Amazonがネットスーパー事業を拡大している理由は? アマゾンの責任者と協業先の宮城県・伊藤チェーン専務に聞いた。
アマゾンジャパンがネットスーパーを強化している。自社の直販型によるネットスーパーは関東圏を、他社との協業で関東・関西、東海、北海道、福岡の12都道府県で展開。このほど、宮城県に拠点を置く伊藤チェーンとの協業で、宮城県仙台市および一部周辺エリアでのネットスーパーを始めた。アマゾン提携ネットスーパー アジアパシフィック事業部長のシン・ミニョン氏、伊藤チェーンの伊藤吉信専務取締役に話しを聞いた。

Amazonが日本各地で地域企業とのネットスーパー事業を拡大する戦略的な意図は
アマゾンジャパンは、自社仕入れによる直販型の「Amazonフレッシュ」を関東圏で、ライフとの「ライフネットスーパー」で関東圏・関西圏、バローとの「バローネットスーパー」で東海圏を、成城石井との「成城石井ネットスーパー」で関東圏・関西圏、アークスとの「アークスネットスーパー」で北海道、マルキョウとの「マルキョウネットスーパー」で福岡県でネットスーパーを展開している。
今回、伊藤チェーンとの協業で「Amazon.co.jp」上に「イトーチェーンネットスーパー」をオープン。仙台市と周辺の一部エリアで生鮮食品などのオンライン販売・配送サービスを開始した。東北地域で生鮮食品のオンライン販売・配送サービスを提供するのは初めて。

このように日本各地で地域企業とのネットスーパー事業を拡大している背景には、多様化する顧客のライフスタイルやニーズへの対応、より利便性の高い買い物体験の提供という戦略的な意図がある。
アマゾンジャパンのシン・ミニョン氏は、「近くのスーパーマーケットの食品を買いたいというお客さまも多い。普段の買い物で購入している商品をネットを通じて届ける。そのために、各地方でお客さまから信頼を集めている企業との連携を進めている」と言う。
地域で長年、消費者との信頼関係を築いてきたスーパーマーケットと提携することで、アマゾンジャパンは地域住民にとって馴染みが深く、品質の高い生鮮食料品などを提供できるようになる。商品を売って届けるだけでなく、「安心感」という付加価値も提供することにつながるという。
地域企業との協業を進める上で重視しているのはその「安心感」と「豊かな品ぞろえ」。「お客さまに安心して生鮮食品を購入してもらいたい。地場のお客さまが利用されるので、豊かな品ぞろえを重視している」(シン・ミニョン氏)
こうした地方の食品スーパーとの協業は、深刻化している「買い物難民」という社会問題の解決にも貢献できる取り組みという。
伊藤チェーンの伊藤専務は、アマゾンジャパンとの協業でこれまで店舗に来店できなかった顧客、買い物が困難な状況にある消費者に商品を手軽に届けられるようになるのではないかと考えている。
宮城県内は高齢化が進み、「買い物難民」と呼ばれる方々が増えてきている。伊藤チェーンでは以前から「お買い物バス」の運行などを実施してきたが、今回のネットスーパー事業を通じて、さらに地域社会に貢献できるものと考えている(伊藤専務)。

シン・ミニョン氏はネットスーパー事業の拡大を踏まえて、Amazonのネットスーパーは「仕事や育児で忙しい、悪天候や体調不良で外出が難しいといった消費者、そして高齢者など、さまざまな事情で実店舗での買い物が難しい顧客層に対して大きな利便性を提供している」と言う。
「重くてかさばるものをまとめて購入したい」「小さな子供から目が離せない」といった具体的なニーズにも対応できるのがネットスーパーの強み。Amazonはこうした多様なライフスタイルや買い物シーンに合わせて、より快適な買い物体験を提供することをめざしている。(シン・ミニョン氏)
「イトーチェーンネットスーパー」で展開するサービスは
伊藤チェーンは、「生鮮食料品、特に青果、鮮魚、精肉、惣菜のウェイトが高いスーパーマーケット」(伊藤専務)。「『伊藤の牛タン』といった自社ブランド商品、地元の生産者の方々と直接連携した産直部門」(同)も強みで、他のスーパーマーケットとの差別化要因になっているという。
「イトーチェーンネットスーパー」では実店舗で取り扱っている数千点の商品をネットスーパーでも販売する。人気商品の「イトーの牛タン」、手作り惣菜の「はらこ飯」、旬の野菜や果物、新鮮な肉や魚、日用品なども含む。取扱商品数は順次拡大・変動する予定。
産直品に関しては、天候に左右されやすく安定供給が難しいモノは、慎重に検討するとしている。
特色ある商品を、ネットスーパーを通じてより多くのお客さまにお届けできることを期待している。(伊藤専務)
なお、伊藤チェーンのスタッフがネットスーパー用の商品をピックアップし、Amazonの配送網で商品を届ける。なお、伊藤チェーンがネットスーパーを手がけるのは初。
リードタイムは注文から最短2時間で商品を届ける。時間帯は12時~20時の間の3つの時間帯(12~14時、16~18時、18~20時)から、当日、翌日、または翌々日の2時間単位で指定できる。追加料金400円(税込)を支払うと、1時間単位での配送時間指定も可能。
伊藤チェーン、アマゾンジャパンは今回の協業に関する期待を次のようにコメントしている。
Amazonのプラットフォームを活用することで、これまでリーチできなかった顧客へ自社の強みである生鮮食料品や独自商品を提供できるようになる。そしてそれが地域社会への貢献にもつながることに大きな期待を寄せている。また、消費にとってより手軽で便利な買い物手段を提供できることにも期待しています。(伊藤専務)
伊藤チェーンの伊藤吉信専務取締役
東北地方へのサービス提供拡大という目標に加え、地域で信頼されている伊藤チェーンとの協業を通じ豊富な品ぞろえとブランド力を生かし、顧客に高品質で便利な買い物体験を提供できることに期待しています。また、多様化する顧客ニーズに応え、生活をサポートするサービスとしてネットスーパーが活用されることを期待しています。(シン・ミニョン氏)
アマゾン提携ネットスーパー アジアパシフィック事業部長のシン・ミニョン氏