アマゾンが「Amazonフレッシュ」を開始、最短4時間で生鮮食品を届ける仕組みを解説
アマゾンジャパンがついに生鮮食品のネット通販に参入した。4月21日に生鮮食品などを注文から最短4時間で配送する「Amazonフレッシュ(アマゾンフレッシュ)」をスタート。「Amazon Prime(アマゾンプライム)」会員向けのサービスとして展開する。
CD・DVD・書籍などのネット通販から幅広い製品まで取り扱いを広げ、ついに生鮮食品の領域まで拡大。2兆円近いと関係者からの声があがる「Amazon.co.jp」の流通額をさらに底上げするサービスになりそう。
「アマゾンフレッシュ」に参画できるメーカーや生産者にとっては新たな販路となるが、多くの小売業・EC事業者にとっては“顧客を奪われるかもしれない”驚異の存在になる可能性も。EC事業者は注視すべき「アマゾンフレッシュ」のサービスの仕組みなどを解説する。
「Amazonフレッシュ」の概要
取扱商材
「Amazonフレッシュ」が取り扱うのは野菜、果物、鮮魚、精肉、乳製品といった1万7000点以上の食料品。それに加え、キッチン用品、健康・美容用品、ベビー用品、ペット用品などの日用品・雑貨も取り扱い、合計で10万点以上の商品を取りそろえる。
商品は取引先となる生産者や事業者をアマゾンジャパンが選定し、直接仕入れる方式を採用する。
配送対象エリア
東京都の港区、千代田区、中央区、江東区、墨田区、江戸川区の6区域(一部エリアを除く)で展開。今後順次拡大していく予定。
サービス対象者
Amazonプライム会員限定サービス。プライムの会費3900円(税込)に加え、利用する会員は月額500円(税込)が必要になる。なお、「Amazonフレッシュ」を30日間無料で体験できるサービスを設けている。
配送時間帯
午前8時から深夜0時までの間、2時間ごとの配送時間帯から指定可能。注文から最短で4時間後に商品を購入者の手元に届ける。
配送料
注文金額が6000円(税込)以上の場合、送料は発生しない。注文額が6000円(税込)未満の場合、1回の注文あたり配送料が500円(税込)必要。
「Amazonフレッシュ」配送の仕組み
三温度帯(常温、冷蔵、冷蔵)の設備を設けた神奈川県川崎市の物流拠点「アマゾン川崎FC(フルフィルメントセンター)」に、「Amazonフレッシュ」で扱う商材を一括して集約・管理。専用棚を設け、鮮度を徹底管理するという。
購入から1時間以内に商品が届く「Amazon Prime Now(プライムナウ)」の配送拠点を活用し、商品を購入者の手元に届ける。
現在、都内の「Prime Now(プライムナウ)」配送拠点は、世田谷区(等々力)、江東区(豊洲)、豊島区がある。スタート時のサービス対象エリアでは、江東区の配送拠点を活用する。
「Amazonフレッシュ」の対象エリアは拡大する方針のため、その際は他の配送拠点を活用し、配送できるエリアを広げていく。
なお、「Prime Now(プライムナウ)」の配送拠点は神奈川県、関西圏では大阪などにも構えている。3温度設備を備えることが前提となるが、「Prime Now(プライムナウ)」の配送拠点を活用することを考えると、「Amazonフレッシュ」は将来的に関西圏でも展開される可能性がありそうだ。
「Amazonフレッシュ」スタートに際し、配送業務増加に伴う配送スタッフ(配送業者との契約など)増員の割合などについては非公開。
商品は、保冷剤を入れることができる専用ボックスに紙袋を入れて届ける仕組み。紙袋は常温、冷蔵、冷凍の3種類があり、取っ手の色で判別する(黒が常温、緑が冷蔵、白が冷凍)。
購入者には、出荷した段階で1度、出荷確認メール、アプリであればプッシュ通知を配信。配送スタッフが前の配送業務を終え、購入者の自宅へ向かう際に再度、メールもしくはアプリでのプッシュ通知を行い、配送時の不在を防ぐ方針。
「Amazonフレッシュ」の狙い
プライム会員は年々増加している。こうした会員特典に投資する理由は、お客さまに高く評価されているから。特典を追加するたびに評価の声をいただいている。これからも積極的な投資を続け、プライムに最先端のサービスを追加していく。
こう説明するのはプライム統括事業本部長の紣川謙氏。
2007年に「Amazonプライム」のサービスをスタートし、「お急ぎ便」「当日お急ぎ便」などを展開。「Prime Now」は2015年に開始している。
直近では、ココカラファイン、マツモトキヨシ、三越日本橋本店と提携。第三者企業との連動により、従来の自社が扱っている商品以外の販売をスタートし、ドラッグストアのコスメや美容用品、百貨店の総菜・和洋菓子の取り扱いを始めた。
こうした施策を進めるのは、「幅広い品ぞろえを1か所(Amazon.co.jp)に集めることが第一。プライム会員へ提供できる価値を最大化していくことを常に考えている」(Amazonフレッシュ事業本部 リテール事業部長・荒川みず恵氏)ため。
食品の宅配やネットスーパーに関し、住友商事が2014年、子会社が運営するネットスーパー事業「サミットネット―パー」を終了。サービス開始から約5年で撤退した。
一方、セブン&アイ・ホールディングスの宅配、ネットスーパー事業は順調に拡大。2017年2月期決算では、イトーヨーカドーの「ネットスーパー事業(配達型)」は前期比3.0%増の447億3500万円、食品宅配の「セブンミール」は同15.5%増の266億7800万円だった。
また、有機野菜などのECを行うオイシックスと有機野菜などの宅配販売を行う大地を守る会は、2017年秋を目処に経営統合する。
こうした動向を踏まえて、生鮮食品のネット通販でアマゾンジャパンがどの程度、シェアを獲得していくのか。注視していきたい。