2022年頃から本格化した値上げラッシュ。飲食料品における値上げの勢いは、2025年に比べて小康状態で推移しているものの、消費者の節約意識は高まり続けている。そんななか、低価格を維持しながら「増収増益」を達成しているのが、飲料製品を製造・販売するライフドリンク カンパニーだ。たとえば「OZA SODA(オーザソーダ)」は500ミリリットルのボトルの価格が1本約50円~(2026年4月時点)で、「楽天市場」の水・ソフトドリンクカテゴリーでは5年連続ランキング1位を獲得した。ライフドリンク カンパニーの執行役員 浅井祥平氏とEC事業部の越前真央氏に、「低価格を維持するための3つの重要戦略」を聞いた。
拡大傾向の「清涼飲料水市場」。なぜ値上げが続くのか
富士経済によると、近年、国内の清涼飲料水市場は右肩上がりで伸びており、2026年は前年比4.8%増の5兆8601億円に達すると予測されている。緑茶やほうじ茶などの「日本茶」や「麦茶」のほか、健康意識の向上や止渇需要の高まりを背景に「無糖炭酸飲料」も好調だ。2026年の無糖炭酸飲料市場は、2024年比で113.5%の1480億円になると予測されている。
飲料市場全体は拡大傾向ですが、品目により増減が明確化しています。生活必需品といえる水・お茶・無糖炭酸飲料は増加している一方、缶コーヒーなど需要が下がっている一部の嗜好品もあります。直近のトレンドとしては、世界的な「抹茶ブーム」が国内の緑茶市場にも多大な影響を与えています。緑茶(煎茶)の生産者が抹茶の生産にシフトする動きがあり、緑茶の生産数が減少しています。しかし、ペットボトル飲料の緑茶市場は拡大しており、結果的に緑茶の価格が高騰しています。(浅井氏)
浅井氏によれば、近年の飲食料品の値上げラッシュは、天候不良などによる原材料の高騰、為替、人件費や物流費の上昇が主な要因になっているという。データバンクによれば、2026年3月の食品値上げは684品目で、そのうち加工食品が304品目と最多になった。
たとえば、伊藤園では、緑茶飲料「お~いお茶」など138品目を2026年3月1日出荷分から値上げした。値上げ幅は5~33.3%で、主力の600ミリリットル入りボトルの希望小売価格は216円から237円に上がった。コカ・コーラボトラーズジャパンも、「綾鷹」ブランドの緑茶飲料22品目を2026年3月1日出荷分から値上げ。値上げ幅は6.3~12.1%で、650ミリリットル入りボトルの希望小売価格は税別200円から220円に上がった。
(画像はライフドリンク カンパニーのECサイトからキャプチャ)
「こうした背景により、消費者の“節約志向”が顕著に高まっています」と越前氏。ライフドリンク カンパニーの無糖炭酸飲料「OZA SODA」は、自社EC利用者の約7割が、500ミリリットル1本が約49.3円と最安値で設定している定期便を利用している。他社モールで販売している製品も、1本約60円(時期により多少変動)と類似製品と比較して低価格帯に設定しており、こちらも好調だという。同製品は、「楽天市場」の水・ソフトドリンクカテゴリーで5年連続ランキング1位を獲得した。
「脱・付加価値戦略」で万人受けを狙う
1950年にお茶の卸事業で創業し、1972年に会社として設立されたライフドリンク カンパニー。過去には氷、乾麺、運輸、太陽光発電など事業を多角化してきた時期もあるが、2015年にPEファンド(非公開株式に投資するプライベート・エクイティ・ファンドの略称)のサンライズキャピタル(東京都港区)に株式を売却し、資本業務提携をしたことを機に「ドリンク事業への一本化」に踏み切った。2023年6月には、プライム市場に上場した。
現在、売り上げの約6割を占めるのが、イオンや西友など約30社のPB商品の製造となる。残り4割は「OZA SODA」をはじめとした水、お茶、炭酸水の自社製品で、これらはECを中心に販売している。自社ECと「Amazon」「楽天市場」が中心だが、近年は、メルカリが提供する「メルカリShops(ショップス)」や「ふるさと納税」など販路を広げているところだ。
(画像はライフドリンク カンパニーの「2026年3月期 第3四半期 決算補足説明」より)
そんな同社がコンセプトとして掲げるのが、日常使いしやすい「脱・付加価値」と「低価格」だ。“おいしさの中心”を意識して、赤ん坊から高齢者まで誰もが飲みやすい味わいを追求、飲料としての“本質的な価値”を満たすことを重視する。そのうえで、市場における最低価格帯をめざしている。PB製品においても同様の価値を提供しているという。
(画像提供:ライフドリンク カンパニー)
日常のあらゆるシーンで飽きずに飲んでいただけることを重視しており、たとえば、「OZA SODA」は「プレーン」「レモン」「ピンクグレープフルーツ」「ライム」「シリカ」の5種類に限定しています。一方で、新規需要開拓を目的にターゲットを絞った期間限定フレーバーも展開していて、最近では、若年男性が好む「エナジードリンク風味」(販売終了)や女性層を意識した「ライチ」を販売しました。(越前氏)
そうした戦略が功を奏して、2026年4-12月期(第3四半期)業績は、売上高が前期比18%増の406億円、営業利益は同10%増の46億円と増収増益を達成。なお、通期ベースでは2017年3月期から9年連続の増収、営業利益は2020年3月期から増益を続けている。
低価格を維持するための3つの重要戦略
