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Amazonはヘルスケア領域でもAI活用。AIエージェントで変わる健康管理+医療系ビジネスの未来とは

多くのテクノロジー企業がヘルスケア領域でのAI活用に乗り出しているなか、Amazonも同様の取り組みを強化しています。Amazonが新たに導入した、オンライン診療アプリでのAIツールについて詳しく解説します

Digital Commerce 360

8:00

過去10年にわたってヘルスケア領域でビジネスの拡大を推進してきたAmazonは、ヘルスケア領域でもAIエージェントの活用を進めています。診療サービスを提供する「One Medical」のアプリに導入したAIツール「Health AI」は、AIエージェントがユーザーの代わりにアクションを実行します。2025年初頭のベータ版提供を経て、現在は多くの人が利用できるようになった「Health AI」の特長に注目します。

診療AIアシスタント「Health AI」を本格提供

テクノロジー企業が臨床ケアにおけるAIの役割を拡大させているなか、Amazonもデジタルヘルス分野へのAIの取り組みをさらに深めています

2023年に買収した会員制診療サービスを手がけるOneMedical Groupの「One Medical」のアプリ内に新しいAIアシスタント「Health AI」を導入しました。「One Medical」は、オンライン診療と対面診療の両方に対応する、ハイブリッド型のプライマリケア(初期診療)サービスを提供しています。

AIエージェントがユーザーの代わりにアクション

「Health AI」は2025年初頭のベータ版提供を経て、現在は「One Medical」の会員が利用できるようになっています。「AIエージェント」として構築、今回のケースでは、会員と医療提供者のマッチング、検査結果の確認、処方薬の管理など単に情報を提供するだけでなく、ユーザーに代わってアクションを実行できます。

「Health AI」の活用イメージ(画像はAmazonのコーポレートサイトから追加)
「Health AI」の活用イメージ(画像はAmazonのコーポレートサイトから追加)

Amazonによると、「Health AI」は一般的な症状チェックツールとは異なり、カルテ、検査結果、処方せんといった既存の医療データを活用し、会員ごとの状況に合わせたレコメンデーションを提示します。

Amazonは「『Health AI』はOne Medical内の臨床の知見に優れた人材たち意見を取り入れて開発した」と説明。AIエージェントが患者と医療提供者の関係を「代替」するのではなく「補完」することを目的としています。また、会員情報のデータ保護については、米国の連邦プライバシー法に準拠しています。

「Health AI」は患者の既往症や服薬歴といった情報を活用したり、患者と医療提供者をつないだりする。ユーザーの個人情報は米国のプライバシー法に準拠している(画像はAmazonのコーポレートサイトから追加)
「Health AI」は患者の既往症や服薬歴といった情報を活用したり、患者と医療提供者をつないだりする。ユーザーの個人情報は米国のプライバシー法に準拠している(画像はAmazonのコーポレートサイトから追加)

「Health AI」の特長

Amazonは2026年1月に「Health AI」が「One Medical」のアプリ内で会員向けに公開したと発表。「Health AI」は、Amazon Web Services(AWS)内の生成AI特化型サービスで、機械学習プラットフォーム「Bedrock(ベッドロック)」上で提供されているAIモデルを活用して動作しています。

ユーザー1人ひとりにパーソナライズ

Amazonによると、「Health AI」は「症状、疾患、潜在的な治療法、およびウェルネスに関する質問に対し、24時間365日の健康ガイダンス」を提供。過去の健康上の悩み、検査結果、予防接種記録といった会員の履歴を参照することで、「Health AI」がよりパーソナライズした案内をします。また、診療予約の取得、緊急治療の推奨、オンラインで薬局から処方薬を購入できるサービス「Amazon Pharmacy(ファーマシー)」を通じて、処方薬を継続するための管理を行うことも可能です。

「Health AI」によるパーソナライズされた案内(Amazonのコーポレートサイトから追加)
「Health AI」によるパーソナライズされた案内(Amazonのコーポレートサイトから追加)

会員からのリクエストが対応範囲を超えた場合、AIエージェントは人間による入力が必要であることを通知できます。Amazonによると、メッセージ、オンライン通話、対面でOne Medicalのケアチームに連絡するためのオプションを会員にどのタイミングで提示すべきかをAIエージェントは理解しているとのことです。

患者と医療関係者のつながりをサポート

OneMedical Groupの最高医学責任者(Chief Medical Officer)であるアンドリュー・ダイアモンド氏は、患者と臨床医の関係は「極めて重要であり、代えがたいものである」と話しています。リリースのなかでダイアモンド氏は、「Health AI」は次のように会員をサポートし、医療提供者との関係を強化するために設計されたツールであると説明しています。

  • 自身の健康状態を理解する
  • 服薬など、定型的なタスクを管理する
  • 健康増進のためのケアプランを計画通りに進める
  • 「人間の臨床医によるケアと専門知識が必要なとき」にリレーションする

プライバシーはHIPAAに準拠

Amazonはプライバシー保護の取り組みについても強調しています。たとえば、「Health AI」とのチャットメッセージは、会員の公式な医療記録に自動的に追加されることはないとしています。

また、すべてのデータは暗号化され、米国の「医療保険の相互運用性と責任に関する法律」(HIPAA、医療情報の保護を目的とする法律)に準拠。ユーザーの健康情報を第三者に販売することはないそうです。

