「ChatGPT」といったAIツールの普及で、ユーザーが商品やサービスを「AIに聞いて選ぶ」時代が到来しつつあります。検索の主役はまだGoogle――しかし、AIからの流入は急速に伸びており、ECサイトにとって無視できないチャネルになりました。Ahrefs(エイチレフス)の独自データと「カラーミーショップ」の実例を元に、AI時代にECサイトが“選ばれる”ために必要な発信戦略を解説します。
検索の主役はまだGoogleだが、AIの伸び率は無視できない
GMOペパボ EC事業部 ECグループ プリンシパルディレクター 花田靖治(以下、花田):AIがどんどん無視できないチャネルになりつつあるなかで、ECサイトはどのように選ばれていくのかを、Ahrefsの河原田さんとお話します。まず今の検索の状況をお聞きしたいのですが、Googleの検索はまだ強いのでしょうか。
Ahrefs Pte Ltd. 日本マーケティング統括 河原田隆徳(以下、河原田):Ahrefsが独自に提供しているWebアナリティクスで7万6000サイトのデータを調べたところ、Googleのトラフィックが全体の約40%、それに対して「ChatGPT」は約0.21%です。デスクトップの検索シェアもGoogleが約74%を占めていますし、「Googleが終わった」「SEOが終わった」という状況ではないですね。
花田:ただ、伸び率で見ると無視できないと感じています。「カラーミーショップ」における「ChatGPT」経由のショップへの流入は全体の1%以下ですが、2026年2月度の数値は、前年同月比4倍以上。AIからECサイトへの流入は確実に伸びてきています。
河原田:「ChatGPT」の週間アクティブユーザー数は9億人、1日あたり25億件のプロンプトを処理しています。ハーバード大学とOpenAIの共同研究では、「ChatGPT」への問いかけのうち約49%が「情報を求めるAsking型」。さらにエイチレフスのパトリック・ストックスがエイチレフスのデータを元に再分類した結果では、約65%が従来Googleで検索されていた内容に相当すると分析しています。検索の入り口がGoogleからAIに移行し始めている勢いはすごいなと感じています。(参考:ハーバード大学とOpenAIの共同研究「How People Use ChatGPT」、ahrefs blog「ChatGPT vs Google:検索ボリューム・サイト流入・CTR を徹底比較」)
花田:実際、AhrefsでもAIの影響は感じていますか?
河原田:Ahrefsの無料登録ユーザーに「どこでAhrefsを知りましたか」と聞くと、「AIで知りました」という回答が、2024年から2025年にかけて2.5倍になっています。AIが認知のきっかけになるケースがどんどん増えてきていますね。
花田:実数値はまだ少ないかもしれませんが、伸び率を考えると、今後数年で無視できないチャネルになりつつあるなと感じます。
「AIによる概要(AI Overviews)」の影響。「○○ とは」「○○ 比較」が検索画面で完結してしまう?
花田:検索の中心はまだGoogleとのことですが、GoogleでもAI関連機能として、2025年3月頃から検索結果のファーストビューに表示される「AIによる概要(AI Overviews:AIO)」が大量に出現しました。元々ゼロクリック化の話はありましたが、AIOの影響を受けたサイトやショップは少なくないのではないかと思っています。実際、AIOはどのようなキーワードで表示されやすいのでしょうか。
河原田:Ahrefsの直近のデータでは、AIOが表示されると他のページのクリック率が大きく低下していました。2025年5月時点でグローバルでは35%の低下だったのですが、12月に再取得したところ、53%まで悪化しており、日本でも35%ほど低下しています。
花田:かなり影響がありますね。
河原田:1億4600万件の検索結果を分析したところ、AIOは全キーワードの約30%で表示されており、そのうち99.9%が情報収集型のクエリなんです。「○○とは」「○○ おすすめ」「○○ 比較」といった、購買ファネルの上部にあるようなキーワードがすべてAIOで完結してしまう。
花田:まさに、ECサイトへの流入を生み出していたキーワードですよね。それは厳しい……。
河原田:さらに注目すべきなのが、これまではGoogle検索結果のトップ10の約76%がAIOにも引用されていたのですが、最新のデータでは約38%まで減少しているのです。
花田:半分になっているのですか。
河原田:はい。Googleに「Gemini」が統合されたことで、YouTubeからの引用や10位圏外からの引用も増えていて、「トップ10に表示されれば安心」というセオリーが崩れてきています。今後、より幅広いコンテンツ戦略がとても必要になっていくのではないかと考えています。
花田:確かに直近のAIOを見ると、YouTubeの動画が表示されることは増えましたよね。しかも、チャンネル登録者数や再生回数があまり多くない動画も表示されているケースも見受けられるので、「検索者のニーズに合う」と推測されるコンテンツを表示しているのかなと感じます。
