デンマーク発のフードロス削減アプリ「Too Good To Go(トゥー・グッド・トゥ・ゴー)」が、ロケットスタートを切った。2026年1月28日のローンチから1週間で登録ユーザー数が25万人を突破、クリスピー・クリーム・ドーナツやファミリーマートといった大手企業の導入も話題を呼んでいる。好調の背景と国内での成長戦略をマーケティング&PRマネージャーの篠原佳名子氏に聞いた。
世界1.2億人が使う世界最大のフードロスアプリ
2016年にデンマークで誕生したToo Good To Go。欧州や北米を中心に事業を展開し、これまでに1億2000万人以上のユーザーと18万社以上のパートナー企業を獲得している。
過去9年間で5億食以上のフードロスを削減し、これは135万トンのCO2e(二酸化炭素換算)削減に相当します。私たちの競合は「ゴミ箱」であり、フードロスのない社会をめざしています。(篠原氏)
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Too Good To Go Japanのマーケティング&PRマネージャーの篠原佳名子氏(画像提供:Too Good To Go)
フードロス削減を支援するサービスは、コークッキング(埼玉県東松山市)が運営する「TABETE(タベテ)」など他にもあるが、「Too Good To Go」の強みはどこにあるのか。篠原氏は、次の3点をあげた。
1. 世界最大級の規模
世界No.1のユーザー数(Too Good To Go調べ)を持つフードロス削減アプリであり、フードロス削減の実績も世界最大級という。
2. 強固なパートナーシップ
スターバックス、セブン-イレブン、クリスピー・クリーム・ドーナツ、ドミノ・ピザなど有名企業との提携が多く、ネットワークが強固である。
3. シンプルで直感的なUI
発祥地・デンマークのデザイン哲学を受け継ぎ、直感的に使えるシンプルなUIを重視している。
差別化点は、半額以下の「サプライズバッグ」
「Too Good To Go」の最大の特長となるのが、「サプライズバッグ」形式で提供されることだ。その日に余ってしまった、まだ美味しく食べられる食品を詰め合わせて、半額以下(一部店舗を除く)で提供するのが基本。この形式を採用する主な理由は、「事業者への負担軽減のため」と篠原氏は説明した。
販売商品を特定しないことで、事業者は柔軟な対応が可能になり、商品登録や価格設定の負担も軽減されます。ユーザーには、福袋のような「ワクワク感」を手頃な価格で楽しんでいただきたいですね。グローバルでは、最大3分の1まで価格を下げるのが主流ですが、日本は、そうした値下げ文化へのなじみが薄く、半額以下の設定でお願いしています。(篠原氏)
言われてみれば、国内では値引きを積極導入しているスーパーでも、60~80%引きはほぼ見かけない。そうした日本の商習慣に配慮して、「半額以下」を通常としているそうだ。そして、サービスの具体的な使用方法は、次の通りとなる。
- 「位置情報」「駅名」「住所」「店名」などにより、サプライズバッグを販売している店舗を探す
- 商品概要や受取可能時間などを確認し、「予約する」ボタンからバッグの購入・決済を行う
- 受取可能時間に店舗を訪れ、注文画面を表示してバッグを受け取る
加盟店側の支払いフローは、次の図の通りだ。顧客からの売上金は、まずToo Good To Goに入金され、システム利用料と手数料を差し引いた額が各加盟店に分配される。加盟店の負担額は、システム利用料(月額1000円)と手数料(サプライズバッグの販売価格の27.5%)となる(条件によって変動の可能性あり)。
導入にあたって特別なシステムは必要なく、スマートフォンが1台あれば運用できる。加盟店側もユーザーと同じアプリからログインして、使用できるのが特長だという。「商品の販売時間・販売数」「受取可能時間」などの設定は各事業者に委ねられ、柔軟に販売しやすくなっている。
置き型販売で毎日一定のロスが出るような店舗だと、その日のバッグをすべて引き渡した後、翌日分が出品されます。それ以外に、「雨が降ってきたから客足が鈍くなりそう」など、ロスが出ると判断したタイミングでの出品も可能です。ユーザー側はアプリを開いたタイミングでの購入も可能ですが、リピーターは、お気に入りの店舗や新着出品の通知を受け取って購入することが多いですね。(篠原氏)
1週間で登録ユーザーは25万人。導入店舗の反響は?
