通販・EC企業のバレンタイン戦略から学ぶ、創意工夫で顧客の“ハート”をつかむ方法
2月14日の「バレンタインデー」を目前に控え、通販各社では商品面はもちろん、売り方の工夫や多様な訴求方法など様々な取り組みを行い、年に一度の一大スイーツ需要の取り込みを強化している。有力通販実施企業を中心に各社の今年のバレンタイン商戦を見ていく。
「楽天市場」は「送れてごめんね」企画、受注期間の長期化狙う
注目すべき試みを行う通販実施企業各社の今年のバレンタイン商戦と状況について見ていく。
大手仮想モールの「楽天市場」では1月6日からバレンタインの特集ページを開設し、約130店舗が参加。特集ページではシーン別に商品を選べるようナビゲーションページを用意。贈る相手別や価格帯別に加え、上質感を求める人向けの「高級」や失敗しない商品を集めた「人気商品」、独自性のある「サプライズ」などテーマ別に商品を提案する。昨今のバレンタインは男性に向けの本命や義理に加え、友人同士、家族に贈る、自分へのごほうびなど多様なニーズがあるためだ。楽天ではバレンタイン商戦のピークは駆け込み需要が発生する直前と見ており、これを踏まえ、翌日配送に対応する「あす楽」を訴求し受注の取りこぼしを防ぎつつ、バレンタイン後には「遅れてごめんね」企画を行い、受注期間の長期化による売り上げの拡大を図る。
ベルーナでは昨年11月からバレンタイン用チョコレートの販売を行っており、中でもお徳用チョコの販売が好調のようだ。ここ数年の傾向である女性が男性に対してチョコを贈るということに加えて、女性の友達に贈る“友チョコ”や自分に贈る“自分チョコ”、甘いもの好きな男性が自分にチョコを買う“俺チョコ”の需要も拡大していることから、様々な用途に使えるお徳用チョコの取り扱いを増加。職場の義理チョコだけでなく、日常のおやつ用や甘いもの好きな男性の購入も想定。昨年のバレンタイン商戦では、大容量のお徳用チョコの取り扱いアイテムを増やしたところ、売り上げがほぼ倍になったため、今年はさらに拡充、11月の販売開始から予想を上回る注文が入っている。ラインアップの中には、1キロ(税別3880円)や2キロ(同7380円)の大容量入りも用意。チョコは8種類でカラフルな包装紙に1つずつつつまれ、おすそ分けにも便利になっている。
デザインや味にこだわったチョコを販売するのはディノス・セシール。1月9日に通販サイト「ディノスオンラインショップ」内に設置した専用ページ「バレンタインセレクション2015」内で欧州各国や日本のプレミアムなチョコレートを販売している。
英国王室御用達の老舗菓子メーカーの創業当時からの秘伝レシピを基に作られた濃厚かつ軽やかな後味が特徴のチョコをシルクハット型の箱に詰めた見た目も楽しくスタイリッシュな「シャルボネル・エ・ウォーカー ハットボックストリュフ」(税別2000円)やベルギーのチョコメーカーのオーナーが愛娘のために考えたりんご風味のチョコをラインストーンバッジ付きのりんごの小箱に入れた「チョコフィーノ アップルチョコレート」(同3600円)などパッケージのデザインが特徴的なチョコレートなどを販売している。
また、フランス屈指のショコラティエとして知られるファブリス・ジロット氏が手がけた高品質の素材を使用しオリジナリティあふれるレシピで作られた「ファブリス・ジロットアソートチョコ」(同5000円)や日本のスイーツの有名店「アニバーサリー」がブランド栗"四万十栗"を使って、栗を裏ごしペースト状にしたものを栗の形に丸め直し、スイートチョコとミルクチョコレートでコーティングした「アニバーサリー四万十栗の栗チョコレート」(同4381円)など、ワンランク上のこだわった味のチョコなどを販売している。
無料通信アプリ「LINE」を運営するLINEでも運営する仮想モール「ラインモール」内で展開するギフトサービス「LINEギフト」(※「LINE」でつながる友人に相手の住所を知らなくてもギフトを贈れるサービス)を通じ2月14日までの期間、こだわりチョコなどバレンタイン向け商品の販売を行っている。
取り扱うのは世界的パティシエである青木定治氏監修の飲むタイプのチョコレート「ショコ・レ」や世界各国のユニークなチョコのほか、数量限定で「LINE」キャラクターオリジナルのバレンタインギフトとして高島屋とコラボしたマカロン(限定500個)や、「LINEギフト」限定販売となるドーナツ(限定350個)など合計180種類。本命用だけでなく、“義理チョコ”や“友チョコ”など利用シーンに合わせたラインアップになっている。