河原田:ニーズに応えられるような、Webメディア以外のコンテンツも表示されるようになってきているので、YouTubeなどの重要性はますます高まっていると感じています。
指名検索はAIOに奪われない。カギは「AIにブランドを覚えてもらう」こと
花田:AIOで情報収集系のクエリが奪われていくなかで、ECサイトはこれからどうしていくべきでしょうか。個人的には、やはり指名検索を増やしていくことが重要ではないかと思っているのですが……。指名検索はAIOの影響を受けにくいのでしょうか。
河原田:こちらもAhrefsのデータを取得しました。AIOの表示率は一般的なキーワードで約30%、指名検索に「Knowクエリ」が混ざると20%くらいに下がります。そして純粋な指名検索――「Ahrefs」や「カラーミーショップ」といったブランド名だけのクエリだと、AIOが表示されるのはわずか2.29%なんです。
花田:2.29%!ほとんど表示されないのですね。
河原田:はい。だから、どこか別のチャネル――AIOやSNS、YouTubeなどで認知を獲得しておいてから指名検索を得ると、ダイレクトに自分のサイトに来てもらえる。難しい戦い方ではあるのですが……。
花田:そこで大事になってくるのが、「ユーザーはどこでブランドを知るのか」という話ですよね。AIでの会話がきっかけになるケースが増えてきているのではないかと思うのですが……。
河原田:そうですね。よく「ダークファネル」と言いますが、「GA4」では追えないところでユーザーの意思決定が起きています。「どこで知りましたか」と聞くと「AIです」という回答が増えていますし、「AIで比較検討されて敗北した」みたいな話もよく聞きますね。
花田:「カラーミーショップ」でも、営業が商談時にサービスを知ったきっかけを聞くと、「AIで知った」「AIで比較検討した」と返答されるケースが増えてきています。AIがおすすめしたブランドがそのまま指名検索につながっている感覚は確実にありますね。「ダークファネル」のように目に見えないところが増えている分、そこをどう効果検証するかというのもセットで考えていく必要があるなと。
2つのショップ事例から読み解く、AIに推奨されるECサイトの共通点
花田:では実際、ECサイトがAIで指名検索を得るためにはどのような発信をしていけばいいのか。AIの検索結果で自然に紹介されているショップさんを2つピックアップしました。前提として、この2つのショップさんはAIからの引用を狙って運営しているわけではありません。「結果としてAIに選ばれている」ところがポイントです。
河原田:なるほど、面白いですね。
花田:1つ目は、愛知県西尾市で草木染めのカジュアルウェアを手がける「UZUiRO(ウズイロ)」さんです。夫婦で運営しているショップなのですが、「レディースファッション 染め物ブランド おすすめ」などのキーワードで、AIOや「ChatGPT」などの回答でブランド名が出てきます。購入につながるようなキーワードでAIがおすすめしてくれているんです。
河原田:特定のプロンプトできちんと推奨されているということですね。
花田:もう1つが、石川県の能登半島で包丁の製造・修理をされている「ふくべ鍛冶」さんです。「包丁修理 サービス」といったキーワードで、ショップ名だけでなく、自社の宅配修理サービス「ポチスパ」というサービス名も一緒にAIが紹介しています。ただ引用されるだけではなく、サービス名としてあがっている。これはECサイトとしてAIに推奨される、すごく理想の形ではないかなと感じます。
河原田:メディア掲載のところを見ると、権威性のあるメディアから取り上げられていますね。今は偶然かもしれませんが、AI対策として非常に重要なことを行っている印象です。
花田:そうなんです。この2つのショップの共通点を見ていくと、まず、自社でコンテンツをきちんと発信していること。aboutページで自社が何者なのかを伝え、ストーリーもきちんと語っています。さらに専門分野のコラムも書いており、たとえば「ふくべ鍛冶」さんは包丁メンテナンスについてのコンテンツも発信しているので、「包丁 お手入れ」といったキーワードでも上位に表示されています。
河原田:自社コンテンツの発信がベースとして大事ですよね。
花田:そしてもう1点、2つのショップは共にPRを上手に行っています。日経新聞や日本ネット経済新聞に取り上げられたり、プレスリリースを発信したり。「UZUiRO」さんは、染め物体験を開催して地元メディアに取材されています。しかも、外部メディアで取り上げられたことを自社サイトでもニュースとしてきちんと紹介している。
自社コンテンツの発信はベースとして大事です。けれどそれだけではなく、外部にも目を向け、取り組みに注目してもらえるPR的な設計をしていくことが、AIに引用される上で重要な動きなのではないでしょうか。
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