Amazonで3年連続カテゴリー1位の「タオル研究所」が圧倒的なブランド力を築いたワケ。成功のカギは“伊澤プラットフォーム”の構築とAmazonとの“密な協業”
Amazonのホーム&キッチンカテゴリーで3年連続1位を獲得している伊澤タオル。自社ブランド「タオル研究所」のタオルが支持を集める理由、ODMで培ったノウハウ・データを活用した施策などを取材した
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1970年創業、50年以上にわたって「タオル製品」などの企画・製造を手がけている伊澤タオル(東京都渋谷区)。コスパの良さを追求したタオルが人気を集め、自社ブランド「タオル研究所」のタオルは、Amazonのホーム&キッチンカテゴリーにおいて3年連続で売上1位を獲得した。成功の裏にはAmazonとの密な協業関係もあるようで、累計販売数は2026年2月に4000万枚を突破。2025年8月には米国の「Amazon.com」でも販売を開始した。その成長の源泉は、企画から販売までを一気通貫で管理する「伊澤プラットフォーム」。業界の“革命児”として研究開発にも熱心に取り組み、圧倒的なブランド力を築いた数々の施策と成果を聞いた。
業界の常識を打破し、「伊澤プラットフォーム」を確立
大阪市で、伊澤正美氏によって創業された伊澤タオル(当時は伊沢タオル)。ODM(Original Design Manufacturing、委託者のブランドで製品を設計・製造)が主力事業で、自社ブランド「タオル研究所」の展開、「キャラクターIP製品」の製造も手がける。「タオルのグローバル・スタンダードを創出し、世界市場で存在感を示す」をビジョンに掲げ、米国向けにも製品を販売する。
伊澤タオルは、“革命児”として、これまでの常識を打ち破ってきた。広報の島村悠理氏は、最大の強みとして、企画・開発・製造委託・販売までを一気通貫で管理する「伊澤プラットフォーム」をあげた。
従来、タオルを含むテキスタイル業界では、製造・流通・販売が分断された「縦割り構造」が常識とされていました。製造を担う「工場」、世界中で製造されたタオルを届けるための情報を持っている「卸売業者」、タオルを消費者に届ける「小売業者」が、それぞれ縦割りの役割を担っていました。この場合、製造ノウハウの蓄積がされにくく、消費者ニーズが反映されにくい。つまり進化を妨げてしまう問題がありました。
そこで、伊澤タオルは流通全体を管理できるプラットフォームを構築し、自社ノウハウを活用して製造業者に技術を提供したり、消費者ニーズを踏まえた新製品の開発を手がけたりしています。(島村氏)
もう1つの戦略として、自社工場を持たない「ファブレス経営」を選択。その理由は、「設備投資コストを抑制し、イノベーションに注力できる環境を維持するため」だという。
私たちは、遠い先の未来まで見越して経営判断を下しています。特定の設備を持った場合、それらを最大限活用することを念頭に置いた戦略を優先せざるを得なくなりますが、それではイノベーションが起こりにくくなってしまいます。そこで、紡績(動植物などの繊維を処理・加工して糸にすること)から加工まで1つの工場で一気通貫できるフローを持った工場と協業することで、高品質・適正価格を維持しながらイノベーションを加速させています。(島村氏)
将来的には、タオルは現状の四角い形ではなくなるかもしれない。そういった可能性も念頭に置き、特定の設備に縛られない柔軟なアプローチを取っているそうだ。
研究開発と豊富な実績により「高品質」と「適正価格」を両立
この「伊澤プラットフォーム」を原点として、伊澤タオルでは「研究開発」に投資して武器に育ててきた。2005年には、社内に技術開発部を設置。2016年には、信州大学の大学構内に共同研究ラボを開設し、同大学との共同研究を進めてきた。さらに、京都工芸繊維大学や福井大学とも共同研究を続けている。社員の多くがタオルの専門アドバイザーである「タオルソムリエ」資格も取得しているという。
たとえば、信州大学との共同研究では柔らかさの客観評価、福井大学とはサステナブルな製造技術の専門的な研究を行うなど、研究開発に注力しています。さらに、大手繊維メーカーなどとも連携を深めて、品質を高めています。現在、糸の製法やタオルの製造工程に関する21件の特許を保有しています。(島村氏)
