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日本製コーヒー器具の販売からコーヒー店の運営まで、幅広くコーヒー事業を展開する「Kurasu」。海外のコーヒー好きからの信頼も厚く、2013年の創業以来、ブランドを大きく成長させてきました。

「Kurasu」が国境を越えて支持されるのはなぜなのか。どのようにファンを育て、今後どうビジネスを成長させようと考えているのか。ECブランディングを手掛けるフラクタの河野貴伸氏が、「Kurasu」の創業者で代表を務める大槻洋三氏と語り合いました。

「Kurasu」のECサイト
「Kurasu」公式サイト(https://jp.kurasu.kyoto/

他に先駆けて日本のコーヒー文化を発信

河野貴伸氏(以下、河野氏):まず「Kurasu」について教えてください。

大槻洋三氏(以下、大槻氏):私たちはコーヒー器具やコーヒーの卸・小売り・販売を、国内外で手掛けています。2013年にECを立ち上げて、2016年には京都でコーヒー店を開きました。現在は京都に3店舗、シンガポールとバンコクに1店舗ずつ、計5店舗と、ECサイトを運営しています。

合同会社「Kurasu」 代表取締役社員 大槻洋三氏
合同会社Kurasu 代表取締役社員 大槻洋三氏
1984年生まれ、京都府出身。幼少期はニューヨーク、大学時代はカナダと人生の大半を海外で過ごす。日本で4年間勤めたゴールドマン・サックスを退職後、シドニーへ移住。2015年にオンラインストア「「Kurasu」(クラス)」をスタートし、海外向けに日本製ハンドドリップ用コーヒー器具の販売を始める。

河野氏:実は、京都の店舗に何度かうかがったことがあるんです。「Kurasu」にはブランドの思想や取り組みに共感する部分がたくさんあります。ここまで成長するには大変だったことや苦労したこともあったと思うんですがいかがですか?

株式会社フラクタ 代表取締役 河野貴伸氏
株式会社フラクタ 代表取締役 河野貴伸氏
Shopify 日本初代エバンジェリスト。株式会社Zokei 社外CTO。ジャパンEコマースコンサルタント協会講師。1982年生まれ、東京の下町生まれ下町育ち。「日本のブランド価値の総量を増やす」をミッションに、ブランドビジネス全体とD2Cブランドへの支援活動及びコマース業界全体の発展とShopifyの普及をメインに全国でセミナー及び執筆活動を展開している。

大槻氏:実はあまり大変だったという記憶はないんです。もともと金融業界で働いていて異業種からの転身だったので、ECサイトを立ち上げて商品が売れるまで3か月ほどかかったりはしましたが。目の前のことを1つずつクリアしていたら、今につながっていた感じです。

河野氏:マイルストーンが設定されていたので、行き当たりばったりで自分の首を絞めたり、苦労したりというのはなかったわけですね。

大槻氏:初めからコーヒーに絞れていたわけではなく、立ち上げ当初は、雑貨を全般に扱うECサイトでした。それで半年ほど運用してみて、売り上げの約7割がコーヒー器具だとわかったので、ニーズを掴んで日本製コーヒー器具の販売に特化したんです。

そこで、コーヒーのプロフェッショナルとして発信する方向に舵を切りました。当時はまだSNSでもコーヒーに特化したアカウントがほとんどなかったので、愛好家に見つけてもらいやすく、自然とファンが増え、成長していきました

洗練されたECの構築を1人で

河野氏: ECサイトは一貫してShopifyを使っているそうですね。いくつもあるプラットフォームの中でShopifyを選んだのはどのような理由からでしょうか。

大槻氏海外のお客さまが使いやすいものが良かったからです。ECサイトを開設した当時はシドニーに住んでいたので、日本以外の国の方に向けたECをやろうと思っていました。その先に日本に戻ったとしても越境ECサイトを運営したいと考えていたので、海外の方が利用するプラットフォームを中心に検討して、最終的に事業者側の操作が直感的で一番使いやすかったShopifyを選びました。

その当時は私1人で運営していたので、コーディング知識がなくてもプロフェッショナルなビジュアルのサイトを作れるのは、ありがたかったですね。

河野氏:その頃からShopifyも随分変わったと思います。アップデートを含め、使ってみて良かったと思うのはどんなところですか。

大槻氏:外部に依頼するケースもありますが、今でも基本的には自分たちでシステム周りを運用する体制なので、直感的に操作できるのは魅力です。アプリを追加することで作りたい導線やページを自分たちの手で作っていけるのが良いですよね。年に一度開かれるShopify Uniteも楽しみにしています。
※編注:Shopifyがパートナー企業向けに開催しているカンファレンスイベント

