小林 香織[執筆] 7/10 8:00

韓国のアパレル事業者mediquitousが日本で2020年10月にオープンした韓国発のファッションECサイト「nugu(ヌグ)」が、Z世代女性からの人気を集めている。2023年の年間取引総額は50億円、東京・新宿と大阪に実店舗も開設した。「nugu」の特徴は、インフルエンサーが選んだアイテムの販売。「nugu」内にインフルエンサーがショップを出店し、自身がセレクトした商品を自身がPR、インフルエンサーのファンが自然流入し「nugu」のファンにもなる仕組みを作った。「nugu」を立ち上げたmediquitous社のパク・ハミンCOO(最高執行責任者)に取材した。

売上1000億円をめざす人気の韓国発ファッションEC「nugu」とは? Z世代の女性から人気を集める秘訣をCOOに聞いてみた

インフルエンサーが商品をディレクション・訴求する韓国発のビジネスモデル

従来のファッションECサイトと「nugu」の一番の違いは、「インフルエンサーとの協業」にある。「nugu」と契約しているインフルエンサーは、「nugu」内に自分のショップを持ち、自身でセレクトした商品を販売している。購入された商品は「nugu」が顧客に発送し、インフルエンサーは報酬を受け取るビジネスモデルだ。

「nugu」と契約したインフルエンサーは、「nugu」内で自身のショップを開設できる
「nugu」と契約したインフルエンサーは、「nugu」内で自身のショップを開設できる
「nugu」のインフルエンサー・sakiさんのページで販売されている商品。自身がモデルとなってコーディネート写真を掲載
「nugu」のインフルエンサー・sakiさんのページで販売されている商品。自身がモデルとなってコーディネート写真を掲載

商品の買い付けはmediquitousが担う。インフルエンサーは、自身が好む「商品のテイスト」「イメージに沿う商品」の参考画像を集め、「nugu」のスタッフがそれをもとに韓国の東大門(トンデムン)市場などファッションアイテムの卸売市場で商品を調達する。その他、アパレルブランドから仕入れる商品もある。インフルエンサーは、いわゆる「ブランドディレクター」のような役割を担っている

自身がセレクトした商品をインフルエンサーがコーディネート、撮影、コンテンツ化し、自身のSNSや「nugu」内で発信。商品が購入されると売り上げの一部がインフルエンサーに報酬として還元される。

インフルエンサーにとっては、初期費用をかけずに自身のショップを開設できます。加えて、商品の調達、ECサイト運営、配送、カスタマーサービスといった不慣れな部分は「nugu」にすべて任せて、報酬を得られる点はメリットでしょう。mediquitousにとっては、インフルエンサーに集客を頼り、ビジネスの規模を拡大できるメリットがあります。インフルエンサーとmediquitousは両者にとってシナジー効果が得られているのです。

mediquitous COO パク・ハミン氏
mediquitous COO パク・ハミン氏

「nugu」はファッションアイテムをメインに取り扱っているが、化粧品やライフスタイルのカテゴリーの商品も販売している。商品は基本的に韓国本社の倉庫から発送しているが、2024年1月からは、日本国内の物流倉庫から発送される「特急発送サービス」を開始した。「特急発送」を選ぶと、注文のうち98%の商品が、注文当日から3日以内で顧客の手元に到着する。

2024年1月からは注文から3日以内で到着する「特急発送」をスタートした
2024年1月からは注文から3日以内で到着する「特急発送」をスタートした

インフルエンサーのファンがSNS感覚で「nugu」に流入

「nugu」で販売するファッションアイテムは、「カジュアル」「ラブリー」「ヴィンテージ」「モダン」といったZ世代に人気の高いテイストを多く取りそろえる。

商品ページは、ただ商品のPRに専念するのではなく、インフルエンサーの個性が伝わり、普段のライフスタイルがイメージしやすい写真を掲載する。「インフルエンサーのSNSの延長線上にあるECサイト」といった設計で、ユーザーは眺めているだけで楽しく、最新のトレンドがつかみやすい。

