ユーザーが商品やサービスを「AIに聞いて選ぶ」という時代が到来しつつあります。まだGoogleが検索の主流ではあるものの、AIからの流入は右肩上がりで伸びており、EC事業者にとって無視できないチャネルになってきています。事業者はどのような発信をしていけば良いのか――。SEO・AI検索分析ツールを提供するAhrefs(エイチレフス)の独自データから解説します。
AIに選ばれるために「どこに出すか」「どう整えるか」。有効な発信戦略とは
GMOペパボ EC事業部 ECグループ プリンシパルディレクター 花田靖治(以下、花田):自社だけでなく、外部を含めたさまざまなチャネルでの発信が大切ですが、具体的にどのチャネルに注力すべきなのか。AIが引用しているソースには、どのような傾向があるのでしょうか。
Ahrefs Pte Ltd. 日本マーケティング統括 河原田隆徳(以下、河原田):日本における「ChatGPT」の引用元ドメインを見ると、「PRタイムズ」「note」「ITメディア」といったメディア系が上位にあがっています。一方、Googleの「AIモード」になると傾向が変わり、「YouTube」「Googleマイビジネス」「Instagram」が強い。AIによって好むチャネルが異なるのです。
花田:業界によっても変わってきますよね。
河原田:大きく異なりますね。自動車業界に絞ると、異なるドメインが出てきたりします。そのため、自分がターゲットとしている業界の傾向を見ることが大切です。すべてのチャネルに出すのはリソース的にも無理なので、AIが自社の領域で好んでいるドメインを把握し、そこに集中的に発信していくのが現実的です。
花田:ちなみに、AIが引用しているソースを知るためには、どのような方法があるのでしょうか。
河原田:Ahrefsの「ブランドレーダー」のようなツールを使うと、自社のブランドがAIのなかでどのくらい語られているか、どのドメインから引用されているかを把握できます。ただ、ツールを使わなくても、まずは自分が推奨されたいプロンプトを決め、それを「ChatGPT」に聞いてみるところから始められます。出てきた引用元を確認して、傾向を把握する。そこからのスタートでも十分です。
花田:ECサイト運営はリソースが限られてしまう部分もあると思いますので、狙って出す場所を決めるのは本当に大事ですよね。ちなみに「PRタイムズ」や「YouTube」がAIに好まれる理由は何でしょうか。
河原田:Ahrefsの「DR(ドメインレーティング:ウェブサイトが持つ被リンクプロフィールの強さを0~100までのスケールで表示する指標)」で見ると、AIに引用されるドメインはDR90以上の権威性が高いサイトが多いです。「YouTube」はDR99、「Instagram」は100。AIは信頼性の高いドメインから優先的に情報を取得しているのだと思います。
花田:なるほど。では、自社ECのドメインでコンテンツ作成に注力するのと、プレスリリースを1つ配信するのだと、AIに選ばれるにはどちらが近道ですか。
河原田:やはり第三者のドメインに発信していく方が近道だと思いますよ。自社ドメインからの引用も入っていますが、膨大な引用元のなかの一部に過ぎないので。もちろん自社サイトを無視するわけではなく、自社コンテンツの発信はベースとして実施しつつ、外部メディアやSNSにも出していく。いくつかある軸の1つとして実施していくのが良いでしょう。
自社のバリュー&ブランドをとにかく発信する
花田:ちなみに、EC事業者さんがAIに向けた施策として今日からすぐにできることはありますか? 何から始めたらいいか迷っている人もいると思います。
河原田:まずは自分が推奨されたいプロンプトを決めることが重要です。たとえば「UZUiRO(ウズイロ)」さんだったら、「レディースの染め物ブランドでおすすめは何ですか」と決めて、それを「ChatGPT」に聞いてみる。出てきた引用元を確認して、傾向を把握するところから始めたいです。
花田:AIに自社のことを聞いてみることが第一歩ですね。外部への発信とあわせて、自社サイト側の整備としてはどのようなポイントがありますか?
河原田:AIに引用されやすいページの共通点として、まず日付、タイムスタンプがあること。「ChatGPT」は鮮度の高いコンテンツを好む傾向があるためです。著者名が明記されていること、H2などの見出し構成がしっかりしていること、JavaScriptが重すぎないこと、冒頭で主要な質問に回答していること、FAQ形式で簡潔に答えていること、そして独自データに基づいた一次情報であること。
花田:一次情報というのは大きいですよね。どこかから拾ってきた情報ではなく、自社ならではのデータや知見を出していくということですね。
河原田:そうです。あともう1つ重要なのが、自社のバリューをブランドとセットで、しつこいくらい発信し続けることです。たとえばバルミューダさんを見ていると、「デザイン性」というバリューを、必ずブランドとセットで発信しているんですよ。Ahrefsの「ブランドレーダー」で見てみると、「デザイン性を求めるならバルミューダ」とAIが推奨してくれるようになっています。
花田:なるほど。AIに刷り込むくらいの気持ちでということですね。
河原田:はい。人が見ると「ちょっとしつこいな」と思うくらいがちょうどいいのかもしれません(笑)。ただ、「ユーザーが求めるコンテンツを発信する」という本質は忘れてはいけませんね。
AIへの施策も地道なマーケティング施策になる
花田:さまざまなお話を伺って、AI検索時代にECが選ばれるためには、大きく3つの軸があると感じました。
- 指名検索を生む発信:YouTube、SNS、プレスリリースなどを通じて、AIにブランドを認知してもらう
- AIが引用する場所に出す:自社の業界でAIが好むドメインを把握し、外部メディアやUGCを通じた第三者からの推奨を増やす
- 自社サイトをAIが読みやすいように整える:一次情報の発信、FAQ、タイムスタンプ、著者名など、基本的なサイト整備を行う
河原田:自社サイトのコンテンツ発信は大前提として、さまざまなチャネルに発信しなければいけないことを考えると、やはり地道なマーケティング施策に帰ってくるのではないかと思いますね。
花田:自社の発信が、人だけではなくてAIにも届いたとわかる。その手応えがあると、やりがいにもなりますよね。まだGoogle検索が主役の今だからこそ、AIへの備えを始める良いタイミングかなと。まずは自分のショップ名が「ChatGPT」に推奨されるのかどうか聞いてみるところから始めてみてはいかがでしょうか。
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