「Kurasu」で販売しているコーヒー器具

コロナ禍でEC売上げが2.2倍に

河野氏:2020年は営業自粛などコロナ禍で厳しいビジネス環境が続きました。そんな中でも「Kurasu」はEC売上げを2.2倍に伸ばしたそうですね。どのような施策に取り組まれたのですか。

大槻氏InstagramやYouTubeでバリスタやスタッフにコーヒーについて発信してもらいました。どのメンバーも無類のコーヒー好きでそれぞれプロフェッショナルなので、普段、店頭で発揮しているパフォーマンスをオンラインでも活かせないかと考えたんです。

この活動はブランディングや売り上げへの貢献はもちろん、店舗とオンラインそれぞれの相互理解が進んだ点においても大きな意味があったと思います。徐々に店舗にお客さまが戻ってきて、ここのところはスタッフによる発信を中断していたのですが、今また再開に向け準備を進めています。

コロナ禍に入って急遽ECを立ち上げるブランドも多い中、「Kurasu」の場合は以前からの積み重ねでECの土台を築けていたことはアドバンテージになりました。それ加えて、店舗の代わりに自宅でおいしいコーヒーを飲みたいと考える層にしっかりオンラインでアプローチできたことが、売り上げに寄与したと考えています。

「Kurasu」商品例
「Kurasu」で販売している商品例

ニッチでもいいから一番を追求すること

河野氏:どうしてもEC運用はテクニック論になりがちですが、日々の積み重ねや、ブランド計画を着実に実行する重要性を改めて感じました。ただ、売り上げが伸び悩んだり、思うような成果が出なかったり壁にぶつかることもあると思います。その壁を乗り越えるヒントがあれば教えてください。

大槻氏:ニッチでもいいから一番になれるカテゴリーや、そのブランドにしかないことを追求するのが大事だと思います。「Kurasu」で言えば、それは日本のコーヒー文化を海外に発信することです。それをピンポイントでやり続けたこともあって、ありがたいことに、海外の愛好家から日本製のコーヒー器具といえば「Kurasu」と連想してもらえることが増えました。

的を絞ってブランドらしさを追求して発信していれば、何かしら反応があるはずです。反応があると楽しくなっていきますし、売り上げも自然と伸びていきます。それによってEC運営をもっと楽しめるようになるのではないかと思います。

EC発の「Kurasu」が実店舗を持った理由

河野氏:EC拡大の一方で2016年には京都にリアル店舗を初出店されました。店舗を持とうと思ったのはなぜですか?

「Kurasu」実店舗
「Kurasu」が京都で構える実店舗

大槻氏:お客さまから店舗に関する問い合わせが増えたのが一番の要因です。京都から世界にコーヒーカルチャーを届けるというコンセプトで発信してきたこともあり、ECを利用してくださっている海外のお客さまから「今度、京都に行くからお店を訪ねたいんだけど、どこにあるの?」と聞かれるケースが増えて。

また、京都にはいわゆる老舗の喫茶店は多くありますが、「Kurasu」のようなスタイルで運営している新興のコーヒー店はあまりないんですね。それでシドニーと日本の文化を融合したコーヒー店を開きたい、お客さまとオフラインで交流できる場を持ちたいと考え、シドニーから京都に移り住むタイミングで、お店を開くことにしました。

河野氏:自然な流れだったんですね。

大槻氏:そうなんです。当時、EC利用の大半が海外のお客さまで、京都に住んでいらっしゃる方にはまったく無名のコーヒー店だったんですが、海外のお客さまが京都旅行に訪れた際に立ち寄っていただくことがとても多く、「あのコーヒー店はなぜ外国人の訪問が絶えないんだ」と注目され、メディアに取り上げられ、地元にも広まっていきました

「Kurasu」での大槻氏
店頭でコーヒーを入れる大槻氏

河野氏:直近では、新たに焙煎所を移転オープンする予定と聞きました。店舗はこれからも増やそうというお考えですか?

