限定商品がヒット、受注金額は想定の2倍以上に。「ファミマオンライン」好調のワケ

2025年3月6日、ファミリーマート(ファミマ)は、約7年ぶりにデジタルコマース事業「ファミマオンライン」を開始した。ファミマのアプリ「ファミペイ」の会員に向けたECサイトで、ここでしか買えない限定アイテムも多数展開。指定住所への配送のほか、店舗受取も可能だ。反響は上々で、開始後2週間の受注金額は想定の2倍以上に。「EC事業に再参入した狙い」と「好調の理由」をファミリーマートに聞いた。
顧客と常につながる「カスタマーリンクプラットフォーム」を推進
国内に約1万6300店、海外に約8400店を運営するファミマは、2025年3月6日、デジタルコマース事業「ファミマオンライン」を開始した。同社にとって、約7年ぶりのEC市場再参入となる。

以前、伊藤忠商事やNTTデータなど7社で合弁会社を設立し、2000年に店舗と連動型のECサービス「ファミマ・ドット・コム」を開始したが、当初の計画を達成できず、2018年にサービスを終了した。
EC事業に再参入した背景には、ファミリーマートが2023年に掲げた「カスタマーリンクプラットフォーム」がある。単なるコンビニの枠を超え、顧客と常につながり、最適な情報を提供するための施策で、その中心にはファミマのアプリ「ファミペイ」がある。
2019年にローンチされた「ファミペイ」は、2025年4月時点で約2400万ダウンロードを達成しており、コアファンの育成やデータ活用強化に役立っている。2024年7月からは、メーカーと連携した広告配信サービス「デジタル・パートナーシップ・プログラム」を導入し、日本コカ・コーラやサントリーなどの広告やクーポンを配信している。

店舗における顧客とのつながり強化や広告収入増を目的としたデジタルサイネージ・メディア「FamilyMartVision」も導入。すでに約1万200店に設置されている。同メディアは配信数の半数が自社制作コンテンツ、残りの半数は広告枠として販売。広告のうち、約7割がファミマで取り扱っていない商材で、潜在顧客との新たなタッチポイントとして事業者の期待が高まっているようだ。

現在のクライアントは、保険会社や自動車会社などです。近年は、特に若年層へのリーチが難しいという課題が広告主にはあります。これまではYouTubeなどのSNSしか選択肢がなかったところに、新たな媒体として存在感が高まっているようです。(近藤氏)
ECを通じた「売り場の拡張」や「顧客との接点」に期待
このように、ファミマの大枠戦略として「カスタマーリンクプラットフォーム」があり、その基盤を整えていく過程で、EC事業の構想が始まったという。
ファミマでは、それ以前から、季節商品をオンライン予約して店舗で受け取れる「ファミペイWEB予約」と、ギフト商品の通販「ファミリーマートギフトネット申込サービス」を展開しており、それを統合して生まれ変わったECサイトが「ファミマオンライン」だ。
ECの構想を開始したのは2022年です。狙いはいくつかありますが、現段階での一番の狙いは、「売場の拡張」です。現在、コンビニの店舗数は飽和状態と言われており、既存店舗における売上増施策を進めているものの、飛躍的な向上は見込みにくい状況です。そこで、新たな一手としてオンライン上に売場を設け、新商品の販売や品ぞろえの拡張により売上増につなげたい意図があります。副次的な目的として、EC事業を起点に「ニュース」や「話題」を作りたい考えもあります。(近藤氏)
デジタルで売り場を拡張し、事業成長につなげる意向だと話す、近藤大輔氏(ファミリーマート デジタル事業部 部長)
「ファミマオンライン」の一番の特徴は、「ファミペイ」の会員に対してサービスを提供していること。商品を購入するには、「ファミペイ」への登録が求められる。ファミマの実店舗で扱う商品に加え、ここでしか買えない限定商品も多く、アニメなどIPとのコラボも精力的に行う。商品は指定住所への配送のほか、店舗受取も可能だ。
コンビニは幅広い世代の方に利用されているため、「ファミマオンライン」でも特定のターゲットは設定していません。まずは、「ファミペイ」の会員数増が目標で、これまで当社とあまり接点がなかったお客さまを取り込むフックにしていきたい。一方で、すでに会員の方に対しては、リアル店舗とは異なる新たな購買体験を提供したい考えもあります。(関根氏)
バズを狙った「限定商品」は続々と完売
開始前から話題となった「ファミマオンライン」は、初日は一時アクセス集中によりつながりにくいほどの反響だった。開始後2週間で受注金額は想定の2倍以上に。前身となるECサイトと比較すると、3月度のセッション数は昨年同月比で20倍以上になった。
一番の目玉となったのは、ファミリーマートの看板商品「ファミチキ」の関連商品だ。サンリオとコラボした「サンリオキャラクターズ×ファミチキマスコットキーホルダー(全4種、2480円)」や、世界的に人気の「BE@RBRICK(ベアブリック)」とコラボした「BE@RBRICK ファミチキ 100%」(2480円)、「ファミチキ」の袋を寝袋で再現した「ファミチキ寝袋&パジャマ」(1万980円)など全5品をラインアップし、多数のメディアやSNSで紹介された。
これらの限定商品は爆発的な反響があり、オープン直後にほぼ完売しました。特に、サンリオキャラクターズや「BE@RBRICK」とのコラボ商品は、突出した売れ行きでした。(関根氏)


