モスフードサービスのECサイト「モス公式オンラインショップ ~Life with MOS~」が好調だ。牽引役は2025年7月に発売した「モスライスバーガー〈のり弁〉 ~白身魚フライときんぴら~ 」(5個入りで3250円、以下:モスライスバーガー〈のり弁〉)。過去最大の人気商品となり、2025年7月~12月までのEC関連売上は、前年同期比で約1.5倍に伸長した。ヒット商品の開発背景とEC全体の成長戦略を、モスフードサービス 執行役員 MD事業部長の中野秀紀氏、商品本部 商品開発部 商品開発第二グループ 参事の寺本和男氏に聞いた。
ECを新たな事業の柱へ。売上目標は2030年までに20億円
モスフードサービスは、2025年9月に発行した「MOS REPORT(モスグループ統合報告2025)」で、中期経営計画における3つの対応方針として、「国内モスバーガー事業の盤石化」「海外事業展開エリアの拡大」「収益の多様化」を掲げた。
そのうち、「収益の多様化」では“挑戦”を重要視しており、既存ブランドではカバーできない分野へ挑むとしている。2022年7月に開始したECサイトも、まさに同方針に則った挑戦の一環となる。
モスバーガーは全国に約1300店を構え、全都道府県に店舗があります。一方で、駅から離れた場所や離島など足を運びにくいエリアにもあり、なかなか来店できない方もいると思います。そうした方々にもモスに慣れ親しんでいただき、普段の食事の選択肢になる「モスの日常化」をめざし、ECでの展開を開始しました。(中野氏)
モスフードサービスは2020年にマーチャンダイジング事業を開始し、現在では「EC」と「外部販売」の2つのチャネルを確立している。モスの価値を体験できる場と機会を増やすことで、2030年までに物販全体で約40億円(EC単体では約20億円)の売り上げをめざすという。
最大の武器は、50年以上の歴史で培われた「ブランド力」だ。「モスバーガーの根強いファンに喜ばれる商品を展開する」という方針のもと、次の3つをラインアップしている。
- 国内のモスバーガーで過去に販売した商品
- 海外のモスバーガーで販売した・している商品のアレンジ品
- 完全なオリジナル商品
(画像は「モス公式オンラインショップ ~Life with MOS~」よりキャプチャ)
基本的に「冷凍食品」となるが、一部「常温」商品もある。また、モスバーガーの商品以外に、モスグループの紅茶専門店「マザーリーフ」の紅茶や他社とのコラボ商品も扱っている。
主力は「ライスバーガー」。平均購入単価は店頭の約4倍
モスバーガーといえば、まず思い浮かべるのは「ハンバーガー」だ。しかし、現状はハンバーガーを取り扱わず、主力は冷凍の「ライスバーガー」。この理由を、商品開発を担う寺本氏はこう話した。
当初から冷凍ハンバーガーの開発には着手していますが、店頭と同等のクオリティを再現できないため、一旦断念しました。レンジ加熱後にバンズがどうしても硬くなってしまうんです。その点、ライスバーガーは店頭でのオペレーションで電子レンジの使用実績があり、開発しやすかったのです。電子レンジ調理でもクオリティを維持するために、焦げにくくしたり、ソースの配合を微調整したり、工夫を凝らしています。冷凍ハンバーガーの開発は、今後も継続していきます。(寺本氏)
商品開発のほか、消費者へ宅配するためのパッケージ開発や品質管理の変更など、立ち上げ初期はさまざまな対応に追われたという。国内では自社工場を持たないため、新規工場の開拓や品質保証グループとの連携など苦労は多かった。運営しながら2年ほどトライアンドエラーを重ね、ようやく土台が整ってきたそうだ。
モスバーガーの店舗では、30~50代の男性ビジネスパーソンが主な利用者となり、ランチで多く利用されている。一方で、ECサイトは新規層の開拓をめざし、働く女性世代をメインターゲットに据えている。
女性の社会進出が進み、忙しい方が多いなか、自宅で手軽に店舗と同等のクオリティの商品を楽しんでいただきたいと考えました。実際、現在のECの顧客層は女性が半数以上を占めており、30~50代を中心に幅広く利用されています。(中野氏)
ECの商品単価は、冷凍などの加工や手間が増えるぶん店頭よりもやや高めに設定しており、「まとめ売り」や「複数種類の食べ比べ」などセット販売が多数を占める。そのため、平均購入単価は店頭の約4倍にもなるそうだ。
開始当初から安定して好調なのは、店頭でも定番人気の「モスチキン」と「オニオンフライ」となる。ギフト需要も一定あり、ギフトでは「ライスバーガーの食べ比べセット」(3種、または6種)が圧倒的な人気だという。
「モスライスバーガー〈のり弁〉」が過去最大のヒットに