インフルエンサーがファストフード店で撮影した商品紹介ページ
インフルエンサーがファストフード店で撮影した商品紹介ページ

インフルエンサーがゲームセンターで撮影した商品画像は、シーンにマッチしたコーディネートをしており、ヘアメイクや小物使いも含めて、「nugu」を見たユーザーがトータルで参考にしたくなるような写真に仕上げている。

ゲームセンター内で撮影された商品紹介ページ
ゲームセンター内で撮影された商品紹介ページ

インフルエンサーがオンライン上で自身のショップを持てる「nugu」のようなビジネスモデルは、韓国では以前から存在していました。日本でも同様のビジネスモデルが求められていると考え、日本でのサービス展開を開始しました。(ハミン氏)

東京と大阪に常設店舗を開設

EC販路に加え、実店舗の展開も積極的に進めている「nugu」。東京、大阪、愛知でポップアップストアを展開したのち、2023年9月に東京・「ルミネエスト新宿」に常設店舗1号店を、2024年3月に大阪・「ルクア大阪」に2号店を開設した。

常設店舗1号店の「ルミネエスト新宿店」
常設店舗1号店の「ルミネエスト新宿店」
常設店舗2号店の「ルクア大阪店」
常設店舗2号店の「ルクア大阪店」

実店舗で販売しているのは、「オンラインショップでの人気アイテム」「新製品」そして、「その時期のコンセプトに沿ったセレクト商品」です。たとえば、5~6月頃は「夏のLA」をコンセプトにセレクトした商品を販売しています。(ハミン氏)

「夏のLA」のコンセプトに沿った商品はオンライン上でも展開している
「夏のLA」のコンセプトに沿った商品はオンライン上でも展開している

実店舗は盛況で、1号店の「ルミネエスト新宿店」オープン直後は建物の外まで長蛇の列ができた。

実店舗には、オンラインで「nugu」の商品を購入したことがある方もいれば、たまたま店舗を訪れた方もいます。なかには福岡など地方から来る方も。お客さまの特徴としては、日本のユーザーは、韓国の女性よりも「商品の購入前に試着したい」という欲求が強い方が多い印象です。(ハミン氏)

2024年5月10日からは、韓国の大手百貨店である現代(ヒュンダイ)百貨店、商業施設の「PARCO」、そして「nugu」が協業するポップアップストアを展開。7月28日まで渋谷の「PARCO」で開催している。韓国の若者に人気があるブランド10社の商品を販売する。

現代(ヒュンダイ)百貨店、「PARCO」、「nugu」が協業したポップアップストアで販売するブランド
現代(ヒュンダイ)百貨店、「PARCO」、「nugu」が協業したポップアップストアで販売するブランド

日本に進出したい韓国のファッションブランドは多いのですが、韓国企業にとって、日本の商習慣に合わせてサービスを展開するのはハードルが高いのです。こうした韓国企業のニーズをヒョンダイ百貨店がピックアップし、日本でのパートナーとして「nugu」と「PARCO」が協業することとなりました。(ハミン氏)

目標は5年後までに全社売上1000億円

「nugu」は若い女性からの支持が大きい。「nugu」のメインユーザーは、20~24歳が45%、25~29歳が25%で20代が70%を占める。男女比は約2:8で女性が多い。

ハミン氏は「Z世代をコアターゲットにした『Netflix』のようなプラットフォームだ」と「nugu」を形容している。

「nugu」にはZ世代に向けた最新のファッション、コスメ、ライフスタイルの情報が集まっていて、新たなコンテンツや商品、イベントをどんどん発信しています。お客さまは自身が好きなインフルエンサーを通じて「nugu」を知るようになり、サイトを回遊するのが楽しいと感じて、「nugu」での買い物を好きになってくれているのではないかと見ています。(ハミン氏)

ハミン氏が描く「nugu」の展望は、Z世代に最も愛されるファッションECのプラットフォームを作ること。2024年は「nugu」に多額の投資を予定しているといい、オンライン・オフラインで規模の拡大を見込む。

現代においてビジネスが成功するカギは、Z世代に愛される空間作りやサービスの提供ができることだと思っています。5年以内に売上1000億円の達成が目標です。(ハミン氏)

nugu
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