また、年間数千件を請け負うODMを通じて、日々ノウハウを蓄積している。協業先は、コンビニ、ホームセンター、総合スーパー、ドラッグストアなど多岐にわたる。代表的な事例には、「セブン-イレブン」で販売しているヒット製品「極ふわタオル」シリーズや、デイリー使いしやすいコストコの「タオル」、2026年2月にビックカメラが発表した新オリジナルブランド「ビックアイデア」で利用シーン別に開発した「ためのタオル」などがある。
各小売店によって、耐久性、吸水性、デザイン性など重要視する点が大きく異なります。それを数十年にわたって積み重ねているため、各社のレシピを厳密に把握しており、正確かつ迅速なスケジュールやコスト管理が可能です。海外工場との交渉力も高く、市場における高品質と適正価格の両立を実現できます。これは、経験値が浅い企業には非常に難易度が高いのです。(島村氏)
Amazonに一極集中、どのようにファンを拡大したのか
ODMで実績を上げてきた伊澤タオルは、2019年から自社ブランド「タオル研究所」の販売をAmazonで開始した。速乾性、やわらかさ、軽さ、手触り、耐久性など、機能性やニーズに合わせて選べる10カテゴリーに加え、ウォルト・ディズニー・ジャパン、およびサンリオとのコラボ製品も展開する。
最も売れ行きが良いのは、贅沢なボリュームと優れた吸水性がウリの「ボリュームリッチ」だ。たとえば、バスタオルの1枚あたりの価格は945円~で、まとめ買いやセールを利用すると、より低価格となる。累計販売数は4000万枚を越え、ホーム&キッチンカテゴリーでは2022年から3年以上も1位を獲得している。
(画像は伊澤タオルの公式ホームページからキャプチャ)
自社ECサイトを立ち上げるのではなくAmazonを選んだのは、今まで黒子に徹してきたため、ECに関するノウハウやリソースが不足していたためです。Amazonが持つチャネル力や物流網、データ管理システム、顧客対応力などを活用することで、当社が強みとする「研究開発やものづくり」にリソースを集中させながら、老若男女問わず広くリーチできる点をメリットだと感じました。他にも大手ECモールはありますが、まずはAmazonに一極集中してECの基盤を作ろうと考えました。(島村氏)
Amazonで製品を販売する場合、Amazonと直接取引を行う「ベンダー」とAmazon上に出品者として登録し、自ら出品や販売を行う「セラー」の2モデルが存在する。豊富な実績を持つ伊澤タオルは、「ベンダー」でECに参入。この場合、発送業務や在庫管理、決済や返品対応などの手間が最小限に抑えられる。また、Amazonの顧客基盤を活用できる利点もある。
Amazonでは、セラーより利益率が高いベンダーに注力しており、伊澤タオルの参入当時、タオルブランドでベンダーを採用している企業はいなかった。Amazonから「タッグを組んで取り組みたい」との依頼があり、Amazonの専属スペシャリストによる伴走支援を受けたという。
成果につながったのは、「商品力」の基盤があってこそだと思います。それに加えて、専属スペシャリストの方のアドバイスをもとに「広告運用(スポンサープロダクト広告やDSP広告)」を行い、初期段階で「ベストセラーバッチ」を獲得したことでアクセス数が倍増しました。Amazonはとにかく品数が豊富なので、検索時にまず上位に表示させることが欠かせません。(島村氏)
広告では、「タオル研究所」という名前と各シリーズの特長を押し出したキャッチコピー、価格を全面に出し、「ブランド名」と「タオルの多様な種類」の認知向上に注力。反応を見ながら即座にワードを調整したことも功を奏したそうだ。
さらに、「適正価格の維持」も売り上げに直結する要素となっている。「タオル研究所」はコスパの良さを強みとしているが、単純に安売りをしているわけではない。常に市場調査を行い、あらゆる製品を分析し、重量や機能性に対しての平均値を割り出したうえで、適正コストを見極めているという。
このような施策により、Amazonでの総レビュー数は15万件を超えました。当社の売上高は過去15年で約12倍に増えており、Amazonでの「タオル研究所」の販売が成長を牽引しました。(島村氏)
