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DeNAグループに入って以来、2019年まで右肩上がりで成長を続けていた「横浜DeNAベイスターズ」。2019年の来場者数は過去最高の228万人と、グループに入る前に比べて観客動員数を約2倍に伸ばした。「球場は野球好きが集まる場所という固定概念を捨てて、家族や友だち、同僚と気軽に集まって楽しめる場づくりを徹底した」と語るのはDeNAベイスターズ 事業本部 MD部部長の原惇子氏。観客動員数を伸ばすために取り組んできたことや、ビジネス成長をけん引したグッズ販売の事例を解説する。

チケット完売でなく球場に来てもらうことがゴール

DeNA横浜ベイスターズ(以下、ベイスターズ)はチケットの完売でなく、実際に球場に足を運んでもらうことをゴールに、さまざまな施策に取り組んでいる。来場者が増えることで球場に熱気が生まれることはもちろんだが、理由はそれ以外にもある。原氏は次のように説明する。

プロ野球の収益源は、①チケット収入②放映権販売③選手のユニフォームや球場内への広告④グッズや飲食による売り上げ――の4つに大別でき、観客数が増えると自ずとグッズ売上や広告価値も高まる関係にある。観客数にひも付いて各種の売り上げが増えるビジネス構造のため、観客動員数が非常に重要になる。(原惇子氏)

横浜DeNAベイスターズ 事業本部 MD部 部長 原惇子氏
横浜DeNAベイスターズ 事業本部 MD部 部長 原惇子氏

2020年はコロナ禍の人数制限により観客動員数が伸び悩んだが、2019年シーズンは年間の座席稼働率が98.9%と極めて高い水準を維持している。

ただ、ベイスターズが実施した神奈川県在住者を対象にした調査では課題も浮かびあがっている。

回答対象者のうち横浜ベイスターズのファンと回答したのは15%。一方で応援しているチームが特になく、横浜スタジアムを訪れたことも、今後訪れる意向もない方は実に56%にもなった。神奈川県の人口は900万人と恵まれた環境ではあるものの、過半数以上がベイスターズや野球に全く接点がない層。この数字に対し危機感を持っている。(原氏)

その打開策の1つとしてベイスターズが長年取り組んでいるのが、「『コミュニティボールパーク』化構想」だ。

野球に興味がない人にも足を運んでもらえる球場に

「『コミュニティボールパーク』化構想」とは?

一言でまとめれば、横浜スタジアムを、「単なるプロ野球観戦の場」から、「プロ野球に興味がない人でも楽しめる場」へと変革する計画ということになる。

たとえば、2019年に誕生した「NISSAN STAR SUITES(日産スタースイート)」もその一環だ。個室で食事を楽しみながら試合観戦できる特別席で、専用のバルコニーからは横浜の街を一望できる。ビジネス用途としても好評だという。

スタンドエリアではより多様なニーズに応え、友人や家族などグループ観戦向けのボックスシート席やビールサーバー付きの席、靴を脱いで観戦できるボックスシート席なども設けられている。

「NISSAN STAR SUITES(日産スタースイート)」
「NISSAN STAR SUITES(日産スタースイート)」©YDB

このほか、オリジナル料理の提供やイニング間のプレゼント投げ入れ、試合勝利時の花火打ち上げなど、野球のルールを知らなくても楽しめる企画を多数用意している。

また、試合がない日には早朝にグラウンドを解放し自由にキャッチボールする場所を提供したり、横浜スタジアムの外周でオフィシャルパフォーマンスチームやマスコットによるイベントを催したりと、試合以外での接点づくりにも取り組んできた。

集客に苦戦する春先ナイターが“大入り”のワケ

前述した取り組みに加え、より集客効果を狙ったスペシャルイベントも行ってきた。とりわけ4月~5月の平日ナイターは、新年度の始まりと重なることや、ナイター観戦するには肌寒い時期であることから、客足が鈍る傾向にある。そのような状況を払拭する取り組みとして2017年にスタートしたのが、「BLUE☆LIGHT SERIES」だ。

このイベントは、春先の平日ナイター3試合で大入りを達成するために立ち上げた企画。既存ファンかつ30~40代の働く男女をターゲットとして、翌年以降の集客につなげるため、SNSでの情報拡散を狙ってイベントの中身を設計していったという。

横浜ベイススターズ 「BLUE☆LIGHT SERIES」
「BLUE☆LIGHT SERIES」©YDB

話題性を重視したゲストを招き、観客にはLEDで青く光るライトを配布。試合後にはステージイベントに合わせて観客もライトを振って一緒に歌って楽しめるようにした。その様子はSNSで次々と拡散。春先の平日ナイターにおける、集客の起爆剤として恒例イベントになった。(原氏)

