通販新聞[転載元] 2023/11/13 8:30

コロナ禍が落ちついたことで消費者が通販から実店舗へ回帰する傾向が顕著になっている。こうした中で、消費者をひきつけるために重要なのは、やはり商品力。これまでナショナルブランドを販売していたEC専業が、既存の商品が拾いきれていないニーズの獲得を目指し、オリジナル商品を開発する動きがみられる。また、卸売りからECへと参入するにあたり開発した商品が、思わぬ形でヒットするケースも。商品開発の最前線を追った。

ストリーム、「ecカレント」でPB強化

家電ネット通販大手のストリームが手がけるプライベートブランド(PB)「enas(イーネーズ)」では、同ブランド第2弾の商品として高級ドライヤーを、第3弾の商品として除湿機同社通販サイト「ecカレント」で発売した。

同社がPBを立ち上げたのは2020年7月。第1弾としてブルートゥースCDプレーヤー「enas EASY CD PLAYER」を発売した。営業本部商品営業部商品MDグループの渡邉航志課長は「本当は間を置かずに新商品を投入したかったのだが、コロナ禍の影響で、共同開発している中国メーカーとのやり取りが途絶えてしまった」と振り返る。

「キャビアドライヤー」を持つストリーム 営業本部商品営業部商品MDグループ 渡邉航志課長
「キャビアドライヤー」を持つストリーム 営業本部商品営業部商品MDグループ 渡邉航志課長

「キャビアエキス」を搭載する高級ドライヤー

3年ぶりに発売するPBとして選んだのは高級ドライヤーだ。近年、ドライヤー市場は、ダイソンが大風量の高級ドライヤーを投入したことを契機に商品単価が向上。パナソニックを筆頭に各社が高額商品を投入し、競争が激化した。コロナ禍が明けてからも、消費者が外出する機会が増えたこともあり、需要は拡大している。

渡邉課長によれば「PB第1弾のブルートゥースCDプレーヤーはニッチな商品だったが、次は消費者の目に付きやすい価格帯の商品を販売したいと考えた」のが高級ドライヤーを選んだ理由という。

発売する「キャビアドライヤー」(価格は3万4980円)は、キャビアエキスを凝縮した「キャビアエキスピース」をセットにした専用のキャビアノズルを付属しているのが特徴。キャビアエキスピースの成分には、保湿効果や抗酸化作用を持つ各種ビタミンや、髪の紫外線ダメージを回復し、髪の水分を保つ各種アミノ酸などが含まれる。ドライヤー本体からのマイナスイオンと大風量により、キャビアエキスの有効成分を髪に浸透させることができるとする。

キャビアエキスピースは、1日15分の使用の場合、3カ月が交換の目安。交換用のエキスピースは同社通販サイトで扱う。価格は数千円程度となる予定。

また、他社の高級ドライヤーに搭載されている機能として、温風・冷風を交互に切り替えることで髪へのダメージを少なくする「冷温循環」を搭載。デザインとしては、近年の流行であるショートノズルを採用した。

“隙間市場”のニーズを狙うコンパクト除湿器

ドライヤーと同時に発売したのが、コンパクトな除湿機「すみっこドライ」(価格は1万4980円)。最近の除湿機は、衣類乾燥機能を搭載した大型のものが主流となっている。「ただ、衣類乾燥をしない場所で除湿機を使用したいというニーズもあるはず。そこで、衣類乾燥機能を外すことで価格を抑え、置きやすさや使い勝手を考えた小型除湿機を市場に投入しようと考えた」(渡邉課長)。

「すみっこドライ」(画像は「ecカレント」から編集部がキャプチャ)
「すみっこドライ」(画像は「ecカレント」から編集部がキャプチャ)

商品名には「部屋の隅の目立たない場所に置いて使ってほしい」という意味を込めたという。利用シーンとしては、玄関にあるシューズケースの近くや、クローゼットのなか、押入れの奥などを想定。7色に光る「ムードランプ」を搭載することで、暗い場所に置いても除湿機の位置がわかるようにした。背面の水タンクは2.5リットルのため、こまめな水捨ては不要なほか、付属のホースをつなぐことで風呂場や洗濯パンに直接排水することもできる。

