商品ページ掲載文の作成、作業時間短縮――ネットショップ担当者のAI活用事例とは
近年、「ChatGPT」を始めとしたAI技術が注目を集めており、EC業界でも活用が期待されています。今回は、EC運営にAIツールを積極的に取り入れている2名のネットショップ担当者に、EC運営やプライベートのなかで「具体的にAIをどのように活用しているか」についてお話を伺いました。
「自然派きくち村(https://kikuchimura.jp/)」の事例
"畑からはじまる"商品づくりを理念として、農薬や肥料を一切使わない自然栽培によって育てられた米をはじめ、旬の野菜や果物、オリジナルの調味料、惣菜、スイーツなどを販売する「自然派きくち村」。
約500点ある商品ページでは、生産者の紹介や生産過程、おすすめの調理方法などを紹介しています。充実したコンテンツあふれるサイト運営に、どのようにAIを活用しているのか伺いました。
GMOペパボ EC事業部 ECグループ プリンシパルディレクター 花田靖治(以下、花田):EC運営にAIをどのように活用していますか? またどんなツールを使っているか教えてください。
渡辺商店 自然派きくち村 Web管理担当 田上信一氏(以下、田上氏):「自然派きくち村」では、商品ページに商品の生産過程、生産者の想いを伝えるインタビューや写真を掲載しています。そのインタビュー記事を作るのに「ChatGPT」を使って想定質問や構成案を考えています。他に「Google Bard」なども併用しています。
花田:AIを活用して記事のアイデア出しをするんですね。AI活用でどのような変化がありましたか?
田上氏:AIを初めて使った時は期待していなかったのですが、AIの生成する文章が驚くほど丁寧で自然な表現だったことに驚きました。もちろん何度か手直しは必要ですが、構成などの案出し作業にはかなり役立っています。また、記事が完成した後の誤字・脱字チェック、査読も迅速に行えるようになりました。
花田:AIを活用することで作業時間の短縮になりましたか?
田上氏:構成案や完成記事の確認にかかる時間は大幅に短縮されています。コンテンツ制作のほか、食材の調理アイデアにも「ChatGPT」を活用しています。
珍しい農作物も取り扱っているので、お客さまから「どうやって料理したらいいですか」という問い合わせをいただくこともあります。なので、できるだけ商品ページには食べ方のイメージや調理写真、アレンジ方法を掲載しています。その調理方法のアイデア出しにAIを活用しています。
自社の加工場で調理を行っているため、具体的な料理の提案もスムーズに行えるようになりました。
花田:AI利用でメリットがある一方、課題はありますか?
田上氏:課題もありますね。時折誤った情報を生成することがあるため、注意が必要です。たとえば「無農薬」「減農薬」「無化学肥料」「減化学肥料」という言葉を使った表示は、農林水産省によって禁止されています。そういった国ごとのルールを理解していないので、完成文にNG用語が使われていることがあります。国ごとに異なる文化や背景を学習し、適切なテキストを生成してくれるようになると、より一層EC運営にAIを活用できると考えています。
花田:ありがとうございます。AIの活用によってどのようにコンテンツが進化していくか、楽しみですね。
田上氏:こちらこそ、ありがとうございました。
「梅森陶器店(https://umeto-ki.shop-pro.jp/)」の事例
岩手県一関市において家族で営んでいる陶器店。日用食器から引出物や各種ギフト、業務用食器まで500点以上の商品を扱う陶器の専門店。
SNSを利用して集客を行っており、そのノウハウなどを「note」で発信。AIをはじめ新しいツールを積極的に利用しています。店主の梅森さんにお話をうかがいました。
花田:EC運営においてAIを利用しているシーンはありますか?
梅森陶器 代表取締役 梅森弘嗣氏(以下、梅森氏):新商品の商品説明文を作る際、特にテキストがうまく組めないときに「CahtGPT」を利用しています。箇条書きで商品の説明や特徴を書いて文章を生成しています。自分たちの言い回しとは違う雰囲気のものができあがるので、もちろん手直しが必要ですが、文章を整理する時に使っていますね。
花田:やはり手直しは必要ですよね。他にどのような点でAIを活用していますか?
梅森氏:インタビューや取材、寄稿、申請書の作成で文字数制限があるときに「200文字程度に要約して」といった使い方をします。
花田:たしかに文章の要約はAIの得意とするところだと思います。SNS文言の作成には使っていますか?
梅森氏:SNSの文章には使わないですね。SNSの投稿は当店らしさのようなゆるい雰囲気を大事にしているので、自分の言葉で作っています。「ChatGPT」で作ったこともあるのですが、オススメ感が強い感じになってしまいました。
あと、ネガティブワードの処理があまり上手くないと思っています。たとえば「薄くて綺麗な陶器」の投稿文を書くにあたって、「薄い分、強度は劣る」ということをしっかりお伝えしたいのですが、生成ワードに「薄い分こわれやすい」といった言葉を組み込んでも、どこか的を得ないぼかした表現で文章がまとめられることが多いように感じます。
実際に商品を「見る」「手に取る」ということができないECやSNSにおいては、的確で正直な表現でお伝えすることが大切だと思っているので、商品が持つ「短所」については特に自分の言葉・責任で表現するようにしています。
花田:梅森さんがプライベートでAIを活用しているシーンはありますか?
梅森氏:Canvaの「Magic Eraser」などを使ってみています。新しいツールはとにかく使うようにしています。元々好きということもありますし、かけられる広告費にも限りがあるので、新しいものはとにかく試して、合わなかったらやらないという感じですね。
花田:なるほど。貴重なお話をありがとうございました。AIを上手に活用して、効率的なテキスト生成と文章の整理を実現しているお話は非常に興味深いですね。今後の展開にも期待です。今日はありがとうございました。
梅森氏:どうもありがとうございました。
まとめ
今回、2人のネットショップ担当者にお話を伺いましたが、共通点として商品ページやテキストを主体としたコンテンツにAIを活用している点があげられます。
コンテンツのアイデア出し、たたき台としての文章作成・要約、誤字・脱字のチェックなど、今まで人が時間をかけていた部分の手助けとしてAIを上手く活用し、作業時間の短縮につなげています。
また、両ショップさんとも、ただ単純にAIを使うのではなく「まず取り組んでみて、どこの作業にAIを活用させるか」をショップの個性に合わせて柔軟に対応している点が印象的でした。
EC運営にAI活用を検討している方は、ぜひ2つのショップさんの活用例を参考にしてみてください。