像をECサイトの商品ページにも活用し、代替したという。
「STAFF BOARD」はバニッシュ・スタンダードが提供する「STAFF START」の導入で実現。スタイリング経由の売り上げをデジタル上の個人売上として計測し、可視化。一部スタッフは、個人のInstagram(インスタグラム)とも連携できる仕組みになっている。
Instagramを通じたオンライン接客
ショップスタッフが店舗や個人のInstagram(インスタグラム)アカウントでLIVE配信を行うオンライン接客が加速したという。
閲覧者からのコメントに対してリアルタイムで回答。商品紹介、着回しの提案、着用感を動画でわかりやすく説明することで、ECでの買い物の不安を解消。「店頭さながらの接客をオンライン上で行っている」(アダストリア)。
アダストリアは消費者とショップスタッフのつながりを維持・拡大・深化させる新しい接客サービスの場として、今後も継続するとしている。
このInstagramの投稿動画というコンテンツ資産をアーカイブして配信、商品画像をクリックすると、自社ECサイトで購入できるようにする「.st CHANNEL」(ドットエスティ・チャンネル)を5月29日にスタートした。
「st CAHNNEL」は、アダストリアグループの20以上のブランド、約1500名のショップスタッフが発信する商品・スタイリング・ライフスタイルなどを紹介するInstagram動画をまとめて閲覧できるアーカイブサイト。
レビュー投稿による「顧客の声」で接客
商品を購入した消費者のレビュー投稿を促し、商品閲覧者の購入を後押しできるようにした。、ECサイト上で訪問者の購入意欲を促進するための、購入者の「声」によるオンライン接客施策だ。
従来、10ポイントの付与にとどめていたレビュー投稿者へのポイント付与を、30ポイントに拡大するレビューポイントアップキャンペーンを実施。投稿件数は前年比150%以上に伸長したという。
大日本印刷が2020年1月に実施したアパレルの「買い物についてのアンケート」によると、20代消費者は、アパレルEC企業のマーケティング担当者が想定している以上に「ネットの評判」「商品購入者のレビュー」を重視している傾向があることが、調査結果からわかっている。