患者のヘルスケア情報を一元化

医療に関連するエコシステムを提供するAmazon Health Servicesの上級副社長であるニール・リンゼイ氏は、LinkedInで「Health AI」は「あなたの健康状態を包括的に理解している」ため、ほかのヘルスケアAIとは一線を画している――と投稿。このため、「複数の医療提供者から医療サービスを受けた記録をアップロードしたり、断片化されたユーザーの健康データをつなぎ合わせたりする必要がなくなる」とリンゼイ氏は説明しています。

同氏はまた、「ヘルスケア情報はあまりにも長い間、断片化されすぎていた」と付け加え、「Health AI」はすべてのヘルスケア情報を集約するための一歩であると説明しています。

Amazon Health Services 上級副社長 ニール・リンゼイ氏(画像はLinkedInから追加)
Amazon Health Services 上級副社長 ニール・リンゼイ氏(画像はLinkedInから追加)

ウェルネス分野のAI活用を強化する米IT企業

Amazonによる今回の発表は、他のテクノロジー企業各社が相次いで同様の発表を行っている、最近のAIエージェント活用のトレンドに沿った動きです。

OpenAIは、ウェルネスアプリや医療記録と連携する「ChatGPT Health」を2026年1月に発表。生成AIスタートアップのAnthropic(アンソロピック)も同年1月、医療提供者および消費者向けの医療支援AI「Claude for Healthcare」を導入しています。「Claude for Healthcare」は、HIPAAに準拠した環境下で運用されるツールです。

「ChatGPT Health」は、「ChatGPT」のサイドバーメニューから「Health」を選択すると利用できる(画像はOpenAIのコーポレートサイトから追加)
「ChatGPT Health」は、「ChatGPT」のサイドバーメニューから「Health」を選択すると利用できる(画像はOpenAIのコーポレートサイトから追加)

Amazonのヘルスケア事業拡大の歩み

AmazonによるヘルスケアAIエージェントの動きは、過去10年間にわたるAmazonのヘルスケア分野への広範な進出に基づいています。Amazonはオンライン薬局PillPackを7億500万ドルで買収、2020年には「Amazon Pharmacy」を立ち上げました。その勢いは継続し、2023年には34億9000万ドルでOneMedical Groupを買収しています。

現在、Amazon Health Servicesの一部となっている「One Medical」の初期診療サービスは「Amazon Pharmacy」と並んで運営されており、両者の間では限定的な統合テストも行われています。たとえば2024年にAmazonは、One Medicalの医師たちが、健康状態がハイリスクな高齢患者を診察する際、薬剤師に専門的な相談(コンサルテーション)ができるプログラムを試験的に導入しました。

One Medicalの会員向けの「Health AI」とは別に、Amazonは自社のヘルスケアサイト上で、より一般的なヘルスAIアシスタントも提供しています。そのベータ版ツールはOne Medicalの非会員にも公開されており、健康に関する一般的な質問に特化したAIツールになっています。

Amazonが公開している一般向けのAIヘルスケアアシスタント(画像はAmazonから追加)
Amazonが公開している一般向けのAIヘルスケアアシスタント(画像はAmazonから追加)

ヘルスケア領域におけるAI活用の是非

大手テクノロジー企業が臨床分野にAIの活用を拡大する一方で、ヘルスケアの現場でこの技術をどこまで活用すべきかという課題は残っています。

消費者は肯定的な反応

SalesforceのパートナーであるCustomertimesは、ヘルスケアにおけるAIに関する調査結果を2024年5月に公開しました。それによると、アメリカ人はいくつかの懸念を抱きつつも、ヘルスケア分野でのAI活用の拡大についてはおおむね楽観的であることが明らかになりました。

調査結果によると、回答者の62%が「近い将来にAIが医師に取って代わるとは考えていない」と答え、3分の2が「AIがいずれ特定の疾患の診断や治療において人間を凌駕する可能性がある」と回答しました。また、ほぼ同数の割合が「AIを信頼している」と回答しています。

これらの調査結果は多くのアメリカ人がAIを医療提供者にとって代わるものではなく、医療提供者をサポートするためのツールとして捉えていることを示唆しています。

調査では、回答者の3分の2が「AIが疾患の診断や治療で人間を凌駕する可能性がある」と考えていることがわかった(画像はCustomertimesの調査結果から追加)
調査では、回答者の3分の2が「AIが疾患の診断や治療で人間を凌駕する可能性がある」と考えていることがわかった(画像はCustomertimesの調査結果から追加)

医療従事者はAI活用に積極的

医療従事者も、臨床でのAI活用には慎重ながらも肯定的な見方をしているようです。2025年2月にSalesforceが発表した調査結果では、医療従事者の83%が「事務作業の負担が軽減されるのであればAIエージェントを使用したい」と回答しました。平均して、医療専門家は「AIが医師の事務作業を約30%削減できる」と見積もっています。

Salesforceのヘルスケア担当上級副社長兼ゼネラルマネージャーであるアミット・ハンナ氏は、リリースで次のように説明しています。

AIエージェントは、人手不足と膨大な事務作業に長年悩まされてきた医療業界を根本から変える可能性を秘めています。この『デジタルな労働力』が、医師や看護師、事務スタッフのパートナーとして効率を高め、より良い医療成果につなげることで、現場で働く人々の力を最大限に引き出してくれるはずです。(Salesforce ハンナ氏)

この記事は今西由加さんが翻訳。世界最大級のEC専門メディア『Digital Commerce 360』(旧『Internet RETAILER』)の記事をネットショップ担当者フォーラムが、天井秀和さん白川久美さん中島郁さんの協力を得て、日本向けに編集したものです。

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