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OpenAIが「エージェント型コマース」戦略を転換――直接決済から「アプリ経由」の支援へ

OpenAIは「ChatGPT」上の即時決済の修正を発表しました。今後は即時決済ではなく、アプリを通じた取引を支えるインフラとしての役割を果たすようになる見込みです

Digital Commerce 360

8:00

OpenAIが、「ChatGPT」上から消費者がECサイトの商品を直接購入できる「Instant Checkout(インスタント・チェックアウト、即時決済)」計画を修正しました。今後は、「ChatGPT」内に構築される「各小売事業者のアプリ」を戦略の中核に据える方針です。

現在、「ChatGPT」におけるショッピング体験は大きな転換点を迎えています。OpenAIは、チャット画面上で支払いを完結できる「Instant Checkout」の優先順位を下げ、代わりに各事業者が提供する「ChatGPTアプリ」を通じた決済体験を重視する方向へと舵を切ったと報じられました。

「Instant Checkout」のイメージ動画

OpenAIと決済大手のStripe(ストライプ)が共同開発した「エージェント型コマース・プロトコル(ACP)」は、今後も活用される見通しです。しかし、「ChatGPT」の回答画面に表示された商品リストからそのまま購入する仕組みではなく、今後はアプリを通じた取引を支える「インフラ」としての役割を担うことになります。

この流れを受け、大手小売のTargetは2025年11月、「ChatGPT」内で動作するアプリのβ版を公開。ほかにも結婚準備プラットフォームのThe Knot、DoorDash、Instacartといった有力企業も、OpenAIのアプリエコシステムへの参画を表明しています。

Targetの「ChatGPT」内で動作するアプリの利用イメージ画像(Targetのページに用意された動画からキャプチャ)
Targetの「ChatGPT」内で動作するアプリの利用イメージ画像(Targetのページに用意された動画からキャプチャ)
Targetの「ChatGPT」内で動作するアプリの利用イメージ画像(Targetのページに用意された動画からキャプチャ)

「ChatGPT」でのショッピング体験に何が起きているのか?

OpenAIの広報担当者は『Digital Commerce 360』の取材に対し、「販売事業者やユーザーの現状に即し、より価値ある体験を提供できるよう、コマースへのアプローチを進化させています」と回答しました。

この回答は、“「ChatGPTアプリ」を通じた決済体験への転換”を先行して報じたニュースメディア『The Information』の記事内容を裏付けるものです。OpenAIの広報担当者は、こう説明しています。

私たちは、「ChatGPT」での商品検索や発見の体験を素晴らしいものにすることを最優先しています。そのなかでACPは、購買プロセスのあらゆる場面でユーザーと販売者をつなぐ基盤となります。一方で、決済機能は各事業者の「アプリ」内へと集約し、よりスムーズな購入を可能にしていきます。

今回の戦略変更から、OpenAI側もある現実を認めたと言えます。それは、店舗ごとの在庫状況、売上税の計算、価格設定といった複雑な取引要素は常に最新である必要があり、各事業者が自ら管理するアプリを通じて対応する方が適切であるという点。今回の決定は、これまでの運用で得られた知見に基づく、現実的な改善を反映したものといえるでしょう。

「OpenAI」の戦略変更は、EC運営にどう影響するのか?

OpenAIの広報担当者は、「共に知見を積み重ねてきたパートナー企業に感謝すると共に、この分野での開発を継続し、さらなる詳細を共有できることを楽しみにしています」と説明しています。

この動きは、ECプラットフォーム大手Shopifyのハーレー・フィンケルスタインCEOの発言とも合致するものです。ShopifyやEtsyは2025年、「ChatGPT」の決済機能をいち早く導入した初期パートナーでした。

フィンケルスタイン氏は2026年3月3日に行われたカンファレンスで、AIショッピングにおいて「Shopify」が重視している点として、取引データの一貫性を保つこと、そのデータを「自社の強み」として守り抜くことが極めて重要であると強調。そして、独自のデータを管理し続けることが、長期的な競争力にいかに不可欠であるかを訴えました。

決済は単なる支払い行為ではありません。そこにはサブスクリプション、在庫管理、配送、税計算、さらには多様な販売オプションといった、取引に付随するあらゆる要素が含まれるのです。

Shopifyには数百万の販売者が集まっており、そこから生まれる膨大な取引データがシステムを賢くし、一度勢いがつけば自然に成長が加速する「フライホイール効果(好循環)」を生み出すのです。

フィンケルスタイン氏は、AIによる商品発見において、OpenAI、Google、Microsoftの3社を主要なパートナーとしてあげました。これらの企業は、AIエージェントを通じて「Shopify」加盟店の商品がユーザーに見つかるよう支援しています。

同時にShopifyはGoogleと、AIエージェントが消費者に代わって購買関連のタスクを実行する「エージェンティック・コマース」を推進する新標準プロトコル「Universal Commerce Protocol(UCP)」を共同開発。フィンケルスタイン氏は「UCP」について、「どんなAIエージェントでも、『Shopify』のすべての販売者とスムーズにやり取りできるようにするための共通ルールです。これにより、AIアプリを通じた買い物が、実際のネットショップと変わらないほど快適なものになります」と説明しています。

ユーザーはAIとの会話の中で商品を見つけ、埋め込み型チェックアウトを通じて購入までを完結できるようになる
ユーザーはAIとの会話の中で商品を見つけ、埋め込み型チェックアウトを通じて購入までを完結できるようになる

この記事は今西由加さんが翻訳。世界最大級のEC専門メディア『Digital Commerce 360』(旧『Internet RETAILER』)の記事をネットショップ担当者フォーラムが、天井秀和さん白川久美さん中島郁さんの協力を得て、日本向けに編集したものです。

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