瀧川 正実 7/11 9:00

楽天グループは7月10日、ふるさと納税のポータルサイトで寄付に対してポイント付与を全面的に禁止する総務省の告示は違法であるとして、国を相手取り、告示の無効確認などを求める行政訴訟を東京地方裁判所に提起したと発表した。

訴訟の発端となったのは、総務省が2024年6月28日に公布し、2025年10月1日から施行を予定している告示改正。ふるさと納税のポータルサイトを通じた寄付について、事業者が寄付者にポイントを付与することを全面的に禁止した。

記者会見で楽天グループの百野健太郎副社長は「国会の議論を経ずに告示1つでルールを変えるのは、法治国家としておかしいのではないか」と述べ、行政手続きの正当性を問う姿勢を示した。

楽天、「自治体負担ゼロ」で市場を創出、10年の官民連携を覆す「過剰規制」

楽天グループは2015年に「楽天ふるさと納税」を開始。「楽天市場」の仕組みを活用し、自治体の寄付募集を支援してきた。「楽天市場」のポイント付与サービスの仕組みも「楽天ふるさと納税」へ活用し、消費者の利便性、寄付促進に寄与してきたとする。

総務省の「ふるさと納税は“寄付”であってECではない。ポータルサイト側からの手数料徴収などの観点から、自治体の自由を妨げる」といった見解について、楽天グループは2019年から自治体に負担を求めることなく、すべて楽天側の費用負担で実施してきたと反論。「楽天市場」では基本1%分のポイント原資は出店者が負担するが、「ふるさと納税」を募集する自治体の場合、その原資は楽天が負担している。

楽天が「ふるさと納税」のポイント禁止で国を提訴。総務省の告示は「官民連携の努力や工夫を一方的に否定するもの」
2024年8月の会見で示したポイント負担に関する説明資料

松村亮常務執行役員は次のように説明する。

ポイントは「楽天ふるさと納税」固有のものではなく、「楽天市場」のサービスの一環として、通常のショッピングと同様のルールで付与している。原資は2019年からすべて楽天グループの負担で賄っており、自治体に負担をかけていない。

楽天グループ 松村亮常務執行役員
松村亮常務執行役員

 

続けて、百野副社長は、「楽天グループは10年以上にわたって、地方を元気にしたいという思いで、自治体と二人三脚で地方創生に取り組んできた。今回の告示は、そうした官民連携の努力や工夫を一方的に否定するものだ」と強い憤りを示した。

楽天は、訴訟における主な主張として次の3点をあげている。

過剰な規制である

総務省はポイント付与競争の「過熱化」を禁止の理由としているが、楽天側は「仮に過熱化の事実があったとしても、付与するポイントの割合に上限を設ければ十分であり、一律に全面禁止する必要性はない」と反論。また、クレジットカード決済に伴うポイント付与が認められていることとの不均衡を指摘し、「ポータルサイト事業者の営業の自由(憲法22条1項)を過剰に規制するものだ」と主張している。

法律の委任の範囲を超えている

「ふるさと納税」の根拠法規である地方税法が総務大臣に委任しているのは、あくまで「寄付の募集方法」に関する事項。国民の権利義務に制約を課すことまでは委任されていないと指摘する。「本来、ポイント付与の規制は国会での議論を踏まえた法律の改正によって定められるべき。法令による具体的根拠がないまま告示で定められたのは手続きとして問題がある」としている。

総務大臣の裁量権の逸脱・乱用

上記の理由から、今回の告示改正は、総務大臣に与えられた裁量権の範囲を逸脱、または濫用したものであり、違法・無効であるとしている。

楽天が「ふるさと納税」のポイント禁止で国を提訴。総務省の告示は「官民連携の努力や工夫を一方的に否定するもの」
訴訟の概要

「ふるさと納税」寄付拡大に寄与したポータルサイトのポイント付与、他のプラットフォームとの連携は?

「ふるさと納税」の転機となったのは、楽天が「楽天ふるさと納税」をスタートした2015年。2016年度の住民税の「ふるさと納税」に関する特例控除の上限が個人住民税所得割の1割から2割に引き上げられ、「ワンストップ特例制度」が創設された。

「楽天市場」の仕組みで利用できる「楽天ふるさと納税」も同時期にスタートし、手間をかけることなくECプラットフォームで「ふるさと納税」が利用できることになったのは、「ふるさと納税」利用拡大に大きく貢献してきたと言える。

楽天が「ふるさと納税」のポイント禁止で国を提訴。総務省の告示は「官民連携の努力や工夫を一方的に否定するもの」
「楽天ふるさと納税」について

松村常務は、「ふるさと納税」が地方の関係人口の創出や地場産業の振興、地域経済の活性化に多大な効果をもたらしていると強調し、「今回の規制は、こうした地方創生のエンジンを止めてしまいかねない」と懸念を示した。

楽天は告示改正に反対するオンライン署名活動を2024年6月から実施。2025年3月には295万件を超える署名を内閣総理大臣に提出した。

「ふるさと納税」のポイント付与を巡る動き
「ふるさと納税」のポイント付与を巡る動き

百野副社長は、「これは地方創生、日本の消費者、そして法治国家として正しい手続きとは何かを問う訴訟だ」と、司法の場で正当性を訴えていく考えを示した。

百野健太郎副社長
百野健太郎副社長

なお、現在のところ「ふるさと納税」を提供する他のプラットフォームとの接触や連携はないとしたが、「ふるさと納税へのポイント付与禁止」に関する事業者連携の可能性は否定していない。

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