除湿方式にはペルチェ式を採用。金属板に電気を流すだけなので、衣類乾燥機などに採用されているコンプレッサー式と比較すると機構が簡易なため、小型化しやすいほか、駆動音が小さく、消費電力も抑えられる点がメリットとなる。

価格的には大手仮想モールなどで売られている、中国製の安価な除湿機と、衣類乾燥機能付き除湿機の中間に位置する。渡邉課長は「安価な除湿機は性能面で問題があるものもあり、一方で高性能な除湿機は高価でサイズも大きい。その中間となる“隙間市場”に当て込む商品だ」と語る。

家電ジャンルでの幅広いPB商品展開を計画

家電ネット通販大手では、エクスプライスが展開する「マクスゼン」が白物家電や液晶テレビなどを投入し、知名度を高めている。ストリームでは「第1弾から次のPBを発売するまで間が空いてしまったのはやや痛いが、今後はイーネーズというブランドを育てていきたい。家電ジャンルで幅広く商品を投入していくつもりだ。ゆくゆくは冷蔵庫や洗濯機、エアコンなども視野に入ってくる」(同)とする。

販路に関しても、今回のドライヤーと除湿機に関しては、自社サイトや仮想モール店以外でも販売していきたい考えだ。また、10月中の購入に関しては「ECカレントポイント」を10%付与する。

QVCジャパン、専売ブランドを拡販

通販専門放送を行うQVCジャパンは10月28日放送の番組で新たに立ち上げたファッションブランド「alsome(アルサム)」の各商品の販売を開始する。さまざまなカテゴリーの商材を販売する同社だが、なかでもアパレルは主力ジャンルの1つで、さまざまなメーカーと組んで、QVCの顧客にあわせて設計した同社でのみ販売するQVC専売ブランドを軸に拡販を進めている。

「alsome」はファッションモデルと新設

「alsome」もすでにこれまでに8つのQVC専用のブランドを立ち上げてきた繊維・工業用品の専門商社のGSIクレオスがファッション誌「STORY」などで活躍するモデルのナオさんと一緒に新設したQVC専用のブランドの1つとなる。

「ナオさんが自分が着たい服、クローゼットにプラスしたい服を形にしたブランド。すべての商品はデザインのアイデアや素材、カラー選びまでご自身が行っている。

ナオさんの感性をそのまま反映させている」(GSIクレオス・ライフスタイル部の岸本道哉部長補佐)として、モデルであり、主婦でもあるナオさんのアイデアや感性をもとに着丈などもゆったりめとするなど着やすく、また、デザイン性は高いものの、家事や日常生活の妨げにならない工夫やさまざまな着こなしを楽しめるようにした「ノンエイジでファッション感度の高い層」(同)をターゲットに訴求、拡販していく考えだ。

デザインや素材に工夫を凝らした7商品展開

第一弾として、体のラインを拾わないオーバーサイズに仕上げつつ、前後差のある丈感が重たくなりがちな冬のスタイリングをバランスよくみせるレーヨン混素材を使ったゆったりニットで、袖丈を自由に調整できるよう袖内側にストレッチゴムをつけて、家事や食事などの際に邪魔にならないようまくり上げた袖口が落ちてこないようにできるほか、手首を見せることですっきりとした印象にも着こなしが楽しめるメリハリのあるボーダーカラーがアクセントの「ハイネックボーダーニット」(カラーはブラック、ベイビー、ブラウン。サイズはS・M・L・LL。価格は税込8998円)や、ゆったりとしたシンプルシャツとして着るだけでなく、裾をクロスさせて裾左右のボタンを留めることでカシュクール風の着こなしも楽しめ、また、袖のボタン留めでまくらなくても袖を固定でき、日常の作業がしやすくなる工夫などを施した「ストライプ2wayシャツ」(カラーはブルー、ベージュ。サイズはS・M・L・LL。価格は税込9999円)など7商品を展開した。

「alsome」新設に携わったモデルのナオ氏(「alsome」の「ハイネックボーダーニット」を着用)
「alsome」新設に携わったモデルのナオ氏(「alsome」の「ハイネックボーダーニット」を着用)