膨大なデータを管理する独自システム「IOPMS」
さらに、ODMの実績とAmazonで得た膨大なノウハウやカスタマーレビューのデータ活用も、伊澤タオルの成長を支える重要な施策だ。
当社では、「Izawa Original Production Management System」、通称「IOPMS」というデータ分析システムを独自で構築しています。膨大な開発レシピを取り込んでいて、糸の素材や工程などの諸条件を入力すると見積もりが表示されます。これまでは、代表伊澤の頭の中にしかなかった知識をシステムに落とし込むことで、担当者レベルでも同等のアウトプットができるようになりました。データ自体は創業時から溜めていたのですが、約5年前から組織での本格活用がスタートしました。(島村氏)
(画像提供:伊澤タオル)
伊澤タオルでは、Appleやユニクロのように自社で膨大なデータを扱いながら、製造業者と連携する企業をベンチマークとしており、このようなアプローチを取っているのだという。今後は本格的にAIを導入するなどして、より利便性を高めてしていく方針だ。
また、膨大なカスタマーレビューも地道に吸い上げながら、新製品の開発や既製品の改善に生かしているそうだ。
たとえば、「洗濯したときに生乾き臭がした」「乾燥機で乾かしたらゴワつきが気になった」などの声を1つひとつ確認し、そのご指摘だけでなく、まだお客さまが気づいていないような課題も抽出しながら製品に反映しています。(島村氏)
実際に、そうした声から生まれた製品は多くある。耐久性がウリの「タフネスPRO」や驚きの速乾性をもたせた「スピードドライ3D」、乾燥機対応の「ドライキープ」などだ。直近では、髪への摩擦を約30%低減するヘアタオル「ヘアケアタオル研究 回答は綿でした」も誕生した。
実店舗での販売と米国展開もスタート
しばらくはAmazonのみで販売していたタオル研究所だが、2026年1月に国内小売店での取り扱いを開始した。「実際に見てみたい」「店頭で購入したい」という声が多く聞かれていたことに加え、ECでは取り込めない層にリーチすることが狙いだという。結果として、約4か月で導入数が1000店舗を突破した。
以前から、多くの小売店から「『タオル研究所』を取り扱いたい」というニーズがあがっていました。結果として、想定通りに導入が進んでいます。当社の取引先でいうと5~6万店舗にのぼるため、まだまだ拡大することが見込まれます。(島村氏)
Amazonとは異なる客層をターゲットにしていることもあり、今のところAmazonへのネガティブな影響はないとのこと。むしろ、実店舗で購入した人がAmazonでリピート購入するという相乗効果が見られているそうだ。
また、2025年8月には米国展開も開始した。日本でベンダーモデルを通じてタオルカテゴリーで成功した事例が大きく評価され、Amazonの米国チームから「米国展開」の打診があったという。
世界的にもタオルカテゴリーにおいてベンダーモデルで成功している事例は、レアなのだそうです。米国のバスタオル市場は、日本の約5倍にあたる1.7兆円規模にもなります。現地では、高温での洗濯・乾燥機がスタンダードなことから、重くてゴワつきがあるタオルが多く販売されています。ただ、現地の人がそうしたタオルを好んでいるわけではありません。軽量でふわふわしたタオルを見てもらったところ、非常に好反応が得られました。(島村氏)
そこで、吸水性・弾力性・ボリューム感・耐久性・肌なじみ、すべてを満たしながら、極限まで軽量化した米国基準のタオルを開発して、販売を開始した。すでに4つのラインアップを展開しており、今後もラインアップを増やしていく予定だ。販売開始当初は、バスタオルランキングで1031位だったところ、2026年3月には388位まで順位を上げるなど、順計に成果を上げているという。
伊澤タオルでは、「タオルのグローバル・スタンダード」の創出に向けて、引き続き取り組んでいくという。「ユニクロの『ヒートテック』や花王の『アタック』のように、消費者が『これを選んでおけば安心』と思えるような製品をめざします」と島村氏は締めくくった。