2026年1月28日、アジア初進出となる日本でサービスをローンチすると、わずか1週間で登録ユーザーが25万人を超えた。この実績は事業展開する世界21か国中、圧倒的トップの記録なのだという。
日本人が持つ「もったいない精神」とToo Good To Goのミッションが強く共鳴したこと、ファミリーマートさんなどの大手企業との提携、加えてPR戦略が功を奏したと考えています。クリスピー・クリーム・ドーナツさんなどの人気店舗は、販売があるとすぐに売り切れる争奪戦のような状態です。(篠原氏)
現状は、渋谷や新宿といった都心店の一部で実証実験的に導入している企業が多いが、各社はすでに手応えを感じているという。
たとえば、店舗の食品廃棄物を2030年度までに2018年度比で50%削減、2050年度までに80%削減する目標を掲げているファミリーマートは、いち早く導入した1社だ。すでに自社で値下げ販売の推進に取り組んでいるものの、来店した人にしか値下げを知らせることができず、廃棄が生じてしまっていた。そこで、「Too Good To Go」を導入したという。
(画像はファミリーマートのプレスリリースより)
商品特性により差はありますが、想定を上回る購入があります。直近では、季節商品である「恵方巻き」でも廃棄ロスを削減できました。現在は、アプリでの掲載方法などを含め、より最適な運用に向けて試行錯誤を継続しています。また、食品ロス削減のほかに「新たな顧客接点の創出」にも期待があります。今後のアプリのブラッシュアップにより、店舗でのオペレーション負荷の軽減や店頭とオンラインで同時並売できるような仕組みにも期待がありますね。(ファミリーマート 広報担当者)
(右は完売した状態、「Too Good To Go」のサイトからキャプチャ)
その他、クリスピー・クリーム・ドーナツやNewDays(ニューデイズ)、ベーカリーカフェのFlour+Water(フラワーアンドウォーター)の一部店舗でも初期から導入しており、フードロス削減や新規顧客の来店につながっているそうだ。篠原氏は、導入企業のメリットを次のように説明した。
サービスを通じて、「新規顧客やリピーターの獲得」「顧客単価アップ」「ブランド認知向上」を達成している企業が多いんです。ユーザーの61%は初来店の店舗を選択しており、41%はサプライズバッグに加えて他の商品も同時購入しています。また、92%が過去に利用した店舗での再購入を希望しています。(篠原氏)
好調の一方で、国内展開の「課題」も
初動ユーザー数の世界記録を打ち立て、ロケットスタートを切ったToo Good To Goだが、国内で加盟店を増やしていくことは容易ではないようだ。
値引きへの抵抗感やロスがあることをお客さまに知られたくないという心理的なハードルがあるため、企業のみなさまの理解を得ることが最大の課題です。Too Good To Goとしては、積極的にフードロス対策をしている企業だけでなく、サービスにマッチしそうな多くの企業にアプローチしています。(篠原氏)
値引きによるブランドイメージの低下を懸念する企業は、確かに少なくないはずだ。一方で、Too Good To Goの調査では、「フードロス削減に取り組むことでブランドの好感度が競合より高まる」という結果が出ているという。
注文を受けてから作る業態でも導入されているが、置き型販売をしているベーカリー、スーパー、コンビニ、弁当屋などは特に相性が良く、現状グローバルで最も成功している業態は「ベーカリー」だという。「近い将来、日本独自の文化であるデパ地下でも導入できれば」と篠原氏は展望を話した。
すでに導入している全国展開の企業は、一定期間の検証後にエリアを拡大していく可能性が高いという。
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