優良顧客への訴求強化

QVCではテレビ通販で初めて紹介する10月28日に先駆けて10月18日から同社通販サイトで先行販売をスタート

また、同日に東京・青山で開催した過去1年間で一定額を購入した顧客にさまざまな特典を付与する会員制度「QVCプレステージ・クラス」の会員らを招待したQVCの専用ブランドや人気ブランドら4ブランドの新作を展示、試着などもできる展示会「ファッションマンスコミュニティイベント」でも「alsome」の商品を展示するなど購入意欲の高い優良顧客への訴求を強化。

加えて、ナオさん自らQVCの公式インスタグラムで展示会の会場から同ブランドの商品を紹介するライブ配信を約1時間にわたって実施するなどPRにも注力しており、その結果、展示会の会場やSNS上での反応もよく、拡販に向けて手ごたえを得ているよう。「11月にも新作の販売を予定している。今後も『1度チャレンジしてもいいかな』とお客さまの心をくすぐるようなデザイン、商品作りに注力していく」(岸本氏)としている。

QVCでは他社との差別化や付加価値を高めるため、こうした同社でのみ販売する専売ブランドや売れ筋ブランドの拡販支援を協力メーカーらと共同で今後も積極的に展開していく考えのようだ。

トーカン、「ひと口焼き芋」がヒット

食品卸売りのトーカンでは、仮想モール「楽天市場」に、サツマイモなどを使ったスイーツを扱う店舗「東甘堂」を出店している。

同社は乾物をはじめ、幅広い食材を卸販売している。CVS事業担当CVS営業部部門長兼事業開発推進室長の山田伸行専務執行役員は「当社では卸販売にこだわらず、新規ビジネスに挑戦しているが、その一つがサツマイモを扱う東甘堂だ。名古屋市に実店舗を展開しているが、新たな媒体にチャレンジすべく、楽天市場にも出店した」と話す。

トーカン CVS事業担当CVS営業部部門長兼事業開発推進室長 山田伸行専務執行役員
トーカン CVS事業担当CVS営業部部門長兼事業開発推進室長 山田伸行専務執行役員

ひと口サイズの焼き芋が売上けん引

楽天市場店の売上高はここ数か月で急増している。けん引しているのは、ひと口サイズの焼き芋「やきいもころころ」だ。ダイエット系のインフルエンサーがツイッター(現X)で同商品を紹介したことで知名度が上昇。ちょうど「楽天スーパーセール」が開催されていたこともあり、注文が殺到したという。レビューの件数も増え、楽天市場内の週間ランキング1位を獲得。「リピート購入が途絶えていないのに加え、新規顧客も増加している」(山田専務)。8月度の月間優良ショップを受賞した。

「やきいもころころ」(画像は「東甘堂」楽天市場店から編集部がキャプチャ)
「やきいもころころ」(画像は「東甘堂」楽天市場店から編集部がキャプチャ)

同商品は、サツマイモ(紅はるか)を「減圧真空蒸気乾燥器」で加熱したのちオーブンで焼き上げたもの。ハンズ・フーズ・ジャパンが開発した乾燥技術を使用したもので、「芋や柿を加工したらおいしいスイーツができたので、共同で商品化した」(山田専務)。販売はトーカン、製造はハンズ・フーズ・ジャパンとなる。

価格は50グラムの5袋セットが1180円、10袋セットが2320円。値段が手頃なほか、100グラムあたり151カロリーと控えめなことや、原材料がサツマイモだけという点が人気のポイントだ。

サツマイモを使ったスイーツとしての定番は干し芋。楽天市場でも人気商品であり、多くの店舗が販売している。山田専務は「干し芋は甘さと柔らかさにどうしてもバラつきが出てしまうが、ひと口焼き芋はこうしたバラつきがかなり少なくなる。食感としても、焼き芋と干し芋と中間くらいというのも受けた理由ではないか」と推測する。

10月18~24日に名古屋市の百貨店で開催された「楽天うまいもの大会」にも初出店。テレビで紹介されたこともあり、行列ができるなど「やきいもころころ」の人気は高まる一方。山田専務は「今後は楽天市場において、冷凍のスイーツも販売していきたい」と話す。

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