試行錯誤しながらECの運営を継続するなか、2025年には過去最大のヒット商品が生まれた。7月に発売した「モスライスバーガー〈のり弁〉」だ。
まだ市場にない商品を作ろうと、中野氏は「手が汚れにくく、日本人が好む海苔巻きライスバーガー」を考案。それを受け、寺本氏は以前から市場が盛り上がっている「のり弁」に目を付けた。
すでに販売している「焼肉」や「きんぴら」のモスライスバーガーは、それだけで完成品として追求した商品なので、既存品に海苔を巻くのは違うなと。そこで、市場が拡大している「のり弁」に着目し、ECサイト専用の商品を開発することにしました。(寺本氏)
(画像提供:モスフードサービス)
のり弁は2021年頃から注目度が上昇し、なかでも品質にこだわった「高級のり弁」が新たなトレンドとなっている。そこで、話題の高級のり弁から低価格の定番人気商品まで幅広く調査し、結果として「親しみやすいのり弁」の方向性を見出したという。
あくまで私の感覚なのですが、あまり奇をてらうよりも、多くの人が慣れ親しんでいる「のり弁」のほうが魅力的だと感じました。一方で、他社商品との差別化は不可欠です。「海苔の風味とご飯の相性」にこだわり、特に海苔は徹底的に試しました。結果として、冷凍後にレンジアップした後もボロボロにならず、かつ風味も損なわない、ご飯との相性もバツグンの海苔を採用しました。(寺本氏)
2025年7月に「モスライスバーガー〈のり弁〉」として売り出すと、初回ロットとして用意した約3300個は1週間も経たずに完売。すぐに予約販売に切り替えた。クリスマス時期には、モスチキンやオニオンフライなどのパーティー料理と組み合わせたセット商品がよく売れた。このヒットにより、2025年7月~12月までのEC関連売り上げが、前年同期比で約1.5倍に伸長したそうだ。
のり弁ブームに乗れたことに加え、「モスがのり弁?」という意外性からメディアでの高い露出につながりました。お弁当をワンハンドで食べられるライスバーガーに再構築(リビルド)した顧客体験も評価されたと考えています。これまでモスと縁の薄かった30代の女性に多く支持され、顧客の裾野が広がりました。(中野氏)
〈のり弁〉第二弾の発売に、リブランディングも予定
これまでのところ、ECサイトへの流入は「メールマガジン」「LINE」「SNS」など自社の保有媒体を通じた情報発信が主なきっかけになっている。なかでも、会員数が数百万人にのぼるメールマガジンが現在の主な発信媒体だ。LINEの友だちもハイペースで増えており、500万人を超えている(2026年3月初旬時点)。
大規模な顧客基盤に対しては、新商品やキャンペーンのお知らせといったマス向けの情報を、ECサイトの会員には会員限定のアンケートやクーポンなどセグメントされた情報を発信し、リピート購入も多くあります。将来的には、現状バラバラになっている店舗の会員基盤とその他の顧客基盤を連携させ、よりスムーズなデジタルマーケティングができればと考えています。(中野氏)
(画像提供:モスフードサービス)
順調に成長しているモスフードサービスのECサイトだが、目標とする売上規模に到達するには、さらなる商品数や認知の拡大が求められるという。加えて、運営は「加盟店の理解」を得ながら進める必要がある。モスバーガーは9割近くが加盟店で運営されており、店舗側への配慮は欠かせないのだという。
今後は、ECサイトのリブランディングを進めながら、スピーディーに新商品を投入していく方針だ。
プラットフォームは引き続き「Shopify(ショッピファイ)」を維持しますが、開設から3年が経過したこともあり、タグライン「お手本は自然、選ぶのはあなた。」やロゴなどの刷新を予定しています。また、4月以降は広告配信を自社の会員基盤以外にも広げていくつもりです。(中野氏)
(画像は「モス公式オンラインショップ ~Life with MOS~」よりキャプチャ)
3月12日からは、のり弁の第二弾となる「モスライスバーガー〈のり弁〉~えび天丼風~」(5個入りで3900円)を発売したばかり。同商品は、えび天3個に蓮根磯辺揚げと野菜かき揚げというボリュームたっぷりの具材に天丼のタレを2度掛け、さらに海苔も改良して噛み切れやすさとくずれにくさを両立した。
(画像提供:モスフードサービス)
また、「中食」カテゴリーの拡充も計画中で、ハンバーグやパスタ、自社開発のピザ、唐揚げなどを想定しているそうだ。「続々と新商品が登場する予定なので、期待してほしい」と中野氏、寺本氏は意気込みを示した。
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