アマゾンジャパンでも通販サイト内に特集ページ「バレンタイン特集」を1月19日に新設し、定番の有名ブランドやお取り寄せチョコレートのほか、珍しい“アイスワイン”や話題の“チョコレートビール”、ワイン、メンズアクセサリー、コスメなど、チョコに添えたり、贈り主が一緒に楽しめる商品を紹介・販売している。また、手作りチョコを贈りたい人向けに「おすすめのチョコレートレシピ」も紹介している。
良品計画は“手作りキット”で勝負
良品計画は“手作りキット”で勝負する。1月7日に毎年恒例の手作りキット「自分でつくるシリーズ(全16商品)」を発売。市場では高級チョコの人気が高まりつつあるが、同社では初心者でも手軽にできる同シリーズを期間中の中心商品として展開。すべてのキットにラッピング袋を付け、難しい工程は省いても作れるよう粉のミックスを改良するなど時間短縮や作業の容易さを訴求している。同シリーズだけで毎年25万ピースを販売しており、今年は人気商品のガトーショコラの姉妹品として「いちごのガトーショコラ」を発売して拡販している。
通販サイトの専用ページでは、商品ごとに完成画像や作業時間の目安、用意する材料などのデータを掲載。「短時間でできる」「たくさんつくる」「定番の焼き菓子」など目的別のタブをクリックすることで条件にあった商品だけが表示されるようにもしている。また、リアルでの販促として全国200店舗で同商品のデモンストレーションと試食を行い認知拡大も図っている。
千趣会ではチョコ以外の商品提案でバレンタイン需要の取り込みに実効をあげているようだ。同社の通販サイト「ベルメゾンネット」で特集ページを開設。今年は、昨年まで行っていたチョコの訴求を抑え、男性向けのプレゼント需要への対応を強化した。サイトでは男性向け、女性向けのプレゼントと手作りチョコレートアイテムに分け、それぞれ予算別に商品を紹介し贈る人や予算に応じて商品を選びやすいよう工夫。
男性向けのプレゼントではインナーや服飾雑貨、シューズ、バッグなどの商品をラインアップし、1000円以下のプチプレゼント、3000円までの定番プレゼント、5000円までの人気のプレゼント、1万円までの大人のプレゼント、1万円以上のリッチなプレゼントとして商品を紹介する。
バレンタインに女性同士でプレゼントを贈り合うケースが増えていることを踏まえ、健康食品や化粧品、美容家電、調理器具など女性向けのプレゼントも掲載。同じく1000円までのプチギフト、3000円までの定番プレゼント、5000円までの感謝を込めたプレゼント、5000円以上のとっておきのプレゼントとして提案をしている。これまでの展開では、受注顧客の7割方が既婚女性で、チョコの訴求を抑えたこともあり、1件当たりの受注単価が上昇。また、バレンタインプレゼントの特集ページが男性向けのオリジナル商品を打ち出す場としても機能しているという。
食品宅配では“寄付付きチョコ”の取り扱いを積極化している。大地を守る会は寄付付きチョコを販売する企画「スマイル・オリーブ・バレンタイン」を展開。商品の購入ごとにオリーブの苗木1本分の代金を寄付するもの。ラインアップは「てんとう虫チョコレートギフトBOX」(50個入り、4680円)や、「チョコウエハース『サンバ』」(24個箱売り、6161円)など4アイテム。商品価格はオリーブの苗木1本分の代金350円を含んでいる。寄付金は自社の基金「スマイルオリーブ基金」に集約し、パレスチナの農民にオリーブの苗を贈る。商品にはオリーブの苗木を寄付することを証明するカードを付けて届ける。
寄付付きチョコの販売は昨年に続いて2回目。昨年、寄付付きチョコを販売したところ、販売数量ベースで寄付なしチョコの10倍となったことから顧客の社会貢献意識が高まっている判断。今年も継続することにした。
オイシックスでは商品売上高の3%を寄付金とするチョコ「ショコラde黒糖~ケニアコーヒー味~」を販売している。ケニア産コーヒーをチョコレートに練り込み、コービーの苦味と黒糖の甘さを味わえるようにした。バレンタインで贈り合うシーンを想定し、パッケージには贈る相手の名前やメッセージを記入できるスペースを用意。かばんに入れやすいサイズや形を採用した。友達同士で贈りあえるよう278円とし、気軽に社会貢献に参加できるようにした。寄付金はNPO法人「TABLE FORTWO」を通じて、1食分20円の給食をアフリカの子どもたちに提供する。
様々な商品や切り口でバレンタイン商戦に挑む通販各社。競争が激化する同商戦でいかに顧客の“ハート”をつかめるか。今後も各社の創意工夫が見られそうだ。
※画像、サイトURLなどをネットショップ担当者フォーラム編集部が追加している場合もあります。
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