通販新聞 2019/6/10 10:00

スーパーマーケットチェーンを展開するライフコーポレーションがネット販売事業の拡大に向けて配送まわりの強化に本腰を入れ始めた。今春からセイノーホールディングとネットスーパーの宅配業務で連携をスタートさせており、自社ネットスーパーにおける足まわりを強化していることに加えて、アマゾンジャパンが有料会員向けに展開するスピード配送サービスの配送網を活用して今年中にもアマゾン顧客へのネット販売を始める。

同社ではネットスーパーを成長事業と位置付け、規模拡大を進めてきたが配送人員や配送トラックなどの整備や確保が不十分で伸び悩んでいた。配送会社との業務提携やアマゾンの配送網を活用することで配送まわりの弱点を軽減。こうした試みに加えて、買物代行サービスへの商品情報提供も実施し、自らが配送に絡まない形でネット販売の売り上げを伸ばす取り込みも開始し、様々な手段を用いネット販売事業を拡大させる。これらにより、前期(2019年2月)は24億円にとどまっていたネット販売事業を2年後には4倍の100億円まで拡大したい考えだ。

セイノーとの連携で配送力を強化

ライフのネットスーパーサービス「ライフネットスーパー」(=画像)はバックヤードに余裕があり、一定の作業スペースが確保でき、かつ配送トラックが駐車できる余裕がある比較的、大型店舗をネットスーパー対応店舗として、当該店舗から半径1~2キロ以内を配送エリアとして各店が店内で注文品をピックアップして配送する、いわゆる店舗出荷型ネットスーパーで、現在、関東では東京を中心に神奈川、埼玉で29店舗、関西では大阪を中心に兵庫、京都、奈良で26店舗を対応店舗として、惣菜などの食品や飲料、日用品など約8000品目を販売している。

スーパーマーケットチェーンを展開するライフコーポレーションがネット販売事業の拡大に向けて配送まわりの強化に本腰を入れ始めた

同社によるとネットスーパー事業は毎年、2ケタ成長を維持するなど順調に伸びているものの、前期の同事業の売上高は24億円で「総売上高(6777億円)に占めるシェアは0.3%とまだまだ小さい」(同社)とし、同社の思い描く期待値には遠く達していなかったようだ。

成長のボトルネックとなっている要因の1つは“配送”にあるようだ。「(ネットスーパーでの)注文数は特に近年、非常に伸びており、ニーズも手ごたえも十分に感じている。その一方で、頂いた注文を捌き切れない事態となることも多々あった」(同社)とし、店舗側で用意している人員や配送トラックで配送できるキャパシティを超える注文数となる場合には受付を止めざるを得ず、大きな販売機会を共なうことが多くあったようだ。

こうした配送まわりの弱点を強化してネットスーパー事業の売上規模を拡大するため、一環として4月11日、セイノーホールディングスとネットスーパーでの配送業務に関しての提携を締結した。

これまでもネットスーパーの配送業務の一部を同社に委託してきたが、さらに配送力を高めるため、セイノーが展開する狭商圏の食品配送サービスプラットフォーム「スパイダーデリバリー」を活用。セイノーグループのベクトルワンが提供する自動配車AI「DSS(デリバリー・ソリューション・サース)」を活用しつつ、ライフ側からの出荷依頼を効率的に配送員に割り振り、最適な配送ルートでライフのネットスーパーでの注文商品を顧客宅に配送できる仕組みを整えたほか、ライフがネットスーパーとは別に実施している来店客が買い物した商品を自宅まで配送する「来店宅配サービス」の配送についても、従来の委託先からセイノーに一本化して効率化しつつ、配送力を強化した