飲料大手が続々と値上げを実施するなか、ライフドリンク カンパニーは、なぜ値上げ幅を抑制し、最低価格帯を維持できているのか。浅井氏によれば、次の3つの戦略が低価格を支える柱になっているという。
1. 少品種大量生産
現在、ライフドリンク カンパニーが製造・販売するのは「水」「お茶(茶葉製品を含む)」「炭酸飲料」の3領域のみ。サイズも「500ミリリットル」と「2リットル」の2種を中心としている。最も需要の多い品種のみを大量に生産することで、生産効率を最大限に高めているという。PB事業においても、低価格を優先し、得意先ごとにペットボトルやキャップの形状を変更することはしていない。ラベルだけを変えて製造している。
生産効率向上のためには、製造を止める時間を作らないのが重要です。もし、ペットボトルの形状がたくさんあるとしたら、形状を変更するたびに機械を止めて、6~8時間をかけて金型を交換しなければなりません。当社では、ペットボトルの形状を限定し、500ミリリットルと2リットルの2つのラインを設けることで、連続生産を可能にしています。(浅井氏)
(画像はライフドリンク カンパニーのECサイトからキャプチャ)
2. 製造工程の内製化
物流費の削減を目的に、「ペットボトル」の内製化も行っている。ライフドリンク カンパニーでは、海外からレジン(樹脂)を買い付け、自社工場で一からペットボトルを製造している。同様の手法を取っているメーカーもあるが、多様な形状を扱う場合、すべての製造ラインを自社で賄うのは現実的ではなく、100%の自社製造は難しくなる。そんななか、ほぼ100%のペットボトルを自社で製造していることがライフドリンク カンパニーの強み、すなわち「低価格」を支える戦略になっているそうだ。
メーカーによっては、一部は自社で製造して、残りは完成したペットボトルを購入する。あるいは、プリフォームと言って、ボトル形状に膨らませる前段階の「試験管」のような形状をした中間製品を購入する場合もあります。特に完成品を輸送する場合は、ほぼ“空気”を運んでいるようなもので、非常に輸送効率が悪いんです。(浅井氏)
(画像はライフドリンク カンパニーの「2026年3月期 第3四半期 決算補足説明」より)
こうして輸送費を削減したうえで、製品ごとのペットボトルの厚みの調整も行っている。炭酸飲料ではガス抜けを防ぐために一定の厚みが必要だが、それ以外の製品は、品質に影響のない範囲で薄肉化して材料費の削減につなげているという。
3. 工場の全国展開
小中規模の工場を全国的に構えることも、物流費の抑制につながっている。現在、ライフドリンク カンパニーでは岩手から宮崎まで全国14か所に工場を展開。新規建設に加え、M&Aによる工場取得を積極的に進めている。2024年3月には、静岡県御殿場市に新設工場が誕生。2026年1月には、子会社の群馬ビバレッジがポッカサッポロフード&ビバレッジ・群馬工場を取得し、新たに生産を開始している。
(画像はライフドリンク カンパニーの「2026年3月期 第3四半期 決算補足説明」より)
物流費は年々上昇していますが、工場を全国展開することで各店舗までのデリバリーコストを極小化しています。また、BCP(事業継続計画)の観点でもメリットがあり、地震などの災害時に一部工場の生産が停止しても、その他地域の工場で生産を継続できます。M&Aを拡大戦略の一つに据えているのは、新設よりも大幅に時間やコストを削減できるためです。(浅井氏)
競合より“わずかでも安い”ことが選ばれる理由に
日本のインフレ率は、2022年から上昇し、2023年には1992年以降最高となる3.27%を記録した。2026年度は1%台後半に鈍化するという予測もあったが、中東情勢悪化による影響が懸念され、野村證券では2026年半ばにも再び2%を上回ると予想している(参考:野村リサーチ「日本経済見通しを修正 原油高踏まえ、物価見通しを大幅に上方修正 野村證券・森田京平」)。
そして、賃上げ率はというと、2023年以降に急上昇している。2024年は賃上げ率(全規模)で5.10%、賃上げ率(中小)で4.45%となり、約30年ぶりの水準となった(参考:中小企業庁「2025年版 中小企業白書(HTML版)」)。こうしたなか、「消費の二極化が顕著になっている」と浅井氏は指摘する。
現在は、ようやく賃金上昇が物価高騰に追いついてきたところかもしれません。とはいえ、消費者の節約志向は続いていて、「商品の二極化」がますます進んでいる印象です。嗜好品や贅沢品には相応のコストを支払うけれど、日常の食品や日用品といった生活必需品は、できる限り節約したい方が大半だと考えます。そうした領域では、競合よりわずかでも安いことが「選ばれる理由」になってきます。
一方で、あらゆるコストが上がるなかで、適切に価格転嫁していくことも求められます。そのため「低価格」は維持しつつも、各小売店やECサイトの状況を見ながら随時、判断していきたいと考えています。(浅井氏)
(画像提供:ライフドリンク カンパニー)
ライフドリンク カンパニーでは、引き続き「脱・付加価値」「低価格」を掲げつつ、新規顧客獲得につながりやすい数量限定商品も積極展開していく方針だ。さらに、今後は自社製品の販路を自動販売機にも広げていく。この3月に新たに設立した子会社にて、ポッカサッポロフード&ビバレッジの自動販売機事業を継承。全国にある4万台が承継される見込みだ。
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