このほか、ベイスターズでは年間10種類ほどのスペシャルイベントを開催。女性に特化した企画を実施する「YOKOHAMA GIRLS☆FESTIVAL」や、“横浜・夏の一大イベント”として、球団創設初年度の2012年より実施している「YOKOHAMA STAR☆NIGHT」など、短期的な動員効果や中期的なマーケティング効果を狙ったイベントを繰り返し開いているという。

観戦価値を高める商品開発。グッズ売上は3倍に

そのような取り組みだけでなく、グッズ販売などを展開するMD事業の強化も忘れてはならない。MD事業の売り上げは、9年間で3倍に増えた。これは、観客動員の伸び率をも上回る成果だ。

好事例の1つとして、2017年に日本シリーズ進出を懸けた試合での取り組みがある。その試合で、来場者に青いタオルマフラーを配り、「ベイスターズと言えば青いタオルマフラーを持って応援」というスタイルが定着。以後、試合観戦に必須のグッズとしてタオルマフラーの売り上げが飛躍的に伸びた。

横浜DeNAベイスターズのタオル
横浜DeNAベイスターズのタオル ©YDB

このほかにもMD部では、試合の象徴的な写真を販売する「BAY☆LIVE PHOTO」や、その日の選手のコメントをモチーフにしたTシャツやタオルをECで販売する「ハイライトグッズ」や、選手がデザイン・企画した「PLAYER PRODUCE」商品などを展開。さらにオフシーズンにはチームの裏側を描いたドキュメンタリー映像作品の映画放映・ディスク販売するなど、手掛ける内容は多岐に渡る。

横浜DeNAベイスターズのハイライトグッズ例
ハイライトグッズ例 ©YDB

試合後の熱量冷めやらぬうちの商品を届ける。試合日以外にもベイスターズを身近に感じてもらう。オフ期間中次のシーズンが待ち遠しくなるような映画を提供する。これらすべてに共通しているのは、「目先の売り上げだけでなく、ファンとのコミュニケーションツールとなることだ。結果的に、中長期的なファン愛の形成にも貢献してきた」(原氏)。実際、売り上げ増の原動力となっているという。

また、横浜スタジアム以外にも接点を作れるMD事業の特性を活かし、既存ファンに対する取り組みだけでなく、新規顧客開拓の役割も担っている。ベイスターズの選手やマスコットがパッケージになったスーパーマーケット向けのタマゴやLINEのスタンプなどを通じ、野球に関心のない層に対して意識的にアプローチしているという。

守りから攻めに転じたデジタルの取り組み

在庫リスクなくタイムリーに商品を投下

EC事業においては、受注販売にも力を入れている。グッズ販売は試合の勝敗や選手の記録達成などに左右されるが、それを事業者側で把握・コントロールすることはできない。そこで在庫リスクを抱えず、大きな記録達成や突然の引退イベントなど熱量の高いタイミングで商品を投下できるよう、商品の性質によって受注販売に舵を切っているものもあるという。

今のところMD売上におけるEC比率は約30%だが、「攻めのEC」(原氏)に転じ、売上比率を伸ばしていく考えだ。検討しているのは、チケット購入者とID連携を進め顧客の来場履歴に応じたグッズのリコメンド機能や、試合日に混雑する店舗ではなく、事前にECで注文した商品を球場内で受け取れる専用ブースの設置などだ。

EC事業だけでなく、観戦体験のデジタル化も進めている。2020年はコロナ禍で観客動員に制限がかかるなか、ZOOMを利用したオンラインでの観戦イベント「オンラインハマスタ」を展開し、多い日で1000人の視聴があった。

「オンラインハマスタ」のようす
「オンラインハマスタ」のようす ©YDB

今後、ベイスターズがさらなるビジネス成長を遂げるには、試合の日や球場内のみで売り上げを作る従来の発想から抜け出す必要がある。そこで近年私たちが進めているのが、球場内と球場外、試合日と非試合日を掛け合わせたそれぞれの領域で市場を作ることオンラインハマスタは、横浜スタジアム以外でもプラスの興行収入を得る新たな取り組みの一つになった。(原氏)

さらに、KDDIとの「ビジネスパートナーシップ」の一環としてバーチャル空間上で横浜スタジアムを構築し、スマートフォンやパソコン、VRデバイスを使って球場の雰囲気を味わえる観戦体験「バーチャルハマスタ」の企画にも昨年度より取り組んでいる。これは5G×VR時代を見据えたトライアルでもある。

スポーツビジネスが完全な状態に戻るには時間がかかるのではと不安もあるが、コロナ禍という逆風の中だからこそ始められる挑戦や発見もある。ここから新たな10年に向けて、新たな市場の開拓に挑戦していきたい。(原氏)

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