「プライムナウ」への大手スーパーの出店は初めて

自社のネットスーパー事業の配送力強化に加えて今年中をメドに、アマゾンジャパンのスピード配送サービス「プライムナウ」に出店する。

アマゾンでは2015年11月から、有料会員「プライム会員」向けに受注から1時間以内に配送する「1時間以内配送」と午前6時から深夜12時まで2時間単位の配送時間を選択して当該時間枠内に配送する「2時間便」で自社商品を配送する「プライムナウ」をスタート。現在、都内に4カ所、大阪と横浜にそれぞれ1カ所ずつ専用拠点「アーバンFC」を設け、そこを拠点に東京・千葉・神奈川・大阪・兵庫の一部地域で「新作ゲームソフト」や「冷えたビール」といったタイムリー性ある商品などを軸に即配サービスを拡大させている。一昨年4月からは自社商品に加えて、外部事業者からの出店を受け付けており、スタート時点からドラックストア大手のココカラファイン、マツモトキヨシと百貨店の三越伊勢丹(日本橋三越本店)が出店しているが、ライフのような大手スーパーの出店は初めてとなる。

「プライムナウ」ではアマゾンの直販商品の場合は、注文を受けた商品を配送員が「プライムナウ」の専用配送拠点からすぐに顧客宅へ配送する流れとなるが、外部出店者の場合は、受注後に対応する店舗で受注商品をピッキングし梱包しておき、それをアマゾンの配送員が専用拠点から取りに行き、そこから顧客に配送する仕組みとなる。

ライフも基本的にこのスキームに乗り、「2時間便」を使って販売する予定だが、「プライムナウ」の商品をピッキング・梱包する対応店舗については「ネットスーパーに対応している都内の店舗ということは決まっているが、都内の対応店舗(22店舗)すべてなのか、どこか数店舗にするのかはまだ決まっていない」(同社)という。まずは都内で今年中にスタートし、対象エリアを拡大していく考え。なお、すでに「プライムナウ」に出店中のマツキヨら3社は東京23区内の一部と川崎市など神奈川県の一部、浦安市や市川市など千葉県の一部を対象エリアとしている。

販売商品も現状、検討中としており、ネットスーパー事業で販売する約8000点の中から、惣菜や生鮮品、加工食品のほか、PB(プライベートブランド)商品など「ライフでしか取り扱っていない魅力的な商品を販売していこうと検討を進めている」(同)としている。

対応時間や送料についても検討中。ちなみに「プライムナウ」に出店している3社の対応時間及び送料は、ココカラファインは対応時間は午前10時から午後10時、送料は540円(注文額2500円以上から配送し、合計5000円以上は送料無料)、マツモトキヨシは対応時間が午前10時から深夜12時で送料は540円(同)、三越伊勢丹では対応時間は正午12時から午後8時までで、送料は540円(注文額2500円以上から配送し、合計9000円以上は送料無料)となっている。

3社とも送料については基本的に540円となっているが、アマゾンによれば「(『プライムナウ』の外部出店者の)送料を540円と一律で設定しているわけでなく、対応時間同様、出店者側で任意に設定できる」(同社)としている。

なお、外部出店者ではココカラファインのみが対応店舗周辺の一部地域で対応している1時間配送(ココカラファインの場合、送料は1430円、注文額合計5000円以上では890円)はスタート時点では対応しない模様だが、「(2時間便に加えて、1時間配送の)対応も検討していきたい」(ライフ)としている。

自社ネットスーパーの配送面の強化やアマゾンの配送網を活用したネット販売に加えて、買物代行サービスへの商品情報の提供も進めている。現状、都内の一部地域で展開する「Twidy(ツイディ)」に商品情報を提供しているが、こうした買い物代行サービスは当該サービスの配送員がライフの店頭で商品をピックアップし、顧客宅まで配送するため、ライフでは特に作業が発生することがなく効率的なため、さらに情報提供先を広げていきたい考えだ。

これらの施策で前期(2019年2月)は24億円にとどまっていたネット販売事業を今期はまずは30億円とし、アマゾンやセイノーHDなどとの連携が本格稼働する見込みの2022年2月期には100億円までネット販売の売上高を拡大したい考えだ。

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