AIエージェント時代、「検索はされなくなる可能性」にZOZOはどう対処する?「『提案の場』になるチャンスをつかみに行く」

ZOZOは、AIエージェントの普及で「検索して探す」購買行動が変わる可能性を見据え、ECを“提案の場”へ進化させる戦略を打ち出した。中期経営計画では「MORE FASHION」領域の拡大を軸に、対話型AIや着回しAIの活用を進め、検索の次の時代に対応する。

鳥栖 剛[執筆]

9:30

AIエージェントの活用によって「対話型検索」が一般化すれば、将来的には「検索してリンクをクリックする」といった消費行動が減っていく可能性がある。ZOZOはこうした変化を前提に、ECに求められる役割はユーザーのニーズをくみ取り、最適な商品やコーディネートを提案し、そのまま購入につなげるものへと変わっていくと見ている。こうした環境変化に対し、ZOZOは中期経営計画のなかでAIエージェント時代をリスクとして受け止めるだけでなく、「提案の場」になるチャンスをつかむ姿勢を鮮明にしている。

中計の「MORE FASHION」領域でAI対応を明示

ZOZOの中期経営計画では、事業領域を「MORE FASHION」「NEAR FASHION」「GLOBAL」の3つに整理し、「ZOZOTOWN」を中核としながら、その周辺領域にも収益基盤を広げていく方針を示した。このうち「MORE FASHION」は、既存成長の中核を担う領域と位置付ける。収益力を原資に規律ある投資を進めながら、これまで接点を持てていなかった新規ユーザーとの出会いを広げていく考えだ。

具体策としては、ポップアップストア「ZOZOTOWN NAGOYA」や、ファッションと音楽を掛け合わせた「ZOZOFES」など、リアル接点の拡大を進める。加えて、ブランド数の拡充によって、ファッションを買う場としての想起をさらに強めていく方針だ。そして、その延長線上にある重要テーマとして、AIエージェント時代への対応を掲げている。

「検索→クリック→購入」から「ニーズ→推奨→即購入」へ

ZOZOが問題提起するのは、AIエージェントの普及によって、従来の「検索→リンクをクリック→情報収集→購入」という購買導線が短縮され、「ニーズを伝える→推奨される→そのまま購入する」という流れに置き換わる可能性がある点だ。

こうした変化のなかで、ZOZOは汎用(はんよう)的な検索の最適化を追うのではなく、ファッションに特化したAIを磨き、ユーザーの「ニーズ」や「興味」が生まれる段階から関与する戦略を描く。検索される場であり続けるのではなく、ユーザーにとって最初に相談し、提案を受ける場へと進化することが狙いだ。

そのカギを握るのが、ZOZOが保有する独自データだ。流行や情緒的な商品データ、そして購買に近い顧客データを生かすことで「ファッション特化AIエージェントのチャンス」をつかみにいく考えを示している。

AIエージェント時代、「検索はされなくなる可能性」にZOZOはどう対処する?「『提案の場』になるチャンスをつかみに行く」
ファッション領域に特化したAIエージェントの可能性を広げていく(画像はIR資料から編集部がキャプチャ)

対話型AIを「服選びの相談相手」に「WEAR」やLINEで提案機能を展開

ZOZOはAI活用を、「日常の服選びを支援する提案機能」として具体化している。対話型AI(LLM)の活用を進めており、「ChatGPT」アプリ上で「WEAR」のコーディネートを提案する取り組みを展開。LINE公式アカウントでは、「ZOZOの似合うコーデAIラボくん」として、対話を通じて服選びを支援する導線も整えている。

AIエージェント時代、「検索はされなくなる可能性」にZOZOはどう対処する?「『提案の場』になるチャンスをつかみに行く」
ChatGPTアプリ上でWEARのコーディネート提案を行う取り組みやLINE公式アカウント活用を進めている(画像はIR資料から編集部がキャプチャ)

「WEAR」ではAIに学習させる「似合う」データの整備も進めている。具体的には、「好みのジャンル」「体型の悩み」「味付け」「与える印象」という4つの要素を搭載。新たにコーデごとの「味付け」や「与える印象」も加えることで、より個人に合った提案につなげる狙いだ。

AIエージェント時代、「検索はされなくなる可能性」にZOZOはどう対処する?「『提案の場』になるチャンスをつかみに行く」
「WEAR」ではAIに学習させる「似合う」データの整備も進めている(画像はIR資料から編集部がキャプチャ)

ZOZO保有データとAIの掛け合わせで、“買った後”まで支援

ZOZOのAI活用は、購入前の提案にとどまらない。購入後の活用を見据えた「アイテム着回しAI」も実装。初期効果として利用者の翌月再訪問率が1.1倍になるなどの成果が出ているという。

この取り組みの特長は、AIが参照する情報が一般的なファッション知識だけではない点にある。ユーザーのお気に入り登録商品や購入済みアイテム、好みに関する情報に加え、ZOZO独自のコーディネートTipsなど、自社が蓄積してきたデータを活用することで、購入後も継続的にスタイリングを支援する構想を描いている。

AIエージェント時代、「検索はされなくなる可能性」にZOZOはどう対処する?「『提案の場』になるチャンスをつかみに行く」
購入後の活用を見据えた「アイテム着回しAI」も実装(画像はIR資料から編集部がキャプチャ)

「LYST」でも「主戦場はAIエージェントへ」

AIエージェント時代への備えは、国内の「ZOZOTOWN」にとどまらない。グループに加わった、欧米を中心に展開するファッションショッピングプラットフォーム「LYST」についても、「主戦場はAIエージェントへ」と明示している。

そのなかでZOZOは、自社が持つデータ知見やノウハウが、「LYST」の成長にも有効に働くとみている。

AIエージェント時代、「検索はされなくなる可能性」にZOZOはどう対処する?「『提案の場』になるチャンスをつかみに行く」
自社が持つデータ知見やノウハウが「LYST」の成長にも有効としている(画像はIR資料から編集部がキャプチャ)

社内でもAI活用を可視化、独自指標「AZARS」を導入

ZOZOは、AIをサービスに実装するだけでなく、社内活用の基盤整備も進めている。独自指標「All ZOZO AI Readiness Score(AZARS)」を導入し、主観的になりがちなAI活用度を全社共通の基準で可視化・評価、活用レベルの底上げを図る。AI活用を一部の部署や担当者にとどめず、組織全体の競争力として高めていく狙いがある。

現時点で送客効果は限定的

もっとも、「ChatGPT」やLINEを通じたAI関連施策の送客効果は、現時点ではまだ限定的という。ZOZOによると、「ChatGPT」ではユーザーが明示的に操作しなければ機能を利用しにくい面があり、LINEについても全面展開には至っていない。

それでもZOZOは、こうした取り組みを先行して進めることに意味があると見る。実際の対話データを元に改善を重ねることで、提案精度やユーザー体験の向上につなげていく考えだ。

なお、外部LLMへのデータ流出については、ZOZOの保有データをそのまま外部に取り込ませる構造ではなく、ユーザーの入力を自社側でファッション文脈に変換し、適切な商品やコーディネートを返す仕組みを想定しているため、大きなリスクはないとしている。

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