ファミマで独占販売している菓子「シャインマスカットボンボン」(1ケース・6袋入り、1608円)も、抽選販売を開始すると瞬時に当選人数を上回った。
人気がありすぎて、店舗でも入荷すると即完売する話題の商品です。今回、入荷数の一部をEC用に確保して抽選販売したところ、開始日はアクセスが集中しました。当選人数は2000名で、倍率は100倍以上にも及びました。(近藤氏)

ファミマが2021年から展開している「コンビニエンスウェア」も順調に売れている。扱うのは店舗でも販売している定番商品がメインだが、ECでは店舗に置いていない幅広いサイズを展開。すでに販売終了したが、開催中の大阪・関西万博に合わせて、大阪地区の店舗限定で販売しているウェアをECでも取り扱っていた。

意外な商品として、glafitと協業した「glafit社 電動サイクル」(2種類、18万7000円、29万7000円)を新たに開発した。当初は「自動車を売れないか」と検討していたが、さまざまな課題から電動サイクルに落ち着いたという。16歳以上なら免許不要・ヘルメット努力義務で運転できる新しい原付区分「特定小型原動機付自転車(特定原付)」に適合した電動サイクルで、車体に青と緑のファミマカラーがデザインされている。

好調のカギは、「話題作り」と「導線設計」
ロケットスタートを切った「ファミマオンライン」だが、好調の理由はどこにあるのか。
当社には、「ファミリーマートは他社よりもおもしろいコンビニだ」と消費者の方々に認識いただいている自負があります。そうした期待に応える意味でも、EC事業は「話題性」を重要視しており、この戦略が功を奏していると思います。限定商品は「いかにバズを起こすか」を狙って企画しており、そうした商品がプレスリリースやSNSを通じて反響を呼び、売り上げにつながっていますね。(関根氏)

たとえば、「ファミチキ寝袋&パジャマ」は、「看板商品の『ファミチキ』をアイテムに絡めたらファミマらしいよね」という話題が発端だった。そこから、「寝袋がファミチキ袋で、自分が『ファミチキ』になって袋から出てくる姿っておもしろくない? SNSでウケるかもしれないよね」というアイディアに発展し、商品化が実現。狙い通り、話題化を狙った商品群が多方に拡散し、売上増につながったわけだ。
そうした商品開発力に加えて、「ファミマオンライン」への導線を工夫したこともアクセス増や売り上げに直結している。訪問者の導線として最も多いのが、「ファミペイ」からの流入だ。

「ファミペイ」内には、最も目立つ位置に「ファミマオンライン」のバナーを配置、下部にも「お買い物」のボタンを置いた。さらに、「ファミマオンライン」で販売中の限定商品のバナーも複数貼っている。
アプリ上では「ファミペイ」のサービスの一部であるような見え方にしています。日常的に利用回数の多いアプリ内に、「ファミマオンライン」への導線をしっかり配置したことが、トラフィックに相当なインパクトを与えています。(関根氏)
初動の勢いを保ちつつ、「さらなるスケールアップ」を狙う「ファミマオンライン」。今後はどのような施策を予定しているのか。
まず、注力したいのは限定商品です。たとえば、各地のおすすめ商品を扱うシリーズ「ご当地ファミマ」を5月8日から開始していて、第1回の地域は「沖縄」です。沖縄限定のコンビニエンスウェアや沖縄県の有名メーカーとのコラボ商品を展開しています。ただ、よりスケールアップを狙うには、店頭で取り扱うNB・PB商品も絡めた別企画も必要だろうと思います。(関根氏)
「引き続き限定商品の話題化を狙っていく」と関根弘明氏(デジタル事業部 デジタルコマースグループ マネジャー)は話した
40年以上の店舗運営の歴史と国内約1万6300店の店舗網を、より活用していきたいですね。ファミマではアルバイトスタッフも含めると20万人強の人が働いており、そうした方々からもアイディアを募るなどして、当社ならではの企画実現をめざします。(近藤氏)

「ファミマオンライン」では、第2弾の限定商品として「ファミペイ」公式キャラクター「ファミッペ」グッズのほか、「ナノブロック」で店舗を再現した「ナノブロック ファミリーマート」(2780円)と「ジョジョの奇妙な冒険」とコラボした「ジョジョの奇妙な冒険 あくすた~ず! 第1弾コンプリートBOX」(6600円、現在は販売終了)を4月17日に発売開始した。現段階では、継続的な話題の提供が売上拡大のカギになりそうだ。