大槻氏:今の焙煎所の規模ですと作業が追いつかなくなってきたので、場所を移転し、焙煎機を増設して、もう少し工房寄りの店舗をオープンする予定です。

店舗は急激に増やそういうわけではなく、機会を見つつ関西を中心に出店できればと考えています。海外展開に関しても、東南アジアではコーヒー文化が急成長していることもあり、マレーシア、フィリピン、インドネシアなどで出店の計画が進んでいます。フランチャイズやパートナーシップ型で展開する予定です。

試してから導入するアプリを選定

河野氏:サブスクリプション機能を持つShopifyのアプリ「ReCharge」を早い段階から導入されているそうですね。類似のアプリがいくつかある中で、決め手は何でしたか。

大槻氏2014年からコーヒー豆の定期販売をしているのですが、当時はアプリの選択肢があまりなかったという理由もありますが、初回の決済と2回目以降の決済の日付を変更できるなど、使い勝手の良さも決め手になり、「ReCharge」を使っています。

河野氏:その他にも、色々なアプリを使いこなしていますよね。

大槻氏:今は、自動メールマーケティングアプリ「Klaviyo」や、カスタマーサポートサービス「Gorgias」、レビューアプリ「Judge.me」などを使っています。アプリ選定では、Shopifyユーザーのレビューを参考にしながら、実際に新しいアプリをいくつかインストールして、一番フィットしたものを導入するケースが多いです。

河野氏:使い勝手の良いアプリを抑えるだけでなく、しっかり運用されているところが、さすがだと思います。

大槻氏:良いアプリを選べるのは、私自身、英語ができるのが大きいかもしれません。インストールして使い始めて、もう少し深いところまで知りたいとか、ローカライズしたいという際に、外国語圏に住む開発者とチャットで質問できるので。

河野氏:英語でやりとりできるといいですよね。今後、Shopifyに期待することや要望はありますか。

大槻氏:都市圏ではすでに開催されていると思うのですが、京都など地方でもShopifyユーザーが集うミートアップがあると嬉しいですね。同じようなビジネスをしている方々と横のつながりを作り、お互いに情報交換できたらいいなと。Shopifyを選んでビジネスをされている方とは、お互いに分かり合えることも多いなと思っています。

新ブランド立ち上げ、海外ブランドの日本上陸を支援

河野氏:今後何か予定していることはありますか。

大槻氏:新ブランドの立ち上げを進めています。具体的には、日本の正規代理店として海外のコーヒーブランドを販売するための呼び込みを行います。

海外ブランドの方と話すうちに、日本展開の際、コミュニケーションが課題になっていることがわかりました。日本のマーケットは魅力的で進出したいけれど、言語の壁で頓挫したり、コーヒーを扱う商社はたくさんあるけれど、ブランディングを理解して、自分たちの商品の魅力を伝えてくれるパートナーが見つからなかったり。

そういった課題を抱えていることが分かったので、私たちの国内外のコーヒーネットワークやビジネスのノウハウを生かして、海外ブランドの日本展開をお手伝いできればと思っています。

今回立ち上げるブランドは、日本製のコーヒー器具を海外に販売したのと逆の発想で、海外のコーヒーブランドを日本に紹介する形で進めています。対日本のマーケットでのチャンスかなと思っていて。それが今年注力することのひとつです。

河野氏:楽しみですね。

大槻氏:実はもう1つあって。今「Kurasu」が出資して立ち上げた別会社で、アプリ開発を進めています。アプリではコーヒー好きが集うコミュニティを作ろうと思っていて、コーヒー系のコンテンツをキュレーションして発信したり、基準を満たしたコーヒーロースターさんをMAP上で検索できたり、またロースターさんからも情報発信できたり、といったコンテンツを準備しています

ゆくゆくはアプリ内での決済や、ロースターさんが直接コーヒー豆を販売できる機能も持たせられればと考えています。

もともと私には、日本のコーヒー文化を拡張し、世界中の人に知ってもらいたいという想いがあります。「Kurasu」の成長はもちろんですが、日本全国には素晴らしいコーヒー店やコーヒーロースターさんがたくさんあるので、今後、アプリを通じてそういった方たちとつながって、一層、日本のコーヒー文化に貢献できればと考えています。

河野氏「Kurasu」がコーヒーのプラットフォームとして人やお店をつなぐということですね。

大槻氏:おっしゃる通りです。

河野氏:「Kurasu」のこれまでとこれからについてお聞きし勉強になりましたし、改めて、ECの成長には、日々の運用や地道な積み重ねが重要であることも痛感させられました。読者の皆様にもそれが伝わって、チャレンジのきっかけになれば嬉しいですね。私自身もコミュニティなどを通じて活動のサポートができればと思います。本日はありがとうございました。

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清水美奈

フリーライター

1983年千葉県生まれ。写真週刊誌記者、PR会社勤務を経てフリーランス。現在は、紙・Web媒体のライティングや編集を中心に活動。「科学技術と社会、人の暮らしとの関係性」「オープンデータの活用」